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傭兵である俺がエロゲーの世界に転生した件について  作者: エージェントK
第2章 中学生編
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第14話 族狩り

今回も暴走族相手に主人公が暴れます。



「よっこいしょ、どっこいしょ、よっこいしょ、どっこいしょ」


 明け方、じいさんばあさんが起き始める時間帯、俺は一台のバイクを牽きながら村を歩いていた。


「中型とは言えキツイな……」


 このバイクをある場所に運ぶ為にこうして歩いてきたがいくら体を鍛えたとは言えめんどくさい。しかしこのバイクを処分するためにも俺は向かう必要があるのだ。


「やっと着いた………」


 俺が向かう目的地にようやく着いた。その名も和泉モータース、ここは村唯一の自動車整備店であり中古自動車販売店でもある。この店は10年前にこの村に住み着いた店主の和泉 鉄雄がオープンした店で当初は余所者が営業する店ということで村人は寄り付かなかったのだが和泉の人徳と格安で村人の車両を修理することから今では村での人気は高い、最近では和泉の整備技術に目を着けた全国の走り屋が自身のマシンのカスタム(orチューニング)を依頼しに村にやって来ており村の外でも人気があるのだ。


「くあぁ〜〜ッ、ん?なんだ誰かと思えば悪原の坊主じゃねぇか、こんな朝っぱらからどうした?」


 店のシャッターが開き中から欠伸をする作業服の男が現れた。

歳は40代後半、体格は良く所謂ガテンタイプで肌は浅黒い、顔には無精髭を生やしており厳つさがある。この男こそ、この和泉モータースの社長(社員本人だけだが)和泉 鉄雄である。


「おはようございます。社長、今日はバイクを売りに来ました」


「坊主がバイクを?……随分損傷がひでぇじゃねぇか、まあ内装は大丈夫ぽいっからそれなりの値段で買ってやるよ。とりあえず、自動車検査証・自賠責保険証・身分証……あとオメーの親御さんの同意書見せな」


 未成年のバイク買い取りの手順を守っているが和泉さんやあんた俺が売りに出そうとしている中型バイクの免許持てる年齢じゃねーってこと知ってんだろうに……和泉のおっさん俺が中学生じゃなくて高校生だと思ってるだろ?。


「いえ、身分証以外持ってないです」


「オイオイ忘れたとは言わせねえぞ、お前さんうちの店で働いてたんだから買い取りに必要な書類のこと知ってるだろ?あれが無いと買い取ることが出来ないんだ今からでも遅くねえから家戻って取りに行けよ」


 やれやれと言いたげな和泉のおっさん、そんな顔しても俺は誤魔化せないぞ。


「何を言っているんです社長?私は最初から正規の遮断で売る気はありませんよ」


「……!?」


 おっ、和泉のおっさんの目が見開かれているな、見開かれた目を見るのは職場体験の時依頼だ。


「パーツバラしてその筋の業者に売ってしまえば、正規の買い取り品で無かろうが盗品だろうが気付かれませんよね?」


「……坊主、何の話をしているんだ?」


 しらばっくれるつもりだろうが今の間は良くないなぁ〜そこいらの一般ピーポーは騙せても俺のような人間は騙せないぞ。


「しらばっくれないでくださいよ社長、和泉モータース(ここ)がそういう訳アリ商品で生計を経てていることくらい知っていますよ」


「坊主………誰から聞いた?」


 和泉のおっさんは鋭い目付きで俺を見る。まあ、学生に自分の裏の仕事がバレちゃあそうなるわな。


「誰からも聞いてませんよ。社長、私が職場体験で1週間もここに居たことをお忘れですか?社長が外国人に売り渡したパーツが正規品でないことくらいすぐにわかりますよ」


「………」


 黙ってしまった。まあ確信突かれたらそうなるか、村人の車両なら格安で修理する気の良い整備工の社長というのは和泉の表の仕事に過ぎない、裏の仕事は非合法に入手した車やバイクのパーツを海外に横流しする業者なのだ。和泉は自動車窃盗団から車両を購入し、その車両をパーツ別に分解、客を装って来る外国人犯罪組織に売り渡しその利鞘で儲けているつまりブローカーだ。実にイイ商売だ。パーツ別にバラしてパーツ別に売ってしまえば警察でも追跡は不可能だし外国人犯罪組織はその買い取った車を自国に持って帰って売るため発見されないのだ(日本車というだけで調子の悪い中古車でも発展途上国ならかなりの額で売れる)。

