表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵である俺がエロゲーの世界に転生した件について  作者: エージェントK
第2章 中学生編
14/34

第12話 堕悪苦寝棲

さて皆さん問題です!

今回のサブタイ読める人いますか?

ヒントは夜露死苦よろしくばりの当て字です。

答えは本編をご覧ください!

 俺、悪原 征男は会社を経営する父とバイオリニストの母のもとで何不自由なく育ち、幼馴染で恋人の1人である理子と一緒に暮らしている。我が家の隣の家には男勝りな同級生でもう1人の恋人の薫が隣人として住んでいる。学校に行けば頼りになる親友、雄介とその愉快な仲間それとクラスのマドンナである三人目の恋人である留美が出迎えてくれる。このように順風満帆で毎日を過ごしている俺だが最近ちょっとした問題が発生した。





 それは――――






 パラリラパラリラパラリラ♪






「暴走族か………」


 最近秋穂村に現れた暴走族である。彼らは基本夜中になると隣町の刈穂からやって来て村の中を騒音を響かせながら走るのだ。


「にしても今時、特攻服て……古風過ぎるだろ」


 奴等は今時珍しい白い特攻服身に纏いバイクを走らせていた。


「原作には登場していなかったが、まあいい……俺の眠りを妨げたのだ覚悟しとけよ」













「ふわぁぁ〜〜」


「寝不足ですか?」


 通学路を歩いている途中で俺の右手を握っている薫が豪快にアクビをした。


「夜中に来るバイクの音がうっさくて眠れないよ……」


「バイクか……最近よく見かけるよね、暴走族なのかな?」


 俺の左手を握っている留美が疑問を投げ掛ける。


「かもしれませんね。派手な見た目のバイクばかりですし」


 俺の背後に控える理子が留美の考えを肯定する。


 三人と恋人になってから数日が過ぎ、俺は理子と薫と留美と一緒に登校してる。薫と留美が『付き合っているんだから手を繋ぐのは当然だよね♪』と言って通学中は俺の両手を二人で占拠している(なお、帰りは理子が俺の隣を独占する模様)。まさかリアルに両手に花をする日が来ようとは思わなんだ。


「それにしても彼らは何のためこの村に来たんでしょう?」


 言っちゃ悪いがこの村に奴等が喜びそうな物は何もない強いて言うなら刈穂と秋穂を繋ぐ県道である『いなほ道』がバイクでかっ飛ばすのに適しているくらいだ、それだってわざわざ村の中まで走らなくても良いわけなので疑問が残るが……。


「なんか、雄介から聞いた話だと他の暴走族と争って負けたチームがこっちに流れて来たらしいよ」


「ほう、縄張り争いですか?」


「う〜ん……そこまで深く聞いてないからわかんないやっ!後で雄介に聞いたら」


 そういえば雄介は昭和テイストであるが秋穂中の番長だったな。彼から話を聞けば奴等がこの村に来る理由が解るかもしれないな。











「よぉ、来たか……」


「すみませんお待たせしました」


昼休み俺は雄介に会うために学校の屋上にやって来た。


「別にかまわねぇよ。それより……話ってなんだ?」


 雄介は基本昼休みは屋上で飯を食う(秋穂中は弁当持参or購買購入なのだ)。理由は食った後に誰にも邪魔されずバットの素振りが出来るからだそうだ。


「最近この村に現れる暴走族について何か知らないかと思いまして……」


「ああ、堕悪苦寝棲(ダークネス)のことか」


 雄介は苦虫を噛み潰したような顔をしながら答えた。


「だ、堕悪苦寝棲ですか……」


 なんじゃその昭和の暴走族が使ってそうな当て字は、目の前にいる雄介といいその堕悪苦寝棲といいこの辺に住んでるとレトロに目覚めるのか?


「もとは、東北と言っても関東よりの暴走族の集団だったんだがよ」


 話が長くなると思ったのか雄介は屋上の床にドサッと腰を下ろし胡座をかきならが説明をする。


「なぜそのような暴走族がワザワザこんな田舎に?」


「関東の族に負けちまってこんな辺鄙な田舎まで逃げて来たんだとよ」


 雄介の話によると東北と言っても関東よりの地域を縄張りとした『堕悪苦寝棲(ダークネス)』という族と関東最大の族、『怒羅権帝琉(ドラゴンテイル)』が縄張りを賭けて争ったようだ。結果は規模がデカくヤクザがバッグについている怒羅権帝琉が圧勝、敗北した堕悪苦寝棲は怒羅権帝琉の傘下に入るのを拒否しこんな田舎まで敗走したそうだ。


