表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

プロローグ後編

どうもプロローグを前後編どころか、前中後編になりかけたアホな作者です。


一応これでプロローグは終わりますが、主人公の生前の話はまたいずれ書くかもしれませんのでご了承ください。

数時間後……


 俺達はコンゴ東部に来ていた依頼人(CIA)が軍事衛星で犯行グループのアジトである廃墟を突き止めたのだ。その廃墟は数十年前に先進国のとある企業が自社の長距離輸送トラック用の中継地点として建設された補給基地だったが、治安の悪化に伴い企業が撤退し破棄されたのを良いことに今では奴等のアジトになっていた。


「見える範囲では5人いるな、ドローンはどうだ?イワン」


 2キロ先の廃墟を双眼鏡越しに眺めながら俺は、タブレットPCを操作しているイワンに声をかける。


「ドローンは廃墟の真上を旋回させてる。後5人此所からだと死角の位置に見張りがいる」


「なら、外に居るのは10人か…俺達なら楽勝だな」


 ドローンを操作しているイワンのパソコンを覗き見しながらイーサンが気楽に言う


「だが廃墟内の敵が未知数だ」


「止まってる車両の数からして50人くらいはいますね」


 ユーゴの疑問に仁が答えた。たしかにあの車両数ならそれくらいの人数は居そうだ。


「問題なのは人数だけじゃない……これを見てくれ」


 ドローンを自動操縦に切り替えたイワンがタブレット画面を俺達に見せた。


「これは建物の設計図か?」


「補給基地を建設した企業のデータベースから入手したものだ。今のあの廃墟と見比べる内容がかなり変わっている。」


「つまり企業撤退後、奴等が改築したと?」


「有り合わせのもので作られているが軍事拠点としての役割を果すには十分な出来映えだ」


「チッ……余計なことを」


 イワンの説明にイーサンは顔を歪ませる。たしかに補給基地時代にはなかった見張り塔や4~5人くらいが潜むには丁度いい小屋などがあった。ただでさえ人数が多いのにこれでは殺りづらい


「ん?敵が動いたようだよ」


 双眼鏡を覗いていた。ダリオが報告する。俺は再度首から下げた双眼鏡を覗きこむ廃墟内にいた武装した男達が次々と車に乗り込んで移動を始めた。


「まさかバレたか?」


 狙撃銃のスコープ越しに見ていたオズボーンが呟く


「ここ数年この時間帯になるとコンゴ政府軍の物資運搬車両が襲撃される事件が頻繁に起こっているそうだ政府見解では襲撃犯は新興の武装勢力だと報道されていたが……なるほど奴等の仕業だったか」


「時間的に今からまた襲撃しに行くと?」


「可能性は高い」


「ちょっと待ってくれ奴等は要人誘拐しておきながら身代金をまだ手に入れてないのに山賊の真似事をしてると言うのか?」


 俺はイワンとユーゴの会話に思わず割り込んだ。誘拐で利益を出す犯罪グループがまだ金を手に入れてない段階で別の犯罪を犯すのは俺の経験的にあり得ないことだったからだ。なぜなら誘拐という時間の掛かる犯罪を実行中に別の犯罪をするのは誘拐された側や事件を捜査する警察機関に自身の居場所を教えているようなものだ。実際に今回のような金目的の誘拐犯から人質を奪還する仕事を何回も経験したが、どの誘拐犯も金を手に入れるまで自身と人質の居場所がバレないように潜伏していた。


「つまり本業が山賊で今回の誘拐は一攫千金を狙った素人のまぐれ当たりってことかい?」


「ちょっと待て、それじゃあCIAの話と違うじゃねーかよ」


 ダリオの出した結論にイーサンが意見する。


「ならCIAが敵を過大評価したってことさ……見てみろよ、銃持って調子に乗ってるチンピラじゃないか……プロの人攫いとは思えないね」


 ダリオの言うことも一理ある。見張りに立ってる奴はサボっていて見張りの役割を果たしていない。酷い奴は見張りそっちのけで大麻(葉っぱ)吸ってるバカもいた。


「フム……装備もプロの人攫いとは思えんなAK-47のコピー品とは、まるでゲリラだな」


 スコープ越しに見張りを眺めるオズボーンの発言の通り奴等の見た目ゲリラそのものだった。小汚い私服に半世紀前にソ連で設計された突撃銃(アサルトライフル)AK-47と稀にこれまたソ連で開発された対戦車ロケットランチャーRPG-7を装備しているだけであった。先ほど移動を開始した車両組も民間のピックアップトラックに機関銃を取り付けただけの即席戦闘車両(別名テクニカル)やワゴン車に鉄板を張り付けただけの装甲車モドキとあまり良い装備と言えない物だった。


「北北東に30人ばかり向かったな……イワンその方角には何がある?」


「政府軍の軍事施設がある。10分前に補給物資を積んだトラックが別の基地に向かって出発した。奴等の狙いはその物資だな」


「つまり奴等が戻ってくるのはしばらく後だな?」


「断言は出来ないが……今回は政府軍も護衛をトラックに付けたようだ。あのゲリラども苦戦するな」


 パソコンを操作しながら俺の質問に答えるイワン、なぜ政府軍の情報を知っているのかは合えて聞かないどうせ非合法な手段で入手したからに決まっているからだ。


「奴等の誘拐の手際の良さと奴等の組織自体の質の低さという矛盾があるが、大多数が基地に不在の今が一番の好機だ。このチャンスを逃すつもりはない俺はこのままマクドネルを助けるべきだと思うが、皆はどうだ?」


