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少し短いです。
「さあ! この先が竜の巣ですわ! でも! その前に!」
そんなこんなで、僕らは竜の巣があるとされている北の山脈のふもとにある町ヒルデンに来ていた。
姉上が言い出して僅か二時間後のことだ。
王国からヒルデンまでは、朝昼関係なく馬を爆走させても、二日は掛かる場所にあるのだが、
もちろん、例の如く。
「うむ。わっちのテレポートの魔法を使えば、問題ないのじゃ!」
そう、豪語するヒルデ。
普通。テレポートの魔法って、術者が一回行った場所、もしくは術者の視線が届く範囲っと決まっていて、しかも物凄く魔力を使うんだけど……。
やはり僕の婚約者は、姉上と同等に規格外だった。
なぜなら、
「おろおろ? それでは行くのじゃ! |エターナルテレポート《目的地に着くまでの連続転移》!」
己の無尽蔵な魔力をそれこそ暴力的に消費し続け、地図を見ながら方角を修正しつつ、視線が届く範囲で転移。
最短な距離で竜の巣までテレポートし続けたのだ!
「うん。もう、このまま竜の巣で良くない?」
そう提案する僕に、
「あらあら? ダメですわ! だってだって、それでは物語通り最後の町で愛を育めないではないですか!」
握り拳を作り力説する姉上。
うん、もうなんか、そう言うことらしい。
僕が無言で諦めているのを、姉上が了承と取ったらしい。
「はい! 長く厳しい旅でしたが、ここからが本番ですわ!」
姉上ばかりか、ヒルデまで乗っかって来て、
「そうじゃの。『混浴でドッキリ!』とか、夜、小高い丘で『アルセウス流星群』を二人きりで見て、将来を約束し合ったりとか、いろんな事が脳裏に……ぐべっ! なんじゃ義姉様よ! そんな本気の殺気を向けられたら、淡い思い出が走馬灯のようになってしまうじゃろ!」
「あらあら? 走馬灯で間違いはないですわ! 劇にはありませんでしたが、あなたはここで、アルと私の恋路を邪魔し続け、その果てに非業の最期を遂げた、最悪皇女……いえ、尊い犠牲になるのですから!」
愛剣をしごく姉上に、
「おろおろ? それは義姉様の事では無いじゃろうか?」
両手に魔力を溜めるヒルデ、
いきなり雪深い北の大地で最後の大決戦!(のようなもの)がはじまろうとしてた…………。
なんて、すでにそんな彼女等の行動を飽き飽き見ている僕は、
「姉上、ヒルデ。先に宿を取っときますから、遊び終わったら来て下さい! マリアーナ! これぐらいの事で、大量に魔力回復薬を飲まない! ミナは逃げようとしない! メイリン! お金を払わないで、屋台の食べ物を持ってこない! それより皆荷物持って! さあ行くよ!」
そう言い放ち、振り返ることなく、町の宿屋に歩を進めるのだった。
最期までお読みいただきありがとうございます!
作者、いろいろあって絶不調です!
応援ポイント、よろしくお願いします!