「つまり彼等は落武者であると?」


「ん〜、どっちかってぇーと手負いのケモノだな。後が無いから何でもするし、何やらかすかわかんねぇーからな………実際やらかしやがったしな」


 説明口調で話していた雄介だったが説明の後半で怒りの感情が漏れていた。奴等は雄介を起こらせることをしたようだ。


 秋穂の隣町である刈穂に来た奴等は秋穂村に続く道である。いなほ道に目を着けたあの道は急カーブする箇所が多々あるから暴走族には持ってこいの道と言えた。


「ですがそれでしたら秋穂の村を突っ切る必要はありませんよね?ただ走りたいのであればまたUターンすれば良いだけの話ですし」


穂先村(ほさきむら)って知ってるか?」


「ええ、たしか秋穂村から北の方にある村ですよね?ですが彼処は20年前に廃村になったと伺いましたが?」


 秋穂村の南に刈穂町があるように秋穂村の北、つまり山奥には秋穂より小規模の穂先村があるしかし、穂先村は少子化や若者の村離れによって20年前に廃村になっている。


「その廃村が族の集会所になっちまったんだよ」


 廃村になったと言っても穂先にはまだ人が住める住宅が多数残っているらしく、奴等はそこを自分等の夜の溜まり場にしたようだ。


「しかも奴等この村が警察の取り締まりが緩い場所だからって調子に乗ってやがるっ!」


 雄介は先ほどと違い明確に怒りの感情を表した。


 どうやら奴等は夜中の暴走運転以外にも悪事を働いているらしくバイクで走りながら民家に向かっての投石、道を歩いている老人の鞄をバイクで追い越しながらの引ったくり、危険な運転による事故の誘発などをやらかしている。


「この前は伊藤のばあちゃんが引ったくられた時に転倒して足の骨折った。それより前は奴等の危ない運転のせいで軽トラ運転してた佐々木のじいちゃんが奴等を避けようとして自爆(単独事故のこと)して意識不明の重体だとよ………クソっ!あいつら調子に乗りやがって!」


「警察はなんと?」


「こっちにまで勢力を伸ばしてきた怒羅権帝琉の取り締まりに忙しくこっちには手が回せないんだとよ」


 こちらの警察は2〜3人ぐらいで徒党を組んだ走り屋の逮捕経験はあるが大規模な暴走族の対応をしたことがないらしく堕悪苦寝棲を破った勢いで東北に進出した怒羅権帝琉の対応に四苦八苦しているそうだ。


「はぁ、吉村のおっさんがいたらあんな奴等すぐにブタ箱なのにな」


「定年退職ですか……」


 駐在の吉村のおじさんはあの事件のあと堕悪苦寝棲がこっちに来る前に退職して孫娘達がいる刈穂に引っ越してしまった。変わりに来た新任の駐在は左遷されて秋穂にやって来たらしく仕事にやる気を感じない。


「ホントこの村はどうなっちまうんだ……おっとお前に愚痴言っても仕方ないな。すまねぇ、とりあえず今んとこ俺が知ってる全てだな」


「貴重な情報ありがとうございます。昼ご飯は食べましたか?」


「いいや、これからさ」


 そういいながら彼は購買で買った焼きそばパンを俺に見せる。


「ならこれは情報料です。受け取ってください」


 俺は自分の弁当箱を雄介に渡した。


「オイオイ、これお前の弁当だろ?お前昼飯どうすんだよ?」


「実は昨日薫さん達に『明日のお弁当は私達が作ってくるから征男はお弁当の持ち込み禁止っ!!』と言われてしまいまして……その弁当はもとから今日の報酬為に作った物なんです」


 まさか彼女のお弁当が食べられる日が来ようとは思わなかったそれも一度に三人である。期限限定の恋人とは言ったがやはり嬉しいものだ。


「ヒュー♪、さすが秋穂中が誇るヒーロー様は違うねぇ、モテモテだ」


 口笛を吹きながらからかうように言う雄介、ニヤニヤと悪戯小僧のような笑みを浮かべている。ちなみにだが俺と薫達との交際はどこで漏れたのやら次の日には学校中に広まっていた。『3股野郎!』と批判されるのを覚悟していたが何故か皆からは祝福された。冷やかしはあれど批判されることは全くなく担任の老教師にまで祝福されてしまった(未成年の男女の交際を止めなくて良いのか?)。