「賛成だね、早くしないとイギリス側があのゲリラに身代金払って僕らの報酬がなくなっちゃうよ」


「そうですね、不確定要素もありますが、慎重過ぎて報酬が無くなったらわらえませんし……」


「俺も300万がパーになったら洒落にならん、さっさと金持ちのおっさん救おうぜ」


「私も不安はあるが身代金の期限まで時間がない……ここはリスクを取ってもマクドネルとかいう英国紳士の面汚しをを救うべきだ」


「皆が賛成するなら私も賛成だ…イワンはどうかね?」


「右に同じだ」


 数人思うことはあるようだが救出には賛成のようだ。


「反対はいないな?なら早速行動を始めよう。フォーメーションはいつも通りで行くぞ!」


 目標が決まると俺達の行動は早い。


 まず、イワンが軍事衛星が捉えた補給物資略奪が目的と思われる敵の移動車両を監視、俺達がここまでの移動手段として使ったバン(現地で買った中古品)の近くにスタンバイしているオズボーンがサイレンサーを装備した狙撃銃L-115A3で2キロ先の見張り塔にいる見張りを始末して敵の監視に死角を作る。その死角からイワンとオズボーン以外のメンバーが廃墟に潜入、潜入組は人質を救出する班(俺とイーサンとユーゴ)と敵さんに置き土産を残す班(仁とダリオ)に別れて行動を開始する。


「人質を発見するまでいつもみたいな派手な行動はするなよ」


「解ってんよ!!」


「イーサン、あまり大声出すな気付かれる」


 潜入に成功した俺達、救出班は敵に気付かれないように足音を消して人質にされたマクドネルを探していた。


『ケンジ、君らから見てこの先の十字路九時の方角から巡回中の敵が2人来ている。気を付けろ』


 インカムからオズボーンの声が聞こえるどうやら俺達死角から来る敵を2キロ離れた場所からスコープ越しに確認したようだ。


『了解した。こちらは物陰に隠れるとしよう。オズボーンこちらに敵が接近したら狙撃は可能か?』


『問題ない、二人とも気付かないうちにあの世に送ってみせよう』


 通信を終了すると救出班の面々は敵二人が来る前に物陰に隠れた。



「この仕事が終わったら300万が俺達に転がり込むのか、政府のトラック襲うよりいい商売だよなこれ」


「ギャハハ!違いねーや、山賊の真似事やめてこっちに鞍替えした方がよくねーか?」


 敵二人が駄弁りながらこちらに近づいて来る……そろそろか


()()()()()()()()()()返すだけで300万だぜ!?まったく楽なしょうb―……」


 駄弁っていた敵の一人の胸に風穴が開く―――オズボーンが放った.338ラプアマグナムが敵の胸部を貫いたのだ。胸部に穴か開いた敵は自分に何が起きたか理解出来ぬまま命を落とし後は崩れ落ちるのみだった。


「アハハ……ん?いきなり黙ってどうしt―……」 よそ見をしていたため仲間が絶命した瞬間を見逃した隣にいた敵は声をかけながら崩れ落ちようとする仲間に視線を向ける前にオズボーンの放った2射目の狙撃で仲間と同じ運命を辿った。


『ナイスショットだオズボーン』


『ありがとうMr.ケンジ……だがそろそろ君らへの狙撃支援はここまでだプレゼントを用意しているMr.ジン達の狙撃支援に切り替えたいんだが……大丈夫かね?』


『問題ないあの駄弁りコンビのお陰でマクドネルの居場所も解ったからな』


()()()()()()()()()()だな?解った狙撃地点を切り替えて置き土産班の支援をするよ』


 通信を終了すると俺は骸に成り果てた駄弁りコンビの会話を思い出す奴等の話した()()()()()()()()()()たしかマクドネルの体系は肥満ぎみだった。なら、そのデブがマクドネルである可能性は高い


「ユーゴ、倉庫は南の方だよな?」


「ああ、正確には南西だな」


「ちけーな、あのおしゃべりども死ぬ前に役に立ったな」


イーサン……敵とは言え酷い言い様だ


「余計な手間が減ったなとりあえず倉庫に向かおう」


 潜入を再開する。オズボーンの狙撃支援が無くなったからといって隠密行動に支障が出るほど俺達は柔じゃない


「見張りメンドクs―……」グキッ


「なら寝てな……永遠に」


 近接格闘戦が得意なイーサンが敵の背後から忍びより敵の首をへし折って絶命させ



「お前!だr―……!?」


「首の頸動脈を切った………君は声を発することも出来ぬまま60秒後に失血死する」


 傭兵である前に医者でもあるユーゴはその知識を生かしメスで敵の急所を突いて静かに殺し


「あれ?誰も居ねぇ……サボりやがっt―……」


パスッパスッ


「…………」


 そして近接戦をしている二人の間合いから離れた敵には俺のサイレンサー付きM-1911コルトガバメントの45口径の鉛玉を頭と心臓に放った。



「ここが倉庫か……」


 最短距離で進んだお陰で早めに倉庫の前に着いた。倉庫はトタン製で長年放置されたせいか老朽化していた。周りに見張りはいないが中から声が聞こえるので中にマクドネルとその見張りが居るのは確実だろう。


