第三話
一人目のヒロイン登場です
「京都府から引っ越してきました、長瀬綾人です。
みなさんよろしくお願いします。」
うん、ちゃんと言えた。俺、がんばった。
よーし、よくやったぞ、俺。
このものすごく期待されているムードの中でよくやった。
しかし、生徒からの反応が怖い。俺が挨拶をして数秒後……
「なんだー。女子じゃねぇーのかぁー」
「もっとイケメンだったらよかったのになぁー」
などと言う声が聞こえてくる。
いくら俺でもすこし傷つくんですけど。
その一方で、
「モブどうし仲良くしようぜー」
「声だけならめちゃくちゃ好みなんですけどー」
そんな声もある。
『声だけなら』って、つまり見た目はダメってことだよなー。
うん、聞かなかったことにしよう。
「今日から一緒に一年間を過ごすから
みんな、長瀬くんのことをよろしくね!」
最後に宮野先生がそう言って、その場を閉めくくった。
「じゃあ、長瀬くんの席はあのあいてるところだから、そこに座って」
先生は窓際の列の一番後ろの席を指さしながらそう言った。
窓際の一番後ろって、よく主人公キャラが座るところだよな。
俺が目指してるのは主人公キャラじゃなくて陰キャラなんだよな。
そんなことを考えながら、自分の席に向かおうとしたが、
俺は即座に足を止めてしまった。
なんでかって?
それはだな、俺の席のとなりに座っている人がめちゃくちゃ美人だったからだよ!
水色で肩まで伸びた髪、整っていてクールな感じをイメージさせる顔だち。
10人に聞いたら全員が美人と答えるだろう。
まぁいつまでも立っていると変なので覚悟を決めて席へと向かう。
そして、席に着くとさすがに何の挨拶もないのは失礼だと思い、挨拶をする。
「えっと、長瀬綾人ですよろしくお願いします」
「…………」
あっれれぇー、おっかしいぞー何の反応もない。
俺嫌われてる?いや、そんなわけないだろ、だって今、あいさつしたばっかだよ
うん、そんなわけない。そうなると、考えられる選択肢は二つ
選択肢①、そもそも聞こえていない
選択肢②、人見知りで無視されている
まず、俺はそれなりに大きな声で挨拶したから①はない。
よって答えは②となる。(数学風)
ということで、もう一度トライしてみる。
「長瀬綾人ですよろしくお願いします」
「…………」
あれっ?聞こえてない?
「あのぉー、聞こえてます?」
「……何、私に何か用?」
何かちゃんと聞こえてるのか聞いたら、ものすごくいやそうな顔で返事をされたんだが。
「いやぁ、とりあえずとなりの席だし挨拶しとこうかなと思って」
「……必要ない、私はあなたの名前を知ってるから」
挨拶って名前知ってたらしなくていいんだっけ?
でも、俺この人の名前知らないんですけど。
「あの、俺は君の名前知らないから」
「……そういえば・・・私の名前は佐々見弥生。よろしく」
「えっ、あぁこちらこそよろしく」
佐々見さんって意外とぬけてるところがあるのかもしれないな。
「佐々見ちゃんドジだねぇ」
すると前からそんな声が聞こえてきた。
「……うっさい……」
「それはどうも、あぁ長瀬くん俺は河合秋人よろしくっ!」
俺の席の前に座っていた河合はそう言った。
挨拶されたからこちらも返す。
「こちらこそよろしく頼む」
俺がそう言うと秋人は
「そんなにかしこまらなくてもいいって、俺のことは気軽にアキトってよんで、
俺も長瀬くんのことはアヤトって呼ぶからさ」
といった。
「じゃぁ、こっちこそよろしくアキト」
「おうよっ!」
っと、こんな感じで俺の高校生活一日目は終わった。
何事もなく高校生活を送れると思っていたのだが、
問題が起きたのは次の日の昼休みだった。
そう、一人の女子生徒のせいで綾人は校内の大半の男子生徒を敵にまわすのであった。