「そういう坂上君はどうなんです?君も結構人気者でしょうに」


 俺と雄介で独占していた女子人気は俺が薫達と付き合い初めてから雄介に一極集中するようになった。今の彼ならすぐに恋人が出来てもおかしくないのだ。


「俺は興味ねぇな。それより今は野球に集中したいんだよ」


 そう言いながら手に持ったバットをアピールする雄介、


「そういえば、坂上君はスポーツ推薦狙いでしたね」


 勉強が苦手な雄介は得意なスポーツ、主に野球でスポーツが盛んな高校にスポーツ推薦で進学しようとしていた。


「それなんだが……実はもう刈穂高校からスポーツ推薦のオファーが来てんだわ」


 頭を掻きながら照れくさそうに言う雄介、


「刈穂高校!?甲子園常連の強豪校じゃないですか!?」


 こいつはたまげたな……刈穂高校は県内有数の野球強豪校で一時期甲子園で優勝を独占していた程だ。地元とは言えそんな高校から入学オファーが来るとは雄介は将来有望だな。


「悪原、進学先決まってなかったらお前も刈穂高にしないか?お前の頭ならスポーツ推薦無しでも入学出来るだろ、そんで野球部入ってバッテリー組もうぜ!」


 雄介から誘いを受けた、どうやら俺は彼に野球の腕を認められたようだ。その誘いはとても嬉しいのだが……


「お誘いありがとうございます。ですがもう私は進学先を決めましたので……申し訳ないです」


「そうか……お前の腕なら刈穂高、いや甲子園でも通用すると思うんだけどな」


 雄介は俺が断るとわかっていたのかしつこく誘って来ることはなかった。ただ、少し残念そうではあったが……。


「それは過大評価というものですよ坂上君、私の場合身体能力で無理矢理有利に進めているに過ぎません。今はそれで通用しますが、鍛え抜かれた強豪校の選手相手ではそうもいきません」


 俺は小学生の頃から鍛えていたからその恩恵である身体能力のゴリ押しをすれば並みの中学生相手ならスポーツで優位に立てるが一つの分野を集中的に鍛えた高校生以上の相手はそうはいかない、そもそも俺は兵士として戦える体を作るために鍛えたのであってスポーツをするために鍛えたのではない。分野が違う上に相手はその分野を極めているのだ、只でさえ才能がない俺ではいずれ抜かれるのは目に見えている。


「そんなもんかねぇ?まあ頭の良い悪原が言うんだそうなんだろうな。ああ、弁当サンキュな、お前の弁当うめぇから気に入ってんだよ」


 説明に納得した雄介は俺の弁当を受けとる。


「気に入って頂けたのなら何よりです。それでは私はこれで」


「おう、じゃーな」







 雄介と別れた俺はとある空き教室に向かう。薫達とそこで弁当を食べる約束をしたのだ。秋穂中は生徒数が減少しているため空き教室が多いのだが鍵が掛かっていないので生徒が自由に使えるのだ。


「……少し遅くなった」


 教室の前に着いたが、雄介との話が長引いたせいで遅れてしまった。薫辺りは怒っているだろうな……まあ、考えてたってしょうがない開けるか、


「あっ!征男おそーい!遅刻だよ遅刻!!」


 教室に入るなり俺を指差してプリプリ怒り出す薫


「征男さま、お待ちしておりました」


 一方理子は俺の分の緑茶を魔法瓶からコップ(魔法瓶付属)注いで出迎えてくれた。


「すみません、坂上君との話が長引きまして……」


「ふ〜ん、征男君は私達とのお昼より坂上君との話が大事なんだ……へぇ〜」


 留美は不機嫌そうな顔で聞いてくる。


「そんなことを言わないで許してください星川さn「留美……」はい?」


「征男君が私を留美って呼ばないと許しません!」


 そんなことを言いながら悪戯ぽく笑う留美、そういえば彼女のことは未だに名字で呼んでたな。彼女が俺を名前で呼んでいるのにおかしな話だ。そもそも薫と理子は名前で呼んでいるのに彼女は名字で呼ぶのは不公平で失礼な話というもの、しまった……もっと早くに気付くべきだった(前世含めて彼女がいなかった弊害)。