「扉の近くにAK持ち一人、奥に椅子に縛られたデブ一人、そのデブを小突いてる腰にハンドガンのバカ一人……」


 老朽化したトタンにの二センチほどの小さな穴から中の状況をイーサンが解説する。縛られたデブは恐らくマクドネルだろう。


『こちら健二、マクドネルが拘束された倉庫前に着いた。これから突入する』


『ハイハイこちらダリオ、りょーかいしたよ。こっちもプレゼントの仕掛けは完了したよ。敵もうちのA級スナイパー(オズボーン)が始末したから派手に突入して構わないよ♪』


『了解、パーティーするには物足りないが派手に殺るぜ』


 通信が終了してイーサンの方を見ると奴は今回一回も使っていないお気に入りの刀身だけで30センチはあるマチェットを抜いた。殺る気は充分のようだ。


「ユーゴ、突入したらマクドネルを診てやってくれ」


「了解した。死んでないなら治してみせるよ」


 ユーゴも問題ないようだ。


トントントントン


 とりあえず倉庫の扉をノックする。ノック回数を仲間内で決めてなければいいのだが……


「なんだ?もう交代の時間か?今開けるから待ってろ!」


 中から声が聞こえる。さっきの心配は杞憂のようだ中の見張りが扉を開ける準備をしている間俺はイーサンとユーゴの顔を見る。二人も俺の顔を見て頷いた………さぁやるか


「さぁ開けたz―……」


 扉が開いた瞬間、扉を開けた見張りの首が飛んだ。イーサンがマチェットを横一文字に振ったので胴体と永遠の別れをしたのだ。


 敵を斬首したイーサンの横をすり抜け倉庫内に俺とユーゴが突入する。


「ナッ!誰だテメーら!?」


 さっきまで一緒にいた。味方の首が飛んで動揺したようだが俺達を敵と認識は出来たようで腰の拳銃を抜こうとしていたが………遅いな


 奴が拳銃を抜こうとしていた頃には俺は今回まだ使っていないアサルトライフルAKM(AK-47の改良型)を構え既に引き金を引いていた。


ババババッ――――


「グフゥ!」


 フルオートで放った7.62×39ミリ弾はすべて見張りに命中し奴は絶命した。


「ヒッ!……だ、誰だ!?こ、殺さないでくれ!」


 椅子に縛られたデブもといマクドネルが混乱していた。まあ、いきなり人の首が飛んだりしたら混乱しても仕方ないのかもしれない。


「落ち着いてください、我々は依頼であなたを助けに来ました救出チームです。もう大丈夫ですよ」


 俺はマクドネルを落ち着かせるために丁寧に語りかけた。


「き、救出?………わ、私は助かったのか?」


 怒涛の展開で着いていけなかったマクドネルも少しずつであるが落ち着いてきた。


「暴行を受けた痕があるが………命に別状はない」


 ユーゴが縛られたマクドネルを簡易検査して異常がないか確める。


「大丈夫なんだな?ならさっさと縄解いてズラかろうぜ………ん?ケンジどうした?」


「………」


 マクドネルの縄をほどいているイーサンは倉庫のある一点だけを見つめている俺に声をかける。俺の視線の先にはカバーがかけられた車サイズ物体があった。


「…………ッ」


 気になってしょうがなかった俺はカバーを無理矢理ひっぺがした。


「こ、これは!?」


「まさかこんなものを隠し持っていたとは……」


「こ、こいつはヒューイじゃねーか!?」


 カバーの中にはベトナム戦争時にアメリカの軍用ヘリコプターとして活躍した汎用ヘリコプターUH-1(通称、ヒューイ)が鎮座していた。


「ゲリラふぜいが持つ代物じゃないぞ」


「でもこのヒューイボロくね?」


 イーサンの言う通りこのヒューイかなりボロい、塗装は剥げているし側面にあるドアもないしでヘリの素人が見ても乗るのを拒否するような代物だった。


「お、ケンジ!どうやらマクドネル………さん、の救出は出来たようだね」


「健二さんプレゼントの設置終わりました。早く撤退しm―……うぉ!!ヒューイ!?」


 そうこうしているうちにダリオと仁が合流した。元ヘリパイの仁もヒューイに驚いていた。


「イワンとオズボーン以外は集まったな?あの二人を呼んでさっさと撤t―……『緊急事態だケンジ』ッ!イワンどうした!?』


 いきなりインカムからイワンのSOSに俺達に緊張がはしる。


『移動した車両とは別の車両群50がこの補給基地に向かってる装備はここの奴等と似たような代物だ………どうやら俺達が来る前に出払ってた奴等が今ごろ戻って来たようだ』


『何!?』


 見誤ってた……俺達が来たときからいた奴等をこの補給基地の全戦力と誤解していたのだ。


『今、オズボーンが敵車両群のドライバーを集中的に狙撃して足止めしているが……数が多くて長く持ちそうもない』


『解った!二人はタイミングを見てバンに乗ってこっちn―……『無理だ敵の銃撃でバンのエンジンがやられた持ちそうもない』何だと!?』


 まさかの自分たちの移動手段が潰された。俺は予想外の出来事に久々の命の危機を感じたがふと顔を上げるとあるものが目に入った。


「仁、このヒューイ動かせるか?」


「!?ちょっと待ってください!…………燃料は入ってますし倉庫から出すための器具もありますので問題ないですが………今までかなり年期のある機体ですので安全に飛ばすとなると………」