直接盗まないため逮捕というリスクは限りなく低く美味しい商売だ。しかし欲を張ると危ない橋を渡って直接盗む自動車窃盗団と強力な組織力を持つ外国人組織を敵に回すが和泉の様子を見る限り上手く両者と良好な関係を築いているようだ。


「はぁ〜……まさかオメェみたいなガキにバレるとは思わなかったよ。降参!降参!煮るなり焼くなりサツにチクるなり好きにしてくれ」


 和泉のおっさんはため息を吐くと両手を広げて降参した。どうやら観念したらしい。


「意外ですね。口封じに襲われてもおかしくない状況ですのに」


 正直、和泉のおっさんの裏の仕事を暴いたくらいで、はいそうですかと、このヤバいバイクを買ってくれるとは思ってなかったどちらかと言えば証拠隠滅で殺されるくらいは覚悟していたんだが……。


「ガハハ!覚悟決めて来てもらって悪いんだが俺は女子供を殺すことだけはしねーて決めてんだよ」


 女子供は殺さないか、前世の仲間の英国紳士を思い出すな。


「……例えそれで自分が逮捕されてもですか?」


「まぁな、盗品売り捌いておまんま食ってるどうしようもねえヤローだけどよ。ガキ殺してまでブタ箱行きから逃れようとするほど墜ちちゃいねぇつもりなんでよ」


 へぇ、嘘ではなさそうだ。こういう自分の決めたルールで破滅を迎えようとしてもそのルールを守る姿勢は好感が持てる。仕事柄、犯罪者と接する機会が前世であった。数多の犯罪者と会ってわかったことだが自分のルールを守って生きている奴の方が信用出来るということだった。法を破って無法者になったということは法からも守って貰えないということだ。そんな中で好き勝手やったら潰されるのがオチだ。しかし自身にルールを定めること身を律することでそれらを無くせばリスクは減る、まあそのルールによって身を滅ぼす危険もあるが……だがルールを決めずに好き勝手やってる奴に比べたら他人からは信用される。和泉のおっさんも自身のルールを守って行動する人間だ信用出来る。


「なるほど……社長のことがよくわかりました。煮も焼きもチクりもしないのでご安心を………私はただこちらのバイクを売りに来ただけですので」


 そう言って再度バイクを見せる。


「このバイクよくみたらあの堕悪苦寝棲(クソガキ共)のバイクじゃねーかよ………そういえば昨日の夜いやもう日付変わってたから今日か、刈穂のバーで飲んでたら奴等仲間がヤられたって騒いでたが……まさか坊主が?」


