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カミツキ  作者: たるん
6/11

一区切り

交番は駅の近くにある。

到着すると交番の中には待機している

若い感じの警察官がいた。

「すみません」

声をかけると愛想のいい感じで返事を返してきた。

「なんでしょう」


見つける経緯はだいぶ端折ったものの

警察に届出されている少女について話を終えると

沢上江署のほうから迎えがくるということで

しばらく待つことになった。

「御崎、今日はありがとう。助かった。ここからはちょっと面倒かと

思うから先に引き上げていいぞ」

「分かりました。じゃあお先に失礼します。

晴海さんも間に合って良かったよ。また学校で」

御崎は晴海に軽く挨拶を交わし駅へと向かった。


待っている間、学校にも連絡を入れ、

晴海や他の子達にも親に連絡をいれさせる。

そうこうしているうちにパトカーが迎えに来て

沢上江署へと向かう。


すでに警察署内には晴海の母親が待っており、

その他の子達の親も次々と到着した。

「先生、すみませんが事情をお聞かせ願えますかね」

署内の職員に声をかけられ別室へと移る。

いわゆるドラマの取調室を想像していたものの

もう少し広いオープンな感じの会議室のようなところで

話をすることに。

ただ流石に生徒に聞いた通りの場所に行ったという

話をしたところで、そもそも信じられもしないだろうし

なるべくなら御崎に面倒をかけたくないという思いもあり

誰だかわからないたが、工場跡を溜まり場にしている人がいる

という学生の噂を、駅周辺での聞き込みで耳にして

家出しているような学生が集まっているのではと、試しに

行ってみたという感じの説明で通した。


状況を詳しく知りたいということで

現地に当時の状況を説明しに同行する。

車は一台で前の座席に警官が二名、

後ろに刑事と自分が乗り込む。

「江田と言います。先生には現地に行ってもらって

彼女たちを見つけた時の状況を聞かせてもらえればと」

江田と名乗る刑事はそういうと運転席の警官に

車を出すように指示する。

工場跡に着くと来た時は裏門から入ったという話をしつつ

出るときに開けた正面の小さな扉から中に入る。


入って右手に見える例の事務所へ向けて歩く。

相変わらず電気は通っているようで自動ドアが開く。

中に入ると受付から中が見えるが、

先ほど来た時とは少し違っていた。

誰かが机に突っ伏して寝ている。

一緒に来た警官が部屋の中に入っていく。

「おい、何をしているんだ」

声をかけて起こしているのが聞こえてくる。

部屋に入ろうとすると先ほどの警官が

手を前に出して入るなと言ってきた。

一緒にいた江田に声をかけて中に一緒に入って行く。

明らかに空気が変わっていたので中で寝ているように見えた

男に何かがあったに違いない。

しばらくして携帯を片手に出てきた江田は

応援を要請するといった内容を電話の向こうへ

投げつつ、話が終わると携帯を胸のポケットに

しまうと同時に話しかけてきた。

「さっきの男。仏さんになってましてね」

さらっと言ってのけた江田にたいして

「寝てたわけじゃなかったんですね」

答えてみたものの、実際に口にしてみると

死んでいたという事実が浮き彫りにされたようで

背筋に寒気が走った。


「署の応援を頼んだので、いったん待ちますが、

先生がいらした時には誰もいなかったんですよね」

「ええ、少なくとも見えるところにはいませんでした。

部屋にこそ入りませんでしたが、事務所の中は受付の窓口越しに

見てはいたので」

そこまで答えて江田のほうを見ると

右手であごの髭剃りあとを撫でながら考え込むような姿を見せ呟く。

「ちょっと面倒なことになっているのかも知れませんね」


警官のうち一人の加藤という男に残って応援を待つように

伝えた後、彼女たちがいた部屋に向かう。

階段を昇りながら、先ほど死んでいた男のことを考えていた。

少なくとも出会っていない男。

監禁していた犯人達の仲間なのか、どこからか連れてこられたような

男なのか、自殺でないなら誰かに殺されたことになるが

タイミングがずれていたら現場に鉢合わせしていたかも知れない。

それを考えるとだいぶ運がよかったのではなかったろうか。

とりとめもなく考えている間に彼女達の監禁されていた部屋につく。


部屋は出て行った時と同じように見えた。

暗い部屋には電気が通っていないようで

部屋の電気のスイッチは反応しなかった。

警官のほうが持っていた懐中電灯で室内を照らすも

しまい込まれた事務用品があり、無理やり荷物を

押しのけられて作られた空間があるだけだった。

真っ暗な中に4人だけで閉じ込められていたのは

どれほどの恐怖だったのか。

今更ながらに怒りがこみ上げて来た。


「発見された時の状況は分かりました。

ご協力ありがとうございました。先生」

江田はそう言うと、別のものに詳しく調べさせると説明した。

下に戻ると、警官が増えていた。

今日はもう大丈夫ですという江田は

家まで車で送るよう同僚の刑事に話しを通して

その場からは開放された。

後日、また話を聞きたいという要望付きで。

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