「背に腹は変えられん、仁とダリオはヘリをすぐ飛ばせるようにしてくれ!」


「り、「了解!」」


「ユーゴはマクドネルさんの治療と護衛を」


「患者のことなら任せてくれ」


「イーサンは俺と来い!ヘリが飛ぶまでの時間稼ぎと………二人の救援だ!」


「そう来なくちゃなぁ!!」


『イワン聴いての通りだすぐに行くから死ぬなよ』


『……了解』


 さぁて、第2ラウンドの始まりだ!









 とりあえず倒した敵の落としたRPG7を回収しながら俺達はオズボーン達のもとに向かう。途中オズボーンの狙撃を突破した敵は俺のAKMかイーサンのアサルトライフルM-203グレネードランチャー装備のM-4の餌食になった。


「おいケンジ!あれを見ろ!」


「あれはオズボーン達だ!」



 オズボーンはある程度走っては振り返って狙撃をするという高等テクニックをイワンはアサルトライフルAKS-74Uを敵に向かって撃ちながらムーンウォークのような足取りで後退するという変則的な動きでこちらに向かって撤退していた。大々の敵車両はドライバーや機銃手を狙撃されて追撃を中断した。しかし車両群の中から二人の猛攻をはね除ける車両が一台現れた。


「なんだあの分厚い装甲!?今までの装甲車モドキとは訳が違うぞ!」


 イーサンが驚くのも無理はない、今二人を追撃している装甲車モドキは見た感じ何枚も鉄板を重ねて取り付けた代物でオズボーンのL-115A3の.338ラプアマグナムでも貫通しそうになかった。幸いなのはあの装甲車モドキの機銃手をオズボーンが既に仕止めたため二人が機銃の餌食になる心配はないことだった。しかしまだ安心は出来ないあの分厚い装甲車モドキはその馬力を生かして二人に突っ込んで行く……二人を引き殺すつもりのようだ。


「イーサンコイツ(RPG-7)を使うぞ!」


「おうよ!!」



「イワン!オズボーン!伏せろ!」


 RPG-7を構えた俺達を見て全てを理解した二人が同時に地に伏せる。


プシュゥゥゥ

プシュゥゥゥ


 俺とイーサンが放ったRPG-7の弾頭が白煙を上げながらオズボーン達の頭上を通過し分厚い装甲車モドキに迷いなく突っ込んだ。


ドガーン


 RPG-7の弾頭を真正面から食らった分厚い装甲車モドキは爆発しその場で炎上し横転し、伏せたオズボーン達の手前で止まった。





「オズボーン!イワン!無事か!?」


俺は二人に駆け寄り呼び掛ける。


「大丈夫だ……問題ない……」


「Mr.ケンジMr.イーサン君達のお陰でミンチにならずに済んだよ。礼を言う」


二人は怪我ひとつ内容で普通に立ち上がった。


「今度スターゲイジーパイを驕らせてくれ」


「ゲッ!スターゲイジーかぁ……それよりフィッシュ&チップスにしてくれないか?」


 スターゲイジーパイ……星を見上げるパイというロマンティックな名前だが実際は魚を丸々パイ生地に包んで焼いた物で見た目はパイから魚の頭が突き出ている(星を見上げたのはパイじゃなくて魚だった……)


 ちなみにフィッシュ&チップスはフライにした白身魚にポテトフライを添えたもので俺的にはスターゲイジーよりこっちのが好み



「感動的な再会してるところ悪いんだけどよ……早くしねーと敵来るぞ」


 イーサンが呆れながら声をかけてきたどうやら話をしている間に追撃を断念していた敵の車両が追撃を再開しようとしていた。


「驕り云々は帰って300万を手にしてからにしよう今は兎に角………走るぞ!!」




 全力疾走で倉庫に向かうと既にヒューイは倉庫から出されプロペラを回していた。


「仁!飛ばせるか?」


 俺はコックピットにいる仁に呼び掛ける。


「駄目です!ガタがきててローターの回転数が足りません!」


 仁がプロペラの回転音に負けないように大声で返答する。ここに来てまたアクシデントである。


「敵がそこまで来ているなんとかならないのか!?」


「エンジンが温まれば飛べるかも知れませんが……少し時間が……」


「時間稼ぎなら任せろ!慣れている」







 その後は軽い修羅場だった。


 ヘリのコックピットにいる仁やヘリ内部でマクドネルを護衛しているユーゴ以外のメンツで派手にドンパチしたのだ。


 イーサンがM-4に取り付けたM-203グレネードで敵を車両ごとぶっ飛ばし、オズボーンが敵のリーダーや車両のドライバー、RPG-7の射手など危険度の高い敵を狙撃、ダリオは狙撃に集中していて無防備になっているオズボーンのスナイパーカバーに専念し、俺とイワンはオズボーン達に気をとられた敵を背後から回り込み奇襲した。