 まさか数時間足らずで和泉のにまで知られてるとは思わなかった。まあ別にいいが……


「ええご想像の通りです」


 和泉の言う通り夜中に俺はバイクに乗って堕悪苦寝棲のメンバーを襲った。一人仕止めたが残念ながらもう一人には逃げられてしまったがまあ、想定の範囲内だ。


「マジかよ……奴等に派手に喧嘩売ったな坊主、奴等警察には通報してねぇようだが仲間ヤられたから血眼で探すぞ」


 警察に通報しないのは想定済みだ。警察に取り締まられる側である奴等が警察に通報なんで出来るわけがないからだ。


「覚悟の上です」


 そう言いながら1週間前のことを思い出す。













「お前が代わりにやるってどういうことだよ!」


 1週間前、学と一彦が入院した病院でのことだ。休憩室に雄介の声が響く


「坂上君ここは病院です。もう少し声を押さえてください」


 あの日、雄介の無茶な復讐を止める為により効率の良い復讐方法があると雄介に囁いた。薫には聞かれたくなかったのでこうして病院の休憩室に来たのだ。


「お前俺に無茶するなって言っている癖にテメェは無茶するってどういう了見だよ!?」


 ある程度声を押さえてくれたがその目には批難の色が見え隠れしていた。


「簡単な話です。私の方がこういう荒事には適しているというだけのことです。逆に聞きますが坂上君は一人であいつらを殲滅出来る自信はありますか?」


「………」


 口を閉ざす雄介、冷静になって見て自分では不可能だと自覚したのだろう。熱くなり易いが冷静であれば落ち着いて考えられる所は彼の長所であり短所である。


「私はありますよ。ただし条件がありますが」


「条件?」


「奴等の情報を収集してくれる人材ですよ。いくら私でも何処に居るのかどんな特徴があるかわからない相手に手は出せませんから」


 秋穂を荒らす奴等だが生活の拠点は刈穂だ。俺は秋穂に来て以来秋穂に情報網を作ったが(と言っても近所の住民と仲良くなり情報を得やすくしただけだが)刈穂にはあまり行かないので刈穂の情報網が無いのだ。刈穂のどこに住んでいるのかわからない以上奴等に手は出せない。出すためには協力者が必要だ刈穂にも顔が効く人物の協力が……。


「なら俺がやるよ!」


 雄介は協力者として最適だ。刈穂にもよく行くし向こうの不良にも顔が効く、刈穂の不良だって堕悪苦寝棲には煮え湯を飲まされているから情報をすんなり教えてくれるに違いない。


「良いのですか?奴等の情報を集めるということは奴等からも坂上君貴方が情報を集めていることを知られることになりますよ?」


 情報収集も安全ではない情報を集めれば集めるほど奴等に発見されるリスクが高まるからだ。


「構わねぇよ。お前が命張ってんだ、俺が命張らないでどうするよ?」


 堂々としたその発言に俺は笑みを漏らす。全く学も一彦も彼のような男の舎弟になれて幸せもんだよな。


「それでは情報の収集は坂上く「待ってくれ!」……なんです?」


「情報収集をやってやるが条件がある」


 ほう雄介め、駆け引きが上手くなったじゃねーか、良いだろうその条件聞こうじゃないか。


「条件ですか……それはなんです?」


「ああ、それは――――――」













「おい坊主、聞きてぇことがあるがいいか?」


「ッ!はいなんでしょう?」


 おっと、過去の話を思い出してる場合じゃなかったな。


「あのクソガキ達の話だとバイクの持ち主たしか……劾だったか?そいつを黒ずくめのバイク野郎……つまりオメーがいなほ道で襲ったらしいがバイクと劾をどうやって運んだ?」


 その質問は最もだ襲撃した場所と秋穂まで結構距離があるそんな中でバイクに乗った俺では劾とそのバイクを運ぶのは不可能だ。


「佐々木のおじいさん知ってますよね?」


 俺はポケットから出した電子タバコをくわえながら和泉に聞く


「あ?ああ、あのクソガキ共のせいで事故っちまったじいさんだろ?ありゃひでぇ話だよ」


「佐々木さん、事故の時乗ってた軽トラ以外に4トントラックを持ってましてね……拝借しました」


 水蒸気を吹かしながら当たり前のように答えた俺に驚く和泉


「オイオイ……まさかそのトラックで運んだってのか?鍵はどうした?」


「佐々木さんて不用心でしてね。いつもトラックはロックしないで鍵はダッシュボードの中なんですよ」


 佐々木のじいさんの家には回覧板を渡したり農業の手伝いの為に何度も行ったことがあるのでじいさんの癖はよく知っている。トラックの鍵の件もそうだ。だから俺は前もって雄介から得た情報から学と一彦をリンチしたメンバーの一人である劾が仲間と共に毎晩いなほ道でレースしていることを知ると佐々木のじいさんのトラックを拝借し、襲撃地点に待機させ、劾が秋穂から刈穂に向かってレースを始めた時に父さんのフェックスで追跡、佐々木のじいさんのトラックを待機させた場所で劾を仕止めたという寸法だ。後は劾とそのバイクと父さんのフェックスをトラックに積んで帰るだけである。トラックの持ち主である佐々木のじいさんは今だ病院でその奥さんも病院でじいさんの面倒を見ている為佐々木宅は不在、故にこっそり借りて返しても誰にも気付かれないのだ。


