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プロローグ前編

どうも、深く考えずプロローグを書いて一万字超えてしまい前後編に分けてしまった馬鹿な作者です。

プロローグは主人公の生前を描いております。

それではスタートです。












「どうしてこうなった…」


俺は墜落するヘリから投げ出され空から落下しながら呟いた。

え?何故こんなことになったか?そうだな…それを説明するにはまず俺が何者なのか説明する必要がありそうだ、少し長くなるが気長に聞いてくれ。




 俺の名前は『澤村さわむら 健次けんじ』澤村家の次男として生まれた。

 父は国立T大卒大手企業の重役で母も名門女子大であるO大卒とエリート一家である。

 ひとつ年上である兄、『澤村さわむら 健一けんいち』もエリートの血を引き継ぐだけあって小中高と成績優秀スポーツ万能の文武両道で父の母校であるT大を主席合格を果たした。






 一方俺は平凡であった。

 どうやら俺はエリートの血を引き継げなかったようだ小中高成績は可もなく不可もなくでスポーツも中高で剣道部に入り剣道に打ち込んだが、部での実力も成績と同じく可もなく不可もなくだった。(逆に同じ部活だった健一はエース、主将、部長とトントン拍子に剣道部での地位を築いた)





 平凡でも勉強とスポーツがそこそこ出来て(自分で言うのもなんだが)素行もオタク趣味に目をつぶれば好青年として普通の家庭ならそれなりに大事に扱うが澤村家は例外だった。







 優秀な兄と違い平凡な弟に対して我が両親は冷たかった。兄とは楽しそうに話すのに俺とは必要最低限の会話、兄が俺を虐めても止めなかった。そして決定的だったのは中学生の頃、親が普段より多めに月の小遣いを渡して来たときだ。当時の俺はラッキーとしか思わなかったが、それが間違いだとその日の晩に気付かされた。晩飯を食べる為にリビングに行ったら………俺の飯がなかった。(あの小遣いは月の食事代も含まれていたのだ。)




もともと幼少の頃より兄のスペアとして扱われていたが高校生になり俺がオタク趣味にはしると優秀な兄との差から()()()()()という扱いに変わっていった。




 幼少の頃からそんな扱いを受けた俺は普通の世間一般の暖かい家庭に早々に見切りをつけて趣味にはしっていた。

 そう、さっきも話に出たオタク趣味だ。

 俺は趣味を見つけて以来勉強もスポーツも自身が進路で困らないくらいにそこそこやって趣味に没頭していた。

 アニメ・ゲーム・コスプレ・同人誌・アイドルの追っかけ等々、俺は様々なサブカルチャーに手を伸ばした。

 今だからこそ言えるがもしオタク文化に出会わなければ俺は優秀な兄との差や家族との関係でとっくの昔に精神病んだか自ら命を断っていただろう……

 ありがとう隠れオタクの田中くん、君が俺に萌えとはなんたるかを力説してくれなかったら今の俺はいなかっただろうな。





 え?話が長い?俺がヘリから落ちてる理由になってないって?

  せっかちだな~今のはまだ序章に過ぎないってのに転機が訪れたのは、俺が二流大学に合格した18歳の冬のことだった。

  当時俺は将来について悩んでいた。

 このまま二流大学に入学、卒業しても就職は二流の企業しか望めないしそんな場所で働いても面白味の無いつまらん生活しか送れないと思っていたのだ。

 平凡な成績、平凡な学歴、平凡な仕事、平凡な晩年

 このままだったら俺の人生は平凡なままで終わってしまう…それはごめんだ、たしかに俺は平凡でつまらん人間で今まで平凡でつまらん人生を送って来たがこれから先もそんな人生を送る気はない自由と 刺激的なそう…命の危険があるような刺激…俺はそれを残りの人生に望んでいた。