「健二さん!離陸準備出来ました!」


 5分という短いながらも命掛けの銃撃戦の末に仁から待ちに待った台詞が発せられた。


「待っていたぞ!みんな聞いての通りだヘリ乗れ」



 さっさとヘリに乗り込む群狼の面々後は飛び立つだけだ。


「離陸します!!」


 仁の呼び掛けと同時にヒューイは地面から離れたしかし敵がそんな俺達を逃がすわけもなく銃撃がヘリに放たれた。


「もっと高度を上げろ!ヒューイの装甲なんてたかが知れてるぞ!」


 軍用ヘリでもヒューイのような汎用ヘリは機動性のために防御性能は切り捨てられている実際ベトナム戦争時のヒューイも低空で飛行した結果地上のベトコンが放ったAK-47の銃撃がヘリの装甲を貫通内部の米兵が死ぬという笑えない出来事もあった故に敵の攻撃の届かない高さまで上昇しなければならないのだ。



「無茶言わないでくださいよ!このボロで無理矢理上昇したらバランス崩して墜落しますよ!」


 確かにこのヒューイ俺が別の依頼で乗り込んだヒューイに比べやたらとグラグラする。よくまあ、こんな機体が飛行出来るなと、驚きたいくらいだ。これはパイロットの仁の技術がなせる技かもしれない。


「やっべ!敵がRPGの準備してやがる!」


「ちょ!?勘弁してくださいよ!こいつで回避飛行したら墜落しますよ!?」


 イーサンの報告に仁が悲鳴をあげる。俺もこれまでかと思ったがあることを思い出した。


「ダリオ、奴等にプレゼントを渡してやれ!!」


「………ッ!なるほど任せな!」


 俺の命令に瞬時に全てを理解したダリオはやたらとゴテゴテとスイッチの付いたコントローラーを取り出した。


「注文が多くて悪いが、このヘリを巻き込まないようにしてくれよ……俺達はプレゼントをやる側であって貰う側じゃないからな」


 俺の注文に対してダリオは不敵に笑う。


「大丈夫さ、プレゼントを渡す順番位は換えれるように仕込んだからね」


不敵な笑みのままダリオは数あるスイッチの中からひとつを選ぶ。


「ヘリから一番離れているのは~これか………派手に逝こうか!五番着火!」


ダリオが五番のスイッチを押した瞬間……



ドガーン



 派手な音とともに見張り塔が吹っ飛んだ。音に驚き混乱している敵側はRPGの発射を中断してしまった。




「まだまだ逝くよ~八番着火!二番着火!」




ドガーン

ドガーン


 爆発音が補給基地の至るところから轟く―――




 そうプレゼントとはC-4爆薬のことで瘰マクドネルを救出したあと敵の追跡を妨害するために爆破の専門家であるダリオに補給基地の至るところにセットさせたのだ。



「三番着火!四番着火!六番も着火ぁ!!」


 次々と自分達の根城から爆発が起こったせいで敵は士気を失ない俺達に攻撃をする余裕すら無くしていた。


 ヒューイも仁が操縦に慣れたお陰か高度を上げ始めた。



「さて、ヘリも爆発の範囲から離れた事だし、メインディシュにしようか」


 ダリオはコントローラー(起爆装置)の最後のスイッチに手をかけた。


「十番着火ぁぁ!!」


ドドガァァーン



 ダリオがスイッチを押したと同時に倉庫が木っ端微塵に吹き飛んだ。パニックで逃亡すら出来なくなっていた敵側は爆風に包まれた。生存は絶望的だろう。


「これはまた……派手にやったな」


「ヒュー♪毎回思うがスゲー爆発だな」


「うわぁ!?爆風でバランス崩しそう」


「最後の爆発は、デカ過ぎる。見てくれ患者(マクドネル)が怯えているじゃないか」


「………オーバーキル、C-4の量が多すぎる」


 爆発の感想を述べる群狼の面々、俺もこれまでの爆破は予想していなかったの驚きを隠せなかった。


「ダリオ、最後の爆破だけC-4多めに使ったろ?幾つ使った?」


「う~ん今回持ってきたC-4の残りは最後の爆破のために全部使ってやったよ………芸術を爆発させるなら大きい方がいいからね♪」


((((((前から思ってたが、こいつヤバイ))))))