「本当にお前さんには呆れるわ……で、劾って野郎はどうした?」


「………」


「なるほどな……せいぜい見つからないようにしとけよ」


「ご心配なく」


 劾の死体は埋めた。秋穂にある土地の所有権が曖昧な山にだ、彼処なら誰も近づけないので誰も手が出せない筈だ。


「でも坊主があのクソガキ共に喧嘩ふっかけてくれてせいせいしたぜ。奴等がきたせいで商売上がったりだったんだ。お前さん、まだあのクソガキ共と戦争する気か?する気なら奴等のバイクを今回みたいに持ってくりゃバンバン買い取るからよ。頼むぜ」


 元からそのつもりだ。今回は仲間の仇討ちプラス臨時収入を得るために俺は行動している。盗賊みたいであることは承知している。だが今後のことを考えると金が必要だ。そこで俺は金があるところから奪ってしまおうと考えた訳だ。勿論仇討ちもちゃんとするが金もキッチリ奪う。


「わかりました。ジャンジャン持ってきますよ。今回は傷だらけになりましたが、今度は傷ひとつなく持ってきますよ」


 そう言って俺は微笑んだのである。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 劾と誠が襲撃されてから3日経過した。堕悪苦寝棲のヘッド、林 孝は劾の捜索と襲撃犯の捕縛を命じたが3日経ったてなお、堕悪苦寝棲はなんの手掛かりも掴んでいなかった。


 深夜、寝静まった刈穂のとある自販機前で三人の若者がバイクを停めてたむろしていた。


「この3日間バイクで走り回ったけどなんも手掛かりもねーよ。これ絶対逃げてるって!」


 そう力説する男の名は、『瀬田 相太(せた そうた)』堕悪苦寝棲のメンバーだ。


「だな。けどよそれじゃうちのヘッドが納得しねーべ?これ襲った奴捕まえないと永遠に探すハメになるぞ」


 そう言ってため息を吐いたのは『原田 誠実(はらだ せいじ)』ひったくりを捕まることなく成功させていることから狙った獲物は逃がさない『ハンティングのセイジ』と呼ばれている。


「逃げるだぁ?勝ち逃げとは気に入らねえ……劾じゃなくて俺があの場にいたらコイツで返り討ちにしたのによぉ」


 自信満々に言う男の名は、大野 ダイ(おおの ダイ)血の気が多くすぐに暴力を振るうことから『バーサークのダイ』と呼ばれている。彼等三人は状況的に死んだと思われる劾とその下手人である黒ずくめのバイク乗りの捜索に嫌気が差してこうしてサボっていたのだ。


「嫌になっちゃうよ、探すのにバイク走らせてるけどそれだってガソリン代バカにならねーってのによ」


 相太が愚痴る実際黒ずくめを探す為に奴が現れたバイクでいなほ道を重点的に三日間走りまわったせいで彼等の懐は寂しくなっていた。


「こっちもガソリン代で金がヤベー、またジジババからひったくってるか?」


 そう言ってひったくるジェスチャーをする誠実、彼はひったくりで月数十万は稼いでいる。その金の一部を堕悪苦寝棲に献上しているので組織内部ではそれなりに力がある。


「バカ野郎!お前この前ひったくったばあさんケガさせてヘッドからしばらくはひったくりは控えろと言われてんだろうが」


 ダイはひったくりを再開させようとする誠実を牽制した。誠実は秋穂村でひったくりをした時とある老婆を転倒させて足の骨を折る大ケガを負わせた。警察の締め付けが厳しくなると警戒したヘッドの孝は誠実のひったくりを禁止た。


