8話 仮説
そして、その後十数匹目のケルベロスを駆り終え自分へ鑑定した際にある事に気が付いた。
ケルベロスを倒しても能力値が上がらなかったのだ・・・。
試しにもう1匹ケルベロスを倒したが能力値の上昇は無かった。
<ステータス>
名前 ピート
レベル 10(レベル固定)
HP 1,188
MP 180
攻撃力 978 (+40)
防御力 494 (+28)
素早さ 308
賢さ 122
運 44
俺は、愕然としてしまった・・・。俺は、レベルがもう上がることが無い。
そのため、このドレインを使って、モンスターから能力を吸収するしか強くなることが無いからだった・・・。
そのとき、ふと、仮設を立てた。
ピ「ドレインで吸収する能力値は、モンスターの1/10だ。つまり、10匹倒すとそのモンスター1匹分丸々の能力値を吸収することになる。だから、1種のモンスターに対して、10匹までしか能力値を吸収できないのでは無いか!?」
この仮説を試すため、俺は地上へ向けての階段を上がった。
次の階層に入ったら、ビッククラブを発見した。
記憶力強化スキルにより、様々なダンジョンのモンスター構成を頭に詰め込んでいる。
それにより、俺はこのダンジョンが中級冒険者向けのダンジョン【オフピア】の33Fだと判断した。
俺は、現在地を把握した事により、中級ダンジョンの33Fまで転送されたという絶望感とドレインの能力吸収の仮説を検証したい欲求の2つが入り混じったなんとも言い表せない感覚に陥っていた。
ピ「・・・・33Fかぁ~~。 食料の問題もあるが、そこは今考えても仕方ない・・・。まずは、ドレインの検証を行うか・・・。」
早速、ビッククラブを倒そうと気合を入れたそのとき、腹部に激痛が走った。
先ほど見つけたビッククラブが、アクアボールを放ってきたのだ。
俺は、考えごとをしていて、ビッククラブが魔法を演唱しているのに気が付かなかった・・・。
ピ「っ痛・・・この程度なら、まだ大丈夫だ。 それにしても、・・・完全に油断してしまった。今後は、気をつけないと。 それじゃ、気を取り直して、検証、検証・・・。」
俺は、これから地上まで移動することを考え、武器の消耗も最小限になるように考えた。
そのため、甲羅が堅いビッククラブに対して、素手で対処することにした。
そして、攻撃力にものを言わせて、ビッククラブのハサミを掴み力いっぱい引っ張った。
ゴギィーーー。
堅いものが割れる音が鳴り響いた。
ビッククラブのハサミが根元から取れたのだ。
このハサミを棍棒のようにして、ビッククラブを殴りつけると甲羅が割れ、ビッククラブは魔石を残して消え去った。
ドキドキしながら、自分を鑑定すると・・・・。
俺の仮説が当たっていた。
ビッククラブの能力値を吸収したのだ。
<ステータス>
名前 ピート
レベル 10(レベル固定)
HP 1,228
MP 210
攻撃力 998 (+40)
防御力 534 (+28)
素早さ 316
賢さ 127
運 47
魔法
エクストラヒール、アクアボール
ピ「・・・や、やっぱり。 これで、ドキネピを・・・・探すことができる。 本当に・・・・・本当に・・・・・良かった。」
これで、レベルが上がらない俺が強くなれる要素は残った。
次の問題は、食料だった。
4人で2日分ほどが残っていた。
つまり、俺1人だけだと普通に生活すると8日分だった。
ピ「1日3食で8日分だから24食分ある。 それを1日2食にして、更に1食辺りの食べる量を減らせば、20日以上は保たせられるな・・・。 それまでにどうにか脱出しないとな!」
それから俺は、次の階層へ行くためなるべく時間をかけずに進んでいった。
そして、数日後、30階に到達した。
そして目の前に転送水晶が目に入った・・・。
そう、焦っていたため、ダンジョンに10階層間隔で転送水晶がある事をすっかり忘れていたのだ。
ピ「・・・そうだった。 30階だから転送水晶があるのか・・・。 食料を温存しながら、進まなくても良かったな、助かった。」
ピ「・・・・・・・・・っえ。 なんで・・・・。」
ピートが転送水晶を触って、転送先を選択しようとしたが何も表示されなかったのだ。
転送水晶は、ダンジョン内の一度触って記憶した水晶にしか移動できないのであった。
通常のダンジョン攻略なら、入口で転送水晶に登録して、入るため、戻る際に上の階層へ移動できる。
今回は、罠で直接移転させられたので、転送先が無いのであった。
もちろん、過去の冒険でこのダンジョンへ来て、転送水晶に登録していれば、別の話である。
更に、隠し部屋の転送水晶は、一方通行の転送なので、転送先に表示されない。
つまり、先日の隠しボスである4つ頭のケルベロスの部屋への表示も無かった。
地上へ転できない事に落胆したが、考えても仕方ないので、気を取り直し29階へ移動した。
因みに、10階ごとにボス部屋があるのだが、上の階層からきた場合だけ、ボスが出現するのだ。
そのため、今回はボスと戦わずにボス部屋を通過できた。
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