 何ともなしに言うダリオと呆れる俺達あとマクドネルを乗せたヒューイは空を進んだ。


















 あれから一時間、夕日に照らされるアフリカの大地を俺達群狼とおまけを乗せたヒューイはマクドネルを引き渡すためコンゴ上空を飛行していた。



集合場所(ランデブーポイント)までどれくらいだ」


「そうですね……このスピードなら後20分程かと」


 俺の質問に答える仁、マクドネルを救出したからといってこれで依頼達成という訳ではない。マクドネルを依頼人(CIA)に引き渡さなければならないのだ。



「もう少しヘリのスピードを………スマン、無理そうだな」


「えぇ……自分ももう少しスピードを上げたいのですが……これ以上、上げると空中分解しそうで……」



 引き渡し場所に来るのが遅いと難癖つけられて報酬を減らされたくなかった俺はヘリのスピードを上げるように頼もうとしたが直ぐに無理だと悟った。


 壊れて動かない計器、やたらとグラつく機体と墜落しないのが不思議でしょうがない状態だった。





 結局俺達はボロヘリで20分空を飛んだ。




「おっ!健二さん、あれじゃないですか?」


「やっとついたか………ッ!?」


 仁の呼び掛ける方に視線を向けるとヘリが着陸出来る荒れ地に先程の奴等と違って性能の良さそうな車両数台と武装した2~30人の男達がいた。



「あれがCIAですか?随分、重武装ですね」


「ああ、まさか猟犬部隊(ハウンドドッグ)まで出張って来るとは………」


猟犬部隊(ハウンドドッグ)!?」


「久しぶりに見るが……なんとも不気味な奴等だ」


「………ここまで来るなら奴等が救出すればよいものを」


「引き渡した後の護衛が必要なのは解るけどさ……猟犬出すって勘弁してよ」


「アイツらが居るとロクなことにならないからな」


「…………」


「お前ら、一応依頼人なんだからそういうことをあまりいうな、仁とりあえず着陸だ」


「……はい」


 仁の操縦によりヒューイが着陸する。着陸する際かなりの砂煙が巻き上がるが待ち構える男達は微動だにしない、訓練された兵士の証拠だ。




「やぁやぁ!久しぶりだね。群狼(ヴォルフェン)の諸君」

 俺達がヒューイから降りると武装した俺達の中でただひとりアフリカの荒野には不釣り合いなネイビーカラーのビジネススーツに身を包んだ細身の40代ほどの白人男性が声をかける。



「申し訳ない。Mr.スミス、少し遅れてしまいました」


 この男の名前はジョン・スミス、CIAのエージェントであり今回の依頼人である。なお、ジョン・スミスという偽名っぽい名前は勿論偽名で本名は不明だ。



「いやいや、少しくらいは構わんさ目的のモノ(マクドネル)さえ持ってきてくれればね」


 スミスは俺がフリーランス時代からの付き合いの所謂お得意様という存在で俺もそれなりの対応をするが内心コイツのことは信用していない。コイツからもたらされる仕事はどれもこれもダーティーなもので表沙汰になれば国際情勢がガラリと変わるような代物ばかりなのだ。


 だが報酬はそこそこ良いので群狼(ヴォルフェン)を結成してからも付き合いを続けていた。


「おおっ!あなたがMr.マクドネルですね!?(わたくし)が今回の救出作戦の責任者でジョン・スミスといいます。以後お見知りおきを!」


「えっ………あ、ああ、よろしく」


 テンションの高いスミスに、先程救出されたばかりのマクドネルは着いていけてなかった。ちなみにスミスの馴れ馴れしさとテンションの高さはデフォルトである。


「色々話したいこともありますが、ここもまだ安全ではありませんので、ここから先は(わたくし)の優秀な部下達がエスコートいたします。」


 スミスが合図を送ると()()()()()()()()()()が辺りを警戒しながら素早くそして丁寧にマクドネルを車に乗せると護衛車両と共に車を走らせた。恐らくCIAの隠れ家(セーフティハウス)に一時匿った後にアメリカもしくはイギリスに引き渡すのだろう。いつ見ても無駄のない動きである。



 スミスの優秀な部下こと彼らは猟犬部隊(ハウンドドッグ)と呼ばれるCIA傘下の秘匿部隊のひとつである。彼らはCIAの非合法な軍事作戦の実働部隊で誘拐や暗殺といったダーティーな仕事をこなす部隊でスミスが主導して結成した非合法部隊だ。猟犬部隊(ハウンドドッグ)の名も命令ひとつで暗殺や虐殺を平然と実行することから飼い主に忠実な猟犬になぞらえて呼ばれた名である。今回の救出作戦もCIAが引き受けた段階で本来なら彼らが作戦に従事する筈だったが自分等の戦力の消耗を嫌ったスミスが替えのきく俺達に仕事を回したのだ。


