終章203X年11月2日
この章で完結です。
我が日本国のあの運命のタイムスリップから90年以上の月日が流れた。
この世界での暦も203X年11月2日を迎えた。
この日、東京お台場の記念艦「長門」公園で記念式典が行われていた。
日本と台湾が90年の時を経て「203X年に帰還」事を祝う式典であった。
戦艦長門の艦首一番主砲の前に特設ステージが設置され長門舷側各部に3Dホログラムスクリーンが浮かんでいる。
スクリーンにはステージ上の日本国総理大臣小坪信也が映し出されている。
長門公園には多くの人々が集まり、そしてそのネット配信を世界各地の人々が見守っていた。
小坪総理は静かに語り始めた。
「今日は203X年11月2日…私たち日本国と台湾国は長い時を経てようやくこの日に戻ってまいりました。
90年前のあの日、日本と台湾は当時中国と北朝鮮と呼ばれた国々と戦争突入寸前でありました。
しかし時を遡り、歴史をやり直してたどり着いた今日この日…極東アジアには戦争の危機はありません。
北朝鮮という国家は存在せず、そして中華人民共和国という共産党独裁国家も今は存在しません。
朝鮮半島は日韓共存国家となった大韓民国として満州国と共に日本国台湾国の同盟国となっています。
そして中華人民共和国は1946年の大分裂以来半世紀以上内戦を繰り広げ、結局は互いに消耗し戦闘継続が不可能となり、休戦が結ばれ現在は北洋共和国、華南共和国、四川共和国、貴州共和国、湖南共和国、馬家共和国の6ヵ国がにらみ合う形で均衡を保っており、少なくとも今現在は我が国や台湾、そして満州、韓国にとって軍事的脅威とはなっておりません。
そして北に目を向ければ旧ソビエト連邦から分離独立した東シベリア共和国は今や日本の友好国となっておりまたロシアとの緩衝地帯として満州国と共にアジアの平和のために貢献してくれております。
しかし世界全体が平和になったわけではありませんでした。
しかしロシア共和国は旧連衡構成国であるウクライナのクリミアに侵攻し現在クリミア半島はロシア軍に占領された状態となり、更にはバルト3国にも侵攻する構えを見せており欧州各国と緊張が続いております。
一方、第二次大戦の「敗戦国」となった米国は戦争のダメージで国力が低下し、経済も疲弊し国民の不満が高まった状態となりその結果、戦後最初の選挙で極左勢力の代表が大統領となり一気に左傾化が進み共産主義化しつつありました。
それを良しとしないカリホルニア州アリゾナ州オレゴン州ワシントン州そしてハワイ州アラスカ州がアメリカ太平洋諸州連邦を名乗り合衆国から分離独立しアメリカは東西に分裂してしまいました。
共産アメリカはそれを許さず太平洋諸州を力で併合しようと兵を送りこみその結果アメリカは内戦状態に陥りました。
これが1955年のアメリカ東西戦争であります。
超大国アメリカの分裂による弱体化は新たな勢力の台頭を促す結果となりました。
中南米諸国がそれまでのアメリカ支配に叛旗を翻し中南米諸国連合を結成し内戦の混乱の中、北米に侵攻を開始したのです。
東西アメリカ両陣営は側面を突かれた形となり双方総崩れとなりその結果アリゾナ、テキサス、ニューメキシコの3州が中南米諸国連合に占領されてしまいました。
これが北米戦争と呼ばれる戦いです。
その後北米2陣営は戦力を立て直しアリゾナ州は太平洋諸州連邦が奪還し、ニューメキシコ州は共産アメリカが奪還しました。
太平洋諸州連邦はアリゾナ州奪還をもって守りに徹しましたが共産アメリカは中南米諸国の共産化を狙いそのまま進軍を続けテキサス州を奪還後はメキシコ領内に攻め込み首都メキシコシティを陥落させメキシコを併合しさらにはガテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、パナマも攻め落とし支配下に置きました。
中米諸国を支配下に置き、そしてカリブ海のキューバ、プエルトリコ、ドミニカをも戦艦部隊の砲撃と海兵隊の力で一気に併合し、その後国力を高め1993年に再び太平洋諸国連邦に宣戦を布告した共産アメリカは西海岸地域を制圧しさらにはカナダも武力併合し北米大陸すべてを支配下に置いたのです。
その後共産アメリカは南米大陸に侵攻し21世紀にはいった2001年にその全てを制圧してしまいました。
我が日本国を始めとするアジア連合も欧州同盟も共産アメリカの暴走を止める事は出来ませんでした。
我々には南北アメリカ大陸にまで戦力を展開する力は無く、そしてまた遠く離れた地での戦争であり我が国やアジア諸国はその戦争に介入する大義を見いだせないでいました。
しかしそれは大きな間違いでした。
共産アメリカは南北両アメリカ大陸を支配下に治め前世界でのアメリカ合衆国並みに強大でさらに偏ったイデオロギーによって中華人民共和国のような侵略国家になってしまいました。
そしてついに共産アメリカは太平洋にその矛先を向け始めました。
現在サンフランシスコの軍港には共産アメリカ海軍の大艦隊が集結しております。
恐らくその狙いは太平洋諸国連邦の最後の砦となったハワイ諸島。
そのハワイが陥落したら次は日本国が共産アメリカの矢面に立つことになりアジア全体の危機につながります。
もしかしたらもっと早い段階で我々が立ち上がっていたら共産アメリカの暴走を止められたのかもしれません。
ひょっとしたらかつてナチスドイツの暴走を座視した結果第二次世界大戦を引き起こしてしまったのと同じ過ちを我々は犯してしまったのかもしれません。
しかし、時計の針を戻すことは出来ません。
我々はその過ちを正すべく共産アメリカの暴走を止めるべく立ち上がります。
今日、横須賀から航空護衛艦「しなの」を旗艦としたNGF第1艦隊がハワイ防衛のために出撃します。
アジア連合各国もそれぞれ主力の艦隊を出撃させサイパン沖で合流しアジア合同艦隊を結成し太平洋諸州連邦艦隊と共にハワイ諸島の防衛の任につきます。
神の御名を問わずアジア合同艦隊にご加護がありますように…」
2O3X年11月2日
横須賀基地。
航空護衛艦「しなの」を旗艦とするNGF第一艦隊が出撃した。
その陣容は
第1護衛隊
DDV201しなの(艦載機F-11震電改)
DDG199あおば
DD211ゆきかぜ
DD220いかづち
第5護衛隊
DDG198たかお
DD212かげろう
DD213はつゆき
第一潜水艦隊
SS601うずしお
SS605ゆうしお
SS607わかしお
SS601なだしお
後にこの戦いは「第二次太平洋戦争」と呼ばれることになる。