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バケモノは。
あるバケモノの話をしよう。
お前は何者だ、とか急過ぎるとか、苦情はさて置いておいてほしい。
とにかく私は、諸君に聞いて欲しいのだ。
昔、いやそう古くもない話だがね、あるところにバケモノがいた。
バケモノと聞いて君達はどんな姿を想像するだろうか?
角が生えたおぞましい怪物?はたまた、超人的に物事をこなしてしまう完璧人間だろうか。
だけど、私の話に出てくるバケモノはちょっと違う。
バケモノは寂しがり屋の、孤独で酷くつまらない存在なんだ。
いつだって心の中を他人に見せた事はない。
人気者だけど孤独。優等生でも無ければ、劣等生でもない。正義の味方でもないし、悪役でもない。
要するに、凡人。つまらない、つまらない。
なんでそんな奴がバケモノなのか、って?
どこにでもいるだろう、って?
ああ、確かにこんな奴は何処にでもいるだろうし、もしかしたら君自身がそうなのかもしれない。
だけどね、そうだよあいつはたしかにバケモノなんだ。
暗い暗い水底に、ふつふつと沸いて出た1人の救いようの無いバケモノだったんだ。