「それにしてもアレの引き渡しにわざわざ猟犬1個小隊を派遣するとは、いささか過剰戦力過ぎませんか?」


 マクドネルの引き渡しに猟犬を使うのなら俺達にもう少しサポートをしてほしかったという遠回しの皮肉を込めて質問した。


「いや~、君達を雇ったのは私の独断でね。上層部は私が命令通り猟犬(彼ら)を使っていると思っているのだよ」


 スミスは俺の皮肉に気付かないようで何ともなしに俺の質問に答えた。


「つまり上層部に我々を雇ったことを悟られないように引き渡しだけでも猟犬(彼ら)に向かわせる必要があったと?」


「ハハハ、君は理解が早くて助かるよ猟犬(彼ら)を揃えるのに金と時間を注ぎ込んだからね。こんなところで使い潰す気はないよ」


 説明する手間が省けてスミスは上機嫌だが反対に俺はそんな姑息な手を使うスミスに呆れる。


「独断で色々やるのは構いませんが……今回の報酬はキッチリ払って頂きますよ」


「勿論だとも、マクドネルを確認できたことだし、今そこの部下に300万ドルを君達のスイスの銀行口座に送金させてるところさ」


 当然だと言わんばかりにノートPCを弄る猟犬のメンバーを指差しながらスミスは答えた。どうやらノートPCを操作している猟犬メンバーはネット送金をしているようだ


 しばらくするとノートPCを操作していた猟犬メンバーがスミスに耳打ちをしたあと俺達の会話を邪魔しないように後ろに下がった。


「どうやら送金は完了したようだMr.サワムラ確認するといい」


「解った。……イワン」


 俺は群狼の財布係でもあるイワンに声をかける。


「300万……入金を確認した」


 タブレットPCで口座の状況を確認したイワンから入金完了の報告が上がる。


「Mr.スミス入金を確認しました。疑って申し訳ありません」


 とりあえず俺はスミスに頭を下げて謝罪したこんなことでお得意様を失う訳にはいかないからだ。


「謝罪はいらないよMr.サワムラ、私もそう思われても仕方ないことをしたからね」


 スミスがあまり気にして無さそうだったので内心俺は安堵した。


「さぁ!引き渡しも済んだことだし私もそろそろ失礼するよ。アフリカは暑くてかなわん、早くエアコンの効いた部屋で涼みたいよ」


 スミスはハンカチで汗を拭いながら愚痴をこぼす。今日の最高気温はたしか43℃、訓練された俺達や猟犬はともかくデスクワーク中心スミスには堪える筈だ。


「たしかに傭兵とCIAがこんなところに長居してもメリットはありませんからね。我々も御暇しますよ。……撤収だ!」


俺は仲間に呼び掛けると仲間共々ヒューイに乗り込んだ。


「仁、ヒューイは空港まで持ちそうか?」


 終始ヒューイの中でスタンバってた仁に質問する。ここから10キロのところに空港がありそこには俺達がアフリカまで行くのに使ったプライベートジェットがあるからだ。(仲間と金を出しあって買った代物)勿論これに乗ってアフリカからおさらばするつもりさ。


「曲芸飛行なし&制限速度厳守の通常飛行でしたら大丈夫ですよ」


 仁から頼もしい返事を貰い満足した俺は離陸を促した。仁の取り分には色を付けよう。


「HAHAHA!!やったぜ!300万は俺達のもんだ!」


「これならしばらく仕事しなくて済みそうだね」


 普段からテンションの高いイーサンとダリオはさらにテンションが上がり……


「帰ったら自分用のヘリ買おうかな……ユーゴさんは何に使います?今回の報酬」


「とりあえず新しい手術器具でも買おうかね」


 ヒューイを操縦する仁と敵の頸動脈を切りまくったメスを磨ぐユーゴは報酬の使い道に花を咲かした。


「フム……今回の依頼どうにも……」


「………」


 二組の明るい雰囲気に対して思案顔でパイプを加えるオズボーンと難しい顔でタブレットPCを睨むイワンの空気は重かった。恐らく今回の依頼に違和感を感じているのだろう各いうおれも違和感を感じた一人だったりする。


「……… 不味いな」


 吹かした葉巻の煙を吐きながら思わず独り言を呟いた。普段なら依頼達成後の葉巻は格別なのに今回はかなり不味い……何か嫌な予感がする。だがこの違和感の正体がオズボーンやイワンとおなじく掴めないでいた。


「ケンジ!」


 異変が起きたのは離陸して50メートルほどの高度になってからだった。普段は、淡々としか会話しないイワンが大声で俺を呼んだのだ。


「ど、どうした。イワン?」


 ただならぬイワンの様子に俺に緊張がはしる


「スイスの口座に振り込まれた300万ドルが………消えてる」


「……なん………だと!?」


 予想外の出来事に報酬のことで受かれていた他のメンバーにも緊張がはしった。


「な、何かの間違いじゃねーのか?」


 あまりの出来事に手違いだと思いたかったイーサンが声をかけた時……


『いいや、間違いではないよ群狼(ヴォルフェン)の諸君』


 突然インカムから聞こえてくる声、ヘリの中を見回してもインカムの声に驚いているメンバーしかおらずインカムの声の主はいないだってその声は――


「スミス!?」


 そう先程まで俺らといたジョン・スミスその人だった。


『Mr.スミスこれはどういうことですか?』


 感情的になりそうなのを必死に抑えて冷静に俺はインカム越しのスミスに返答を求めた。


『答えは簡単さ、これから君達にはあの金は必要なくなるからね。返して貰ったのさ』


『……一体貴方は何を言っている?』


 訳の解らんスミスの発言に戸惑っていると


「ちょ!?あの野郎マジかよ!」


 地上を除きこんでいたダリオが悲鳴に近い驚愕の声をあげる。釣られて俺もヒューイの――本来ならスライドドアのあった筈の部分――ポッカリ開いた入口から覗き見をして戦慄した。



