ぷろろーぐ?
はぁ。なんとか月末に投稿できたぜ!
なんて思っていたのに、すでに六月を過ぎてました!
そんなぼけぼけの作者を、作品と一緒に生暖かい目で見てやってください。
「あらあらアル! 今宵の月は、私たちの婚約を祝福するかのように輝いていますわ!」
風が初夏の匂いを運んでくる夜。
雲ひとつ無い満月が照らす城下町。
その中心にある、文字通り豪華絢爛な王城で行われている舞踏会。
心地よい音楽が響く中、煌びやかな衣装に身を包む紳士淑女が笑みを浮かべて談笑やダンスと優雅な時をすごしていた。
そこからやや離れた中庭で、空を見上げる僕ら。
「そうですね。婚約なんてした覚えはないし、これからもしないですが、夜空に輝く満点の星と月は綺麗ですね!」
今夜の夜会のエスコートはしているが、キッパリと、はっきりと、婚約とかは絶対無いと拒絶の言葉を口にする僕に。
「あらあら? それでは婚約を飛び越え、いきなり初夜……ですの?」
うん?
モジモジしながら頬を染める彼女は、とても魅力はあるけど……。
なんで僕の完全拒絶の言葉が、そう取られるの?
「アル…………」
僕の腕に身を寄せ、うっとりとした瞳を向ける彼女。
いったい、どうすれば彼女に僕の思いが伝わるのだろ?
拒絶の言葉を使いきった僕は思わず、
「はあ。もしかしたら、あの月にでも行けば、願いが叶うかもしれませんね」
そんな事を呟いてしまった。
刹那!
「あらあら? そうですか? そうかもしれませんね! もし月に誰もいなければ私の都合の良い法律が作り放題ですもの! まあ、もし先住民がいても…………では、行ってみましょう!」
「え?」
自分が呟いた言葉を後悔する間もなく、僕は彼女にガシッと腰をつかまれ、
「え? え? ちょちょ、ちょっと待ってあね…………うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕の腰を抱いた彼女は、有無を言わせず大地を蹴り抜いた!
風が初夏の匂いを運んでくる夜。
雲ひとつ無い満月が照らす城下町。
その中心にある、文字通り豪華絢爛な王城で行われている舞踏会。
心地よい音楽が響く中、煌びやかな衣装に身を包む紳士淑女が笑みを浮かべて談笑やダンスと優雅な時をすごしていた。
刹那!
ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
大気を震わす轟音と、堅固な城が揺れるほどの衝撃。
テーブルに所狭しと載せられていた贅を尽くした料理や、高価な酒が盛大に床にぶちまけられた。
悲鳴を上げる淑女に、呆然と立ち尽くす紳士。
誰もが動けないと思われる中、
「テロか? 魔物の襲撃か?」
さすがに警備兵たちが動き出していた。
どうやら衝撃の元は、城の中庭に空から降ってきた何かのようだった。
何か? っとあいまいな表現なのは衝撃で煙立つ抉れた地面の底が、深すぎて見えないからだ。
「ジャン! トーマス!」
隊長と思しき人物が発した声を合図に、無言で穴に近寄る二人の兵士。
二人は一定の距離まで穴に近付くと、視線を合わせて頷き合い、槍を持った一人が穴に近付いていく。
その槍が、穴に届こうとした刹那!
ぎゅっ!
槍の穂先が、穴から伸びた腕につかまれた。
そして、
「ありがとう。助かった!」
槍を引っ張るようにして穴から飛び出したのは、
所々ほころび、煙が上がる、でも上品だと一目でわかる服に身を包んだ、精悍な顔立ちの、でも目元が優しげな少年だった。
『え? なんで穴から少年が? しかもこの衝撃で、何で生きてるの?』
いろんな疑問が駆け巡るのだが、それは序章でしかなかった。
「あらあら皆さん。ごきげんよう!」
続けて穴か出たのは粉塵の中にありながらも、シワ一つ無い漆黒のドレスを身に纏う一人の美少女。
いや、ほぼ女神と言っても加減では無いほどの美しい少女だった。
誰もが動きを止め、呼吸すらも忘れる中。
彼女の緋色の瞳が、獲物を見つけたかのように一際鋭く輝く。
そして、
「アルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
美声だが、どこか気の抜けた声が響き渡った。
「あらあらアル! こんな所で出会えるなんて、やはり私たちは運命で結ばれているのですわ!」
男なら一度は言われてみたいランキング上位の言葉を口にしながら、彼女が僕に恐ろしいほどの速さで抱きつこうとするが、
「氷の壁」
その勢いを削ぐため、魔法で分厚く高い氷の壁を作り出す。
もちろん、彼女がこれで止まるはずがないと、その場から逃げ出す僕の耳朶に、
ばきぃぃぃぃぃぃん!
氷の壁が破砕される音が響く。
「あらあらアル? 月に行けば私たち、結婚できると言ったのはあなたではないですか?」
「うん。言ってない! それにもし月に住民がいたとして、そこにいる住民にもちゃんと法律はあるはずです!」
「大丈夫ですわ! たとえ月に先住民がいたとしても、私がちゃんと拳で……誠心誠意説明をして、法律自体を変えてみせますわ!」
「それって、ここでも嫌ってほどしてきた実力行使じゃないですか!」
隙あらば僕を抱きしめようとジリジリと間を詰めようとする彼女と、あの手この手を使い距離をとる僕。
だって、
彼女は僕の…………。
「あらあら? 良いではないですか!」
「言い訳ないでしょ!」
僕の、
「だってあなたは、僕の姉上じゃないですか!」
この物語は、大陸最強と謳われる少女と、彼女の愛を一身に受ける、実弟が織りなす物語である!
プロローグ? は何とかなったのか?
不定期になると思いますが、できるかぎり続けていきたいと思います!