「わかりました。それでは()()()()許してくれませんか?」


 俺は困った笑顔を浮かべながら彼女に許しをこう。


「………ッ!?う、うん!良いよ許してあげる!!……名前で呼ばれただけなのにクラっときちゃった……」


 留美さんや、俺、難聴系主人公じゃないから後半の小声バッチリ聞こえてますよ。だが紳士である俺は今のを聞かなかったことにしよう。


「あっ!留美!私達を差し置いて征男といい感じになってズルい!」


「あっ……ごめんね薫ちゃん……征男君も来たことだしお昼ごはん食べよ」


 三人は各々が持ってきた弁当箱を出し蓋を開ける。


「じゃじゃ〜〜ん!」


「口に合うかどうかわからないけど……」


「どうぞ征男さま」


「ほう、これはこれは……」


 色とりどりの弁当に俺は目を見張る。薫の弁当は和食で以前花見の時に作った物に比べ形は整っておりより一層期待が出来る仕上がりに、留美の弁当は自信無さげな本人と反比例しており見ただけでうまそうだと解る洋食、理子の弁当はいつも安定して美味しいので外れはないと解るのだが今回は今までお弁当で使わなかった中華を作って来ておりその未知な部分が俺の好奇心に火を着けた。


「それでは最初は薫さんの料理をいただきますね」


「うん!食べて食べて!」


 薫の和食弁当は梅干しの乗った白米にだし巻き玉子、ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼうと肉や魚を使っていない料理だった。俺はその中でだし巻き玉子を選んで一口食べる。母さんが作るだし巻き玉子と違い出汁より甘さを優先した味付けだがこれはこれで悪くない寧ろ旨かった。


「薫さん花見以降かなり練習しましたね?」


「うん、征男の料理が旨くて悔しかったから隠れて練習してたんだ。それで……その……どう、かな?」


「ええ、見た目も良くなりましたが味にも磨きが掛かって素晴らしいです」


「ん〜〜ヤッター!」


 余程俺に誉められたのが嬉しかったのか薫は子供のようにはしゃいでいる。


「征男君私のお弁当もどうかな?」


 実は留美の料理は食べたことがないそれどころか作れるとは思わなかった(失礼過ぎる)のでとても興味がある。留美の洋食弁当はナポリタンと手作りだと思われる小さなハンバーグ、ボイル人参、ポテトサラダと有名所を取り揃えていた。試しにハンバーグを口に運ぶ。ほほう、冷めているのにこのうまさ、いや冷めることを前提にして作ってあるな。俺は留美の料理スキルに関心した。


「冷めているのにこの旨さ、凄くいいですね。今度温かい料理も食べてみたいです」


「ありがとう征男君、このハンバーグ温かい方が美味しいから今度うちに来ない?作ってあげるね♪」


 留美も薫のようなオーバーなリアクションはしないまでも俺を家に誘う辺りかなり嬉しいのだろう。


 次は理子の中華弁当だが……すごいなご飯と酢豚のみって直球勝負か、余程自信があるということなんだろうな、こういう大博打する奴は嫌いじゃない。早速食べてみる……うん、いい味付けだな理子に中華料理は教えていないのだがここまで出来るとは成長したな。


「理子さん、まさか教えていない中華料理をマスターしているとは成長しましたね」


「ありがとうございます征男さま」


 理子も薫と同じ隠れて練習したのだろう。でなければあの味は出せない。


「そういえば留美さんハチ先輩はお元気ですか?」


 留美の飼っている忠犬ハチに最近会っていないので俺は留美に尋ねた。


「うん!お陰様で、ただ征男君最近会ってないからハチ寂しがってたよ」


 実はあの事件に俺が乱入して助けたのは薫と留美だけではないハチも間接的にではあるが助けているのだ。原作で薫と留美を手込めにした添島は二人の両親が共働きで家にいないことを良いことに彼女達の家に上がり込んで彼女達を犯すことが多々あった。だが留美の家に行くと毎回ハチに吠えられたそれこそリードで繋がれていなければ添島を噛み殺さんばかりに……、毎回吠えられることに嫌気が差した添島はハチのエサに毒を仕込んで殺すことを企むが利口なハチは毒入りのエサを食べることはなかった。それに激怒した添島はハチの目の前で留美にナイフを突き付けて毒エサを食べることを強要した。利口なハチご主人様の危機だと解ると一切手を付けなかった毒エサを何の躊躇もなく食べ出したのだ泣き叫び食べるのをやめさせようとする留美の声を無視して………。



 原作をプレイした時に主の為に命を差し出すハチに俺は思わず涙した俺以外のファンも似たような心境らしく『学園シリーズ』人気キャラランキングでハチは一位になった。そんなハチが原作ならとっくに死んでいる時期に今も元気にしていると思うと目頭が熱くなる。