「でもよぉ!あれは俺悪くねぇだろ!!あのババアが勝手に転んだのが悪いんだよ!そういうダイだって派手に暴れてんじゃねぇかよ」


 自分の非を認めない誠実は先日ナンパしてた時に邪魔した中学生を鉄パイプで殴ったダイを批難する。


「うるせぇ!あの中坊が俺の顔面殴ったのが悪いんだよ、正当防衛だ正当防衛!」


 両者共に自分の悪事を正当化して被害者のせいにするその腐った精根は誠と劾と同様であり、どうしようもない奴等である。


「はいはい、仲間割れは後にして今は黒ずくめのことについて話そうぜ!」


 両者を治めた相太の意見は最もなので黙って考える二人、


「あ、そうだ!劾が襲われる前に劾が普段どんな所走ってるか、聞きまくってる中坊が入るって聞いたぞ」


「あ、それ俺も聞いたな、なんでも中坊リンチしたメンバーのこと聞いて回ってるらしいぞ」


「え!マジかよ……そいつ怪しくね?名前は?」


「たしか……坂上とかって……「坂上だぁ!?」お、おうどうした?ダイ」


 相太と誠実の話に大声を出して遮るダイ


「たしかそいつ俺がボコったガキの兄貴分だよ……チクショウ、子分ヤられたからって仕返しってか?」


「でもそいつ中坊だろ?誠の話だとバイク乗ってボウガンぶっぱなすヤベー奴だって聞いたんだが……」


「そいつじゃなくてもいーじゃねーかそいつがやったことにしてヘッドに差し出してボコればもう探す必要無くなるぜ」


 誠実の懸念に恐ろしい意見を返す相太


「だな、これ以上無駄に走り回るのも飽きたしよ、そいつボコってさっさと終わらそうや!」


 そう言って最近持ち歩き始めたら鉄パイプで素振りをするダイ


「そうだなガソリン代もねえからそいつが黒ずくめってことでいいな!」


 懸念していた誠実すらその意見に賛同する。そんな中自販機の近くをトラックが通り過ぎる。いつもこの辺でたむろしている三人からしたらよくあることなので気にも止めなかった。この時一人でもトラックの運転手の姿を見ていれば彼等の運命は変わってたかもしれない……。


「よし、ならさっさとその坂上って奴をとっちめに行こu――「『大野 ダイ』『原田 誠実』だな?」あ?誰だ?俺らを呼び捨てにしてんのは?」


 後ろから呼び捨てで呼ばれたので不機嫌気味に振り替える三人は黒のジーンズ、黒の革ジャン、黒いフルフェイスメットを被った黒ずくめの男を目にする。


「やぁ♪」


 おチャラけた感じで片手を上げる黒ずくめを見て、最初は呆然としていた三人だったが自分たちがバカにされていると知るとその表情が怒りに染まる。


「テメェか!?劾をぶち殺した野郎は!?」


 立ち直りが早かった誠実が黒ずくめに向かって啖呵を切る。しかし黒ずくめは『果て、なんのことやら?」と言わんばかりに肩を竦めるばかりで何も言わない。それが誠実をより一層怒らせる原因になった。


「テメェふざけんじゃね!メット取って答えやが―――……え?」


 黒ずくめをとっちめようと前に出た誠実だったが自分の体に走った為に動きを止めてしまう。


(え?なんだこれ?視覚が狭まったような……)


 そう今誠実は視覚の半分が狭まったいや正確に言うなら左目の視覚が無くなっている感覚に陥っていた。


(左目が……熱い)


 左の視覚がない代わりに何故か左目辺りが熱いそして左頬を何かが垂れる感覚がある。誠実は頬に触れてそれを拭う。触った感触は少し粘り気があり生暖かい、訳がわからずそれを拭った手を見れば………


(血!?)


 手には赤い液体……血がついていた。つまり頬から垂れていたのは血ということになる。


「おい、急に黙ってどうしたよ?誠じi……ヒィ!」


「なっ!お前……左目!?」


 さっきまでけんかごしだった誠実がいきなり黙りこんでしまったので不審に思った背後にいた二人が声を掛けようと誠実の顔を見たら悲鳴を上げる。


(な、俺どうなっているんだよ!?)


 良く見れば目の前に入る愚痴ずくめはクロスボウを構えていたボルトが装填されていないので既に射出されたようだ……嫌な予感がした誠実は左頬より上つまり左目を手で触れる。


「へ……」


 しかし左目には棒状の細い突起物が左目から生えているいや刺さっていた。


「俺の目がぁああああ!」


 それが黒ずくめが放ったボルトだと理解した瞬間激痛が誠実を襲う。


 激痛のあまり地面を転げ回る誠実


「て、テメェ誠実になんてことを!!」


 そんな誠実を見て我に返った相太が隠し持っていたバタフライナイフを取り出し黒ずくめに襲い掛かった。彼の予想としてはボウガンは装填に時間が掛かる為、今襲えば装填出来ていない黒ずくめを仕止められると考えたのだ。


(これで仕止められれば俺の手柄だ!)


