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よろしくお願いします。

「え? 四人部屋と二人部屋しかない?」


 魔王の脅威も無くなり平和になった世の中では、ちょっとした怖いもの見たさで竜の巣を見ようと、観光客が殺到した。

 そんな観光スポットで、唯一僕らが泊まれる部屋が取れたのはこの宿だけだった。

 

 一階は酒場で、二階が宿屋と言う、この国では至って普通の宿屋。

 で、残の部屋がそれだけだけなの? っと、声に出した事を後悔した。

 なぜなら、


「あらあら、その二人部屋! 当然私たちの愛の巣……。我がタリスマン侯爵家の姉弟が使うべきですわね!」


 高らかに言い放つ姉上と、


「おろおろ? 二人部屋は婚約者同志のわっちとアルが使うのが、常識じゃろ?」


 なぜかヒルデは、両手に魔力を溜めて戦闘準備万端!


 ゆっくり体を休むはずの宿屋で、なぜこんなにも空気が重く、殺気立っているのか?


 うん。

 僕は覚悟を決めた。

 だから、


「え? なんですかアルさん? 私をジッと見て?」


 コテンッと何の疑いも無く、隣で僕を見つめるマリアーナ。

 ゴメン。

 でも僕は………………さっさと休みたいんだ!

 僕は心の中で東洋の最上級とされる謝罪。

 Do・Ge・Za!

 をして、彼女の尊い犠牲に敬意を払い、


「あ~あ。姉上とヒルダの争いって、日を股ぐんだよね? あ! 僕もう休みたいから、マリアーナ。一緒に休まない?」

「え? 私? え? え?」


 戸惑うマリアーナに何気なく爆弾を落とした。

 そんな僕の言葉に、姉上とヒルデの体がピクリッと動き、


「ああ? 誰と誰が一緒の部屋ですって?」

「ああ? 誰と誰が一緒の部屋じゃと?」


 地の底から噴き出るような殺気が、この場を支配した。

 うん。ゴメンマリアーナ。

 予想よりかなり、いや、ずっとずっとず~~~~~~~っとヤバイ!


 僕は反射的に彼女を腕に抱き、クルリッと体を反転させる。

 刹那。


 ズシャァァァァァァァァァァァ!


 さっきまでヒルデがいた場所。

 きっと部屋の扱いが荒い冒険者も立ち寄るこの宿の、頑丈だと思われる床が抉れた。

 その下にある地面は……………。

 うん。

 底がまったく見えない!


 宿屋のオッチャン! 後でちゃんと修繕費払います!

 そう心の中で呟く僕だが、これで現実逃避してはいけない。

 さっさと部屋で休みたい僕は、片手でマリアーナを抱えながらも、めんどくさそうに姉上たちと向き合う。


「何をしてんですか姉上、ヒルダ! 僕はもう休みたいんですよ! お二人とも忙しそうだから、同室をマリアーナに頼んだのですが?」


 首を回してため息を一つ。


「別に僕は、ベッドが一つだって、姉上とヒルダと一緒にいたいと思ってたのですが……」

「「はい! 喜んで!」」


 え? いったいどこの脳筋騎士団?

 なんて思えるほど威勢の良い声を上げ、


「「でも、その前に…………」」


 二人は殺意を通り超し、ある意味無の境地のような、悟りを開いた瞳でマリアーナを見ていた。

 刹那!


「……………グビッ! 『身体強化!』」


 自身の防衛本能に従い、魔力回復役を飲み(いやいや、お前今日、魔法使ってないだろ?)脱兎のごとく宿屋から飛び出すマリアーナ。


「あらあら?」

「おろおろ?」

 

 それをとても楽しそうに追いかける姉上とヒルデ。

 僕はそんな彼女たちを見送り、


「マリアーナには後で何か、取っても疲労を回復するものを送っておきます!」


 そう言い放ち、僕は吹き飛んだ扉に向かって黙とうしたのっだった…………。

次回! あの人物が登場!(いや、誰だよ!)

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