「それなら今度遊びに行きますか」


 せっかくハチの死亡フラグをへし折ったんだ遊びに行かなきゃ意味がない。


「あ、そういえば話変わるんだけどこの前私買い物途中に和泉さんにばったり会ったんだけど……和泉さん征男のことスッゴく気に入ってて進学しないでうちで働かないか?って誘ってたよ」


「へぇ和泉さんが……」


 和泉 鉄雄(わいずみ てつお)この村に唯一ある。自動車整備兼中古車販売を行う『和泉モータース』の社長である(社長と言っても社員は本人ただ一人だけなのだが)そんな人物と出会ったのは5月に行われた学校の職場体験である。職場体験とは学校のオファーを容認した店に赴きそこの社員として働き仕事をする意義について学ぶ学校行事だ。


 近場で済ませたかった俺は他の生徒が刈穂の店に行くなか秋穂にある和泉モータースに体験入社した(近場という理由以外にも和泉を選んだ理由があるのだがそれは別の機械に話そう)。和泉は最初学生でも出来る簡単な仕事をやらせていたが俺が修理に出されたバイクの状態を言い当て、和泉が試しにやらせた修理を終えてしまったことから気に入られてしまった。


「やれやれこの前自分は進学するから就職は遠慮するとあれほど言いましたのに」


 正直、前世の戦友で元ヘリパイ尚且つ多数の特殊車輌の免許を持つ黒井 仁(くろい じん)の整備技術に比べると俺は二流なのでここまで誉められる少し複雑だ。だがまさか、薫まで使って俺を誘うとは……しつこい和泉に溜め息を漏らす。


「やっぱり征男君って進学先は東京の高校?」


「ええ、自分の出身地である京極にある高校に進学しようかと」


 俺は原作のオリジナルが通っていた『私立京極学園』に入学しようと思っている、今の俺の学力なら更に上の高校にも行けるのだが『学園1』と『学園2』のストーリーに介入するためにも俺は京極学園への入学を決意した。


「う〜ん、私もその学校に受験しようかな?」


「留美さんの学力でしたら余裕でしょうね。ですが私が行くから自分も行くという安易な気持ちで受験して貰いたくないのですが」


 留美が京極学園に入学するのは好ましくないあそこには俺を除いて後一人催眠ガラケーの所有者がいる彼女がそいつと接触して催眠に掛かってそいつの手込めになるなんてことがあったら笑えない(添島から救った意味がない)。


「安易じゃないよ、お父さんとお母さんから高校は出来れば東京にあるレベルの高い高校を受験しなさいって言われてるんだよ。それなら征男君の志望校なんて持ってこい高校だよね?」


 留美が小首をかしげながら聞いてきた。困ったな正論なので反論出来ない、本当の理由を言うわけにはいかないしどうしたものか……、


「ねえねえ理子、征男の志望校の偏差値ってどれくらい?」


「えっとですね。ゴニョゴニョゴニョ」


 興味本位なのか京極学園の偏差値を尋ねる薫にかなり前から京極学園を受験する気でいる理子が薫の耳に顔を近づけて小声で教える。あっ、スゲー、薫の表情が高速で変わってやがる。


「はあぁぁぁ!!なにその偏差値!?私が入学するの無理じゃん!終わったあぁ〜……私だけ違う高校かあぁ〜」


 突然叫んだかと思ったらいきなり落ち込み出した薫、お前入学する気でいたんかい……。


「薫さん諦めるのはまだ早いですよ!京極学園ではスポーツ推薦も受け付けております。薫さんの身体能力であれば問題ないかと」


 絶望している薫に助け船を出す理子、たしかに薫の身体能力ならスポーツ推薦も楽勝だろう。


「薫さん本気ですか?例えスポーツ推薦で入学出来たとしても京極学園は東京にあるんですよ?あなたに東京に上京する覚悟はありますか?」


 薫には厳しめに質問する。理子は仕方ないにしてもせっかく助けた二人をあのケダモノが潜む学園に行かせたくなかったからだ。


「大丈夫!征男と同じ高校に行くなら親も賛成してくれるし、私だって女の子だから自炊くらい出来るよっ!……それとも征男は私達が学園に居たら……困るのか?」


 真剣な目で見詰めてくる薫、理子と留美も同様に見詰めてくる。うっ、そんな目で見ないでくれ、


「いいえ、そういうことでは、ただあなた方に東北から東京まで行く覚悟があるか試しただけです。覚悟が有るようなので私が受験に向けたバックアップをしましょう」


 ハハッ、告白の時といいどうやら俺は彼女達のあの目に弱いようだ。


「ヤッター!征男が助けてくれるなら入学確定だぁ!」


「ありがとう征男君、これで東京に行ってもみんな一緒だね」


「ありがとうございます征男さま、四人で京極学園を目指しましょう」


 喜びあっている。三人を見てたら自分の悩みが馬鹿臭く思えてくる。危険があるから来てほしくない?なぜ俺が彼女達を遠ざけないといけないんだ?危険があるなら排除すれば良いだけの話じゃないか、彼女達を遠ざける必要はない。そもそも前世では降りかかる火の粉は全て払うような生き方をしたんだ。彼女達を守りながら戦うのも楽勝というものだ。


 こうして決意を新たにした俺は昼休みを有意義に過ごした。











 7月後半、既に夏休みに入っている。俺は自宅の車庫でバイクカワサキZ400FXのメンテナンスをしていた。このZ400FX通称フェックスは父さんがこっちに来てから和泉モータースで購入したものだ。父さんは起業前はバイカーだったらしく休みの日はツーリングを楽しんでいたようだ。起業してからはそんな暇はなくなりバイクに乗る機会が無かったのだが父さんのセレナのメンテナンスをしに和泉モータースに行ったら中古のフェックスを発見一目惚れして購入したのだそうだ。しかし、買ったはいいが乗る暇がなかった。しかし運転したりメンテナンスをしないとバイクや自動車はダメになってしまうので、父さんは和泉に手先と知識量を買われた俺にバイクのメンテナンスを任せた(押し付けたとも言う)。


「さて、メンテナンスは終わりだな」


 俺は目の前にあるメタリックブラックのフェックスを見る。フェックスは暴走族に改造車の素材として人気で中古車でノーマル仕様の車体を見かけることはほとんど無いのだが和泉モータースで購入したこの車体は手が一切加えられていない珍しい車体だった。その為メンテナンスも楽に済んだので別の作業をしようと思う。


「京極に居たときに買ったままほったらかしだったもんな……そろそろいいかな?」


 俺は車庫に仕舞い込んだダンボールを二つ取り出す。これらは京極に居た時に毎度お馴染み『Amazones』で購入した物だ。どちらも改造すれば飛び道具になる代物なのだが改造する暇が無かったので今日まで車庫に仕舞われていたのだ。


 ダンボールの一つを開ける。中にはガスでBB弾を飛ばすエアガン所謂ガスガンである。ちなみに見た目はグロッグ19(グロッグ17のショートモデル)を模している。これは人を殺傷する程の威力は無いのだが改造次第では空き缶を貫通するくらいの威力を得ることが出来る。


 次のダンボールには釘打ち機(ネイルガン)が入っている。このネイルガンはガス圧で釘を打ち込む仕様の物だ。ただしネイルガンは暴発事故が多いので最新式のは釘を打ち込む物品に銃口を接触させないと釘が射出されない接触セーフティなる安全装置が装備されているので飛び道具として使えないのだ。接触セーフティのないネイルガンは骨董品レベルで全体が金属パーツで作られているので重くて使い勝手が悪い、だが最新式のは接触セーフティの問題を除けばプラスチックの多用による軽量化で使い勝手が良いのだ。そこで俺はこれから接触セーフティと取り除く改造をして釘を射出出来るようにしようと思う。何時間掛かるか解らないが今日中に終わるだろう。




「征男!大変!大変!大変!!」


 作業を始めて2〜3時間が経過した頃だろうか?ネイルガンの改造が終わりガスガンの改造を始めようとしたした時に外からお隣さんである薫の声が聞こえた。一体なんだろうか?


 俺が車庫から出ると俺の家のインターフォンを連打する薫がいた。残念ながら今日この家には俺しかいないのでいくらインターフォンを連打しても意味はない。


「あっ!征男!」


 俺の姿を確認すると大慌てでこっちに来る薫、ただ事ではなさそうだ。


「征男大変だよ!!」


「薫さん落ち着いてください一体何があったのですか?」


 とりあえず慌てる薫を落ち着かせてよう、話はそれからだ。


「落ち着いてる暇なんてないよ!学と一彦が死にかけてるんだよ!」


「ッ!?……薫さんその話詳しく」


 どうやらガスガンの改造は今日中には終わらなそうだ。





前書きの答え解りましたか?


しばらくは堕悪苦寝棲との戦闘が続きますお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