 そんな安易な考えで黒ずくめにナイフを突き出したまま、襲い掛かった相太だが世の中そんなに甘くはない。


「ナイフの使い方がなっていないな」


 そう呟きながら背中に差した木刀を引き抜き相太のナイフを持った右手を叩く黒ずくめ、所謂剣道で言う小手だ。


「がぁっ!」


 痛さのあまりナイフを落として右手を押さえる相太、そんな彼を黒ずくめは待ちはしない。


「ぐふぇ!」


 黒ずくめは痛みに歪める相太の顔に木刀を打ち付けて戦闘不能にする。


「おっとぉ!俺の存在を忘れてもらっちゃ困るぜ!黒ずくめさんよ!」


 相太に掛かりきっていた黒ずくめに鉄パイプを持ったダイが襲い掛かる。


(計画通り、生け贄になってくれてありがとよ相太)


 ダイは黒ずくめがクロスボウ以外の武器を持っていると睨み、わざと手柄を欲しがっている相太を先行させて出方を伺ったのだ。案の定、黒ずくめはクロスボウ以外の武器つまり木刀で相太をのした。ダイは相太を倒して黒ずくめは油断していると予想し不意討ち気味に襲い掛かったのだ。


「アホか、それで不意討ちしたつもりか?」


 しかし不意討ちは簡単に破られた。迫り来るダイに対して黒ずくめはクロスボウを投げ込んだのだ。


「ナァ!?」


 まさか弾切れとは言え武器を投げてくるとは思わなかったダイは面喰らう。だがダイも喧嘩なれしているだけはあり難なくクロスボウを避けるしかし……


「うおっ!?」


「ほぅ、これを防ぐとは少しは骨があるな」


 クロスボウに気を取られたダイの頭部に黒ずくめの木刀が迫るあまりのことにダイは慌てながらそれを自身の鉄パイプで防ぐ。


「なかなかやるじゃねぇか!黒ずくめ……いや坂上!」


 一度黒ずくめから距離を取ったダイが鉄パイプを肩に掛けながら不敵に笑う。


「俺は坂上じゃないぞ?」


 対して黒ずくめは相も変わらずとぼけている。


「とぼけんなよ坂上!もうお前の正体は解ってんだよ。自分の子分がヤられたからって俺達に復讐しに来たんだろ?なぁ!?」


 そう言いながらダイは鉄パイプを振るうが全て黒ずくめに防がれる。


「………」


「黙りかよ!まあ、お前が復讐しに来た所で俺が返り討ちにしてやんよ」


 再度鉄パイプを振るうがそれも防がれた。


「そうだこの鉄パイプお前の子分ボコった時のなんだよ、良く見て見ろよ、まだ血がついてるだろ?お前もこの子分をボコった鉄パイプでボコッてやるから感謝しやがれ!」


 自分の攻撃を全て防ぐ黒ずくめに対してダイは揺さぶりを掛けたこの揺さぶりで黒ずくめが心を乱して隙が出来るように仕向けたのだ。しかし……


「証拠品の凶器をまだ持っているとは……お前三流だな」


「あぁん?今なんった?」


 黒ずくめにダイの稚拙な揺さぶりは通用しなかった処か逆に黒ずくめが揺さぶりを掛ける始末である。


「聞こえなかったのか三流と言ったんだよ。わかったかな?三流君」


「殺す!」


 そしてその揺さぶりにダイは簡単に乗ってしまった。彼は怒り狂いながら鉄パイプを振り回す。


「単純バカめ」


 黒ずくめは振り回される鉄パイプに臆することなく木刀で突きを放つ狙うはダイの首ただひとつ


「ゴフゥ!」


 突きを首……正確には喉に入れられたダイは首を押さえて転げ回る。


「――――ッ!――――!?――――!!」


 首の痛さに叫ぼうとするが声が出ないダイそれどころか呼吸すら出来ていないらしく苦しそうだ。


「無駄だ喉を潰した。お前は一声もいや一呼吸も出来ずに窒息死する」


 黒ずくめの言う通りダイは顔を真っ赤にして必死に呼吸しようとしているのだが喉が潰れて出来ていなかった。


「―――!――――ッ………」


 そして数分後にはピクリとも動かなくなってしまった。


「死んだか……呆気ないものだn「目がぁああああ!目がぁああああ!」おっと、彼のことを忘れていた」


 黒ずくめは死んだダイを放置して左目を押さえて転げ回る誠実の元に向かう。


「俺の目……俺の目がぁ………返せ!返してくれ!!」


「うるさいよ」


 最初はしばらく誠実の苦しむ姿を見ているつもりだった黒ずくめだがあまりにも騒がしかったので誠実の頭いや左目から突き出しているボルトを力一杯踏みつけた。


「あがぁ―――」


 踏みつけられた誠実は最初は痙攣していたが動かなくなった。どうやら踏みつけられてボルトがさらに奥……つまり脳まで突き刺さったが為に死んだようだ。


「ダイと誠実それと劾は死んだ……後はヘッドとだけだな………んでお前はどこに逃げる気だ。瀬田 相太」


「ヒッ!」


 黒ずくめはひとりコソコソと逃げようとする相太を呼び止めた。


「仲間が二人死んだってのに逃げるとはお前も冷たい奴だな」


 黒ずくめは相太の頭を殴打したが致命傷ではなかったらしく相太は頭から血を流してはいるがまだ這って逃げようとする元気はあった。


「お、俺は関係ないぞ!」


 黒ずくめに気づかれた相太は叫んだ。


「関係ない?なんの話だ?」


「お、お前あの中坊の復讐の為にこんなことをやったんだろ!?なら俺は関係ないからな!あのリンチは劾とそこでくたばってる二人とヘッドが勝手にやったんであって俺は加わってないからな!だ、だからさ……頼む!俺は見逃してくれ!!」


 そう言いながら土下座をする相太、不様な姿だが助かる為なら手段は選ばないということだろう。


「誰が復讐の為()()にこんなことをしていると言った?」


「え……………」


 黒ずくめの行動理由が復讐だと思っていた相太は呆けた。


「俺の家ってさお前らの通り道なんだわ」


「い、一体何の話を……」


 そしてとりとめのない話をはじめる黒ずくめに戸惑う。


「俺んちの隣に住んでる俺の彼女(仮)が寝不足なんだわ、後最近は俺んちの可愛い可愛いメイドさんもアクビを噛み殺すようになってな……それってお前らのせいだよな?もし彼女達が寝不足から体調崩したらどう責任取ってくれるんだ?なぁ?」


 黒ずくめから殺気が漏れ相太はそれに怯えた。


「わ、悪かったそれならお、俺がヘッドに頼んでもうあの村は走らせないようn「もういい」――なぁ!?」


「そんなことよりも簡単なやり方があるぞ、俺がお前らを皆殺しにすればいいわざわざお前なんかの口添えなんぞ不要だ」


「ま、マジかよ、勘弁してくれ!なぁ?なぁ!!」


 そんなことをいいながら相太が落としたバタフライナイフを拾い上げる黒ずくめ、それを見て相太はそれを何に使うか理解したようで這って逃げ始めた。


「そろそろ警察も来るだろうから手早く済まそうか」


「や、やめろ!やめろって、なぁ!?や、やめてくださいお願いします!!や、やめ、うわぁあああ」



 数十分後――――


 叫び声がするという通報を受けて警察が駆け付けるとそこには堕悪苦寝棲の構成員三人の遺体が発見された。クロスボウの矢が左目から頭部にかけて貫通した遺体、喉を潰され呼吸困難になって窒息死した遺体、首の頸動脈をバタフライナイフで切り裂かれた遺体と現場は凄惨な光景が広がっていた。警察は彼らのバイクがないことから彼らの組織と対立する別の暴走族が複数人で彼らを殺害し、見せしめと略奪目的で彼らのバイクを奪って行ったとみて捜査を進めている。





















 

 








次回ついに房総との決着です

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