 地上にはいまだにスミスとスミスの護衛として残った猟犬部隊(ハウンドドッグ)が10人ほどおりヒューイこと我々を見つめていた。そして猟犬の一人が大きな筒状の濃緑色の物体を肩に担いだのだ。


「スティンガー!!」


 FIM-92スティンガー、歩兵でもヘリや輸送機を撃墜出来る歩兵携帯型地対空ミサイルだ。戦場でヘリに乗っている時に嫌と言うほど見たから間違いない。


『スミス!貴様、謀ったな!』


 スティンガーを向けてきたスミスにオズボーンが激怒した。


『すまないね。君達ほど優秀な傭兵は今まで見たことないよ………故に私と上層部は君達を国家安全上の脅威と認識した。』


『脅威だ?散々我々を雇ったのは貴様らだろうが!』


 流石の俺も敬語をやめて声を荒げる。勿論、感情的になったのではなくスミスとの話を長引かせてスティンガーからヒューイを遠ざける作戦だ。


『ああ、たしかに君達を雇い様々な作戦に従事させたのは私だ、しかし普通の傭兵ならその作戦のどれかで戦死しているのが常なんだ。だが、君達はどうだ?どの作戦においても一人の欠員を出すことなく任務を遂行している。それは素晴らしいことであり異常なことなのだよMr.サワムラ』


『スミス貴様は、金さえ払えばそんな傭兵をいくらでも使えるのにここで殺すというのか?』

時間稼ぎのために俺はさらに話を長引かせる。


『問題はそこなのだよMr.サワムラ、君達傭兵は金さえ払えば誰にでも雇われる。例えそれが()()()()()でもね。それに君達は知り過ぎた………。これまで君達にやらせていた軍事作戦が外部に漏れたら困るからね。』


『俺達は顧客の情報を売ったりはしない』


『今時、顧客の情報を流さない企業なんとないさ……さて、そろそろお別れだ。これ以上君の時間稼ぎに付き合うっていても仕方ないからね』


『チッ………』

時間稼ぎが気付かれていた。CIAのエージェントは伊達じゃないということか、


「仁!回避しろ!!」


『無駄だよ』


 スミスの発言と同時に地上のスティンガーからミサイルが発射された。


 飛行するヘリや輸送機を打ち落とすためスティンガーには赤外線・紫外線シーカーと呼ばれる誘導方式を採用している。簡単に言えばヘリや輸送機はスティンガーミサイルの燃料がきれない限り永遠と追われるのである。


 黒井 仁は優秀なヘリパイロットだスティンガーの1つや2つくらい余裕で避けれるだろう……正常なヘリであれば………




 端的に言えば仁は、スティンガーミサイルが発射された瞬間回避行動に出たが回避という無茶な運動をしたせいでヒューイがバランスを崩してクルクルとプロペラだけでなく本体までも回りだしたのだ。そんな時にスティンガーミサイルが接近、ヒューイ本体には当たらなかったがヒューイのテールローターにジャストミートして結果……
















 俺が空を飛んだ。
















 勿論比喩だよ!そう都合よくつばさが生えて脱出!………なんてラノベみたいな展開あるわけない、それでも俺は飛んだんだ。





 墜落という名の飛行だ(白目)


 ここで冒頭に戻るという訳よ。マヌケな俺はテールローターにミサイルが当たって爆発した時、衝撃でヒューイから投げ出されたのだ。なんとも情けないザマだヘリごとの墜落ならまだ助かる確率はあったというのにこれでは確実に即死だ。



 だが墜ちてみると不思議なもので時間がゆっくりと感じる。まるで世界自体がスローになっているみたいだ。


 ふとヒューイの方を見ると俺の近くにいたイーサンが必死にヒューイから投げ出された俺を捕まえようと手を伸ばしている。あの馬鹿自分の乗ってるヘリだって墜落してると言うのに………


 地上を見れば猟犬部隊(ハウンドドッグ)と不敵に笑うスミスの姿が見えた。まさかあんなスパイ野郎に騙されるなんて情けない話だ。


 死ぬことに恐れがないと言えば嘘になるがいつ死んでもいいという覚悟はしていた。こんな商売やってるようじゃあ長生き出来ないと思ったからだ。流石に36で死ぬのは想定外だったが……


 おれ自身に思い残すことはない好きで傭兵やって死んだんだ思い残す訳がない思い残しがあったら一緒に戦って死んだ戦友や殺した敵に失礼だ。

でも後悔は少しある。群狼(ヴォルフェン)のメンバーだ今回俺がこんな依頼を引き受けたせいで死ぬハメになったからだ。スミスのことだ今回依頼を引き受けなかったら別の手段で抹殺しにきたかもしれないがそれでも罪悪感が俺のなかに駆け巡る。






おっと、もう時間のようだ。俺は迫りくる大地を見て静かに目を瞑る。










 願わくは、輪廻転生なるものがあったらまたあいつらと馬鹿騒ぎが出来ますように………っても俺達みたいなロクデナシは地獄行きだろうな、ハハハ……





そして俺、澤村 健二は人類のルーツたるアフリカで……








グシャアァァァ







 この世を去った……………

































































 筈だったんだよな~…………






これでプロローグは終了です。

次回からは本編に入りますのでお楽しみください。

誤字脱字の報告お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