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カミツキ  作者: たるん
7/11

来客

だいぶハードな一日を送った翌日。

職員室では晴海が見つかった件が簡単に報告があり

細かなところは警察から口止めでもされているのか

あっさりと終わった。

教室へ向かう準備をしている最中、教務主任が

声をかけて来た。

「尾崎先生、晴海さんの件で校長から呼ばれています」

ほぼ確実に昨日の件であろうことは予測できた。

校長室の前に着くとドアをノックする。

「尾崎です。失礼します。」

名乗ってそのままドアを開ける。


校長は来客用のソファーに座り、

向かいには昨日会った江田刑事が座っていた。

もう一人いたが、昨日は会っていない男だった。

「尾崎先生、昨日はどうも」

江田が挨拶してきたので、どうもと軽く返す。

「尾崎先生、昨日の話を刑事さんからも聞きました。

とりあえず、こちらへどうぞ」

そういうと自分の座っているソファーの隣を指し

座るよう促された。


「朝の忙しい時間にすいません」

江田が話し始めた。

「用事というのは、昨日の話です。

無事に生徒さんを発見できたのはおめでたいこと

だったんですが、先生と現場に戻った際に

亡くなっていた男の情報が色々と出てきまして、

ちょっと厄介な状況かなと思ってお話に来た次第です。

あれは、まあ所謂チンピラの類なんですが、

そいつが所属していたところが問題なんです」

そこまで言うと、目の前に出されていた

お茶を一口飲んで続けた。


「先生が生徒さんを見つけたのは幸運でしたが

別に捕らえていた子達も含め親に身代金を求めるでもなし、

彼女たちの話を聞いても商品という言われ方も

していたみたいなんですよ。

映画か何かの話みたいで信じられないでしょうが

人身売買の疑いが濃いんです」

横にいる校長の顔つきが一気に険しくなるのがわかる。


「実際、このあたりでは今回の彼女たちが

初の事案ではあるんですが、元々神奈川で

同様の問題が発生して県警がだいぶ厳しく捜査している

矢先に今回のことなので、問題を起こしている奴らが

狩場を変えたのではというのが当方の見方です」


「そうですか」

驚きの話しか出てきていないが

なんとか返事だけはした。

「連中と顔を合わせることがなくて本当に幸運だったと思いますよ。

下手をしたら昨日の男が、そっくり先生だったかも知れません」

江田に言われてみると確かにそうだったのかも知れない。

今更ながら震えも来たが、御崎があの時急がせていたのは

その危険があったからなのかも知れないと思うと

なんとなく納得したような不思議な気分にもなった。


「無事に生徒さんが帰って来たことは

とても喜ばしいことではあるのですが、

そういった事情から警察側の捜査は、これから過熱していく

ような状況なので、先生から周りへの口外は止めていただきたい

というのが本日の目的になります。

そしてもう一つ、今回保護した生徒さん達には念のため

しばらく監視させてもらいます。これは犯人達が

再度接触するような事態を考慮してのことです。

このこと自体の説明はそれぞれの親御さんに別でしております」

一気に話すと再度、口をお茶で湿らせた。


「今回の犯人の目星はついてるんでしょうか」

校長が江田に問いかける。

「いえ、今の段階ではまだ、ですがすぐに解決させますので

もうしばらくお時間をいただきたい」


江田達の帰った後、自分の席に戻った校長が

今後の方針について話す。

「尾崎先生、警察の方の言っていた通り

しばらくは晴海さんの件は伏せておくようにお願いします」

「わかりました。ただ、仲のいい友達経由で

話は広まってしまうのは仕方がないかと思います。

念のため、声はかけてみますが」

「そうですね。お願いします」


校長室を出るとその足で朝のホームルームへと向かう。

教室へ着くと5分ほど遅れての到着で

だいぶざわついていた。

「悪い、遅れた」

謝りながら入ると、ざわつきは収まり

いつも通りの挨拶から出欠確認、

連絡事項と話をして終える。


教室を出る際に浦野と滝沢に声をかけ

廊下に連れ出す。

「呼び出してすまないな。晴海のことは聞いたか」

「LINEで連絡が来たので細かい事は聞いてませんが

無事に家に戻ったことは知ってます」

浦野が答える。

「私のほうも同じ感じです」

滝沢も続けて答える。

「そうか、細かいことは俺のほうからは

言えないんだが、周りにはまだ黙っていてもらえるか

警察もまだ調査しているところだから騒ぎにしたく

ないみたいなんだ」

「分かりました」

二人とも答える。

「じゃあ戻っていいが、戻るついでに御崎に来るように

伝えてもらっていいか」


二人を戻し、しばらくすると御崎がやってきた。

「先生、なんでしょう」

「昨日のあの後、色々あってな、警察が動き出してるんだ。

しばらくは晴海のこと、他言無用で頼むぞ」

「ええ、わかりました」

「そういえば昨日、工場の事務所で早く外に出るように

話していたよな。あれ、遅れていたら何が起きたんだ」

「晴海さん達をひどい目に合わせた人と鉢合わせになりました」

さらりと言いのける御崎に驚きつつも言葉を返す。

「そうか、まあ面倒が回避できてよかった」

確かに昨日死んでいた男の事を思えば

何が起こっても不思議ではなかったのだろう。

さすがにあの場所で死体が発見された話は

できなかったが、なんとなく御崎には

分かっているんじゃないかという気がした。

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