しかしいざ命の危険が伴う刺激と言ってもイマイチピンとこない、警察官?アメリカなら兎も角日本の警察で命の危険な場面がイメージ出来ない、消防士?たしかに火の中に飛び込むのは刺激的だしかし俺の望む刺激とはベクトルが違う、それに火事がなけりゃ四六時中消防署に居なきゃならないそんなのはごめんだ俺は自由に生きたいんだ…。

結局その後に思い付いた候補も条件に合わなかった。

 譲歩すればなんとかなりそうな候補もあったが今後の人生を変える決断を譲歩する気にはなれなかった。

だがそんな意地のせいで決まらないわけで…


「やっぱり…無理なのかな」


 ここまで来ると諦めの言葉のひとつやふたつ吐きたくなる。


「凡人は凡人らしく生きないといけないのか…」


 思考がどんどんマイナスに落ちていく…まあ、詰まらないというだけで過酷な人生って訳じゃないんだ普通に働いて休みには趣味に没頭すればいいだけだ

趣味さえあれば俺は生きられる。

自分に言い聞かせるような言い訳の言葉が頭を駆け巡る…そんな自分に嫌気が差しながら俺は部屋を見た。


「でも就職したら趣味の時間減りそうなんだよな」


 俺の部屋には俺が今まで集めたアイテムが所狭しと並んでいる。

限定品の等身大アイドルポスター、初回限定版アニメDVD、レトロ・最新問わずに揃えたゲーム機とそのソフト、積み重なったエロゲー、サバイバルゲームで使う迷彩服とエアガンの一式・・・これらを揃えるのにバイトを掛け持ちして寝不足&筋肉痛になったのは良い思い出である。


「…サバゲーか」


 サバゲーは俺の趣味の中で数少ないアウトドアな趣味でこれだけは誰にも負けないと自慢出来るものだ、実際サバゲーの大会で優勝したのも一度や二度ではない。

  俺より頭の良い奴や運動神経の良い奴もゲームに参加するがそれでも負けたことはなかった。

サバゲーをしているとアドレナリンが普段より出まくるせいか、いつもより頭の回転や体の動きがよくなるのだ敵がどのように動くか手に取るように解るし、普段出来ない激しい動きも出来る。

 詰まらない人生から逃避する為に様々な趣味に手を出したがサバゲーをやっている時が一番生きている実感が持てた。

これなら自分より上のスペックの人間にも勝てる!これなら俺は平凡から脱却出来る!

 サバゲーを始めてやっと平凡な俺は人に勝てる分野を手に入れたのだ。

生きている実感が持てるサバゲーに俺は魅了され一時期他の趣味を差し置いてサバゲーにのめり込んだ












だがそれは一時的なものだった、最近ではサバゲーをやっても生きている実感が持てないのだ。

別に俺より強い奴が現れてそいつに敗れた訳ではない…冷めてしまったのだ…所詮はプラスチックの弾を飛ばすお遊びだ、当たっても自分が死ぬ訳でもないし当てても相手が死ぬ訳ではない。

それに気が付いたら今までのサバゲー熱が一気に冷めた。

一応言うがサバゲーが嫌いになった訳ではない。

ただ刺激が足りないのだ、せめてこれがもう少し危険が伴うものだったら話が変わっていたのかもしれない…例えばプラスチックの弾ではなく実弾だったら……ん?


「別に趣味が実益を兼ねても問題ないよな」


 その時俺は閃いたのだ趣味を仕事にしてしまえばいいと実弾の撃てるサバゲーなんて戦場でしかない、ならその戦場に居ても問題のない職業になればいいのである。


「手っ取り早いのは軍人になることだよな自衛隊?…一番戦争と無縁そうだ」


 そもそも自由に生きたいという条件に合わないので脚下だ正規の軍人が無理なら非正規の軍人になるしかない非正規の軍人と言えば傭兵である。

 軍事オタクでもある俺の調べが正しければ一昔前の国家間の戦争と違い国家と非国家の武装勢力との戦争つまり非対称戦争が主流の現代