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カミツキ  作者: たるん
2/11

探索

晴海 彩香が帰って来ないという連絡を受けたのは

朝の職員室でのことだった。

「尾崎先生、実は父兄の方からの連絡で先生のクラスの晴海が

昨日の夜から帰ってないらしいんですよ」

ちょうどトイレに立った時に代わりに電話に出てくれた

先生からの話によると、昨晩塾へ行ってから帰ってきていないらしい。

所謂、品行方正な真面目な子であるのは知っていたけれども

この年代の子が急に普段と違う行動を取ったとしても

個人的にはそれほど不思議には思わない。


ただ、ここ最近、この地域での女性の行方不明者が増えている

と警察からの注意連絡のあった矢先ということもあり

どうしても事件との繋がりを気にしてしまう。

とりあえず、教頭へ事の次第を報告したが、

他の生徒の動揺を誘わないよう

いつも通りの授業を進めることで話は纏まった。


出席確認は晴海がいない以外はいつもと同じ。

今のところ、誰も何も気に留めているようには見えない。


特に変わった様子もなく、一日の授業が終わり

職員会議が始まる。

議題は晴海の件だ。


「午後にも晴海 彩香の親御さんから連絡があり、

警察に捜索願いを出すそうです。」

学年主任の話が始まり学校側の対応について意識を合わせるのが

この会議の主な目的だろう。

「最近は女子生徒の行方不明が増えているから気をつけるようにと

警察からも通知があったばかりです。

尾崎先生、晴海さんについて、もしかしたら

知っている生徒がいるかもしれません。仲のいい生徒に

聞き込みしてもらいたいのですが。」

「わかりました。何人か心当たりはあるので話を聞いてみます。」

「いじめとか、そういったことがあるようでも

すぐに報告してください、対応を色々と考えないといけないので。」

その後は学校への問い合わせなどの場合に備えて

対処の方法を教員内で話し、その他の議事もありつつも

基本的には簡単な連絡事項のみで会議は終わりを迎えた。


晴海という生徒の印象は、

問題を起こすようなこともない

落ち着いた真面目な生徒。

おとなしいと思っていても急に変わってしまうような

生徒もいないわけではないが、

そういったイメージからはだいぶ離れていると思う。

行方不明になるのが晴海自身の行動だとしても

きっと回りが気づくようなことがあったはずで、

聞いておいて損はない。


教室に戻り、晴海がいつもいるグループの浦野 桂子に声をかける

「あぁ、まだ残っていてくれたか。晴海のことでちょっと聞きたいんだが。」

「私にも彩香のお母さんから

連絡あったんですけど、まだ見つからないんですか。」

「そうなんだ、晴海から浦野には連絡ないんだな。」

「来てないですね。昨日は塾の日だったから、私より先に帰っちゃいましたし。」

「そうか、浦野は晴海がどこの塾だったか知っているか。」

「駅の東口にあるマックの隣ビルに入っている塾です。」

「あそこか、わかった。ありがとう。他に誰か

晴海のことを何か知ってそうなのはいるかな」

「加奈子も仲いいですけど、大体私も一緒だし、

長瀬さんは中学一緒だったから、たまに話してたみたい。」

滝沢 加奈子は浦野と同じくグループの一員だが、

今日は見当たらない。

「今日は滝沢は一緒じゃないのか」

「加奈子は部活ですね」

「バスケ部か、ちょっと滝沢にも話を一応聞いてみるよ、ありがとう」


そのまま体育館へと向かうと、すでに部活は始まっていたようで

男子、女子のバスケ部が体育館の手前半分、奥をバレー部が使っていた。

半分をさらに半分に分けて男子と女子が分かれている。

入り口近くにいた女子バスケ部の生徒に声をかけて

滝沢を呼び出してもらう。

「先生、どうしたんですか」

「休んでる晴海についてみんなに聞いて回っているんだが、

ちょっと時間いいか」

「いいですよ」

体育館から廊下に出ると改めて話を聞く。

「晴海が昨日から帰ってないのは知っていると思うが、

何か心当たりはないだろうか」

「家出とかは聞いたことないし、そういうことをする子でも

ないと思うんですけど。」

「彼氏のところとか、そんなことでもないか」

「あの子はかわいいんですけど、何か身持ちが硬いというか、

少なくとも彼氏がいるような話は聞いてないし

そんなそぶりも見ないから、彼氏のところに押しかけて

みたいなこともないと思いますよ」

「そうか」

予想はしてたが、あまり有用な情報が得られそうもない。

「そんなだから何か事件にでもと思って心配なんですけど」

「それはないと思いたいが、心配だな」

自分の正直な感想だ。


「晴海から連絡あるようだったら教えてくれ」

連絡先を教えて話を切り上げ、滝沢を部活に戻らせる。

長瀬のほうにも話を聞きたかったが

教室には見当たらなかった。

部活には入ってなかったはずなので

もう帰っているのだろう。


「ちょっと私は駅近くを見回ってから帰ります。」

教室から職員室へと戻り、ちょうどコピーを取って

デスクに戻って来た学年主任に生徒に聞いた話を共有した後、

引き上げる旨を伝えて、学校を出る。


浦野から聞いた塾の場所に寄る為に

秋永駅にやってきたが、時間帯からか学生の姿が多い。


少し歩いて聞いていた場所の塾の前まで辿り着き、

隣のファーストフード店を覗いてみるも、見知った顔はいなかった。

そのまま駅の方に戻りながら、途中のコンビニに立ち寄り、

道沿いのゲームセンターにも寄る。

クレーンゲームが軒を連ね、奥にはプリクラがある。

しばらくプリクラを取っている女子高生達をしばらく観察するも

うちの学校の制服を着ている学生は数人見かけたが、

やはりというか晴海に出会うことはなかった。

店から出て再び歩き始めると間もなく駅前まで戻ってくる。


駅ビルには商業施設も併設されており、ビル内には

若い子向けの服も多数売られているので

そちらにも足を向けることにする。


さすがに大人の男一人で回るにはだいぶ浮いてしまったが、

若い子向けの服のフロアを一回りして、

軽食や本を売る上層階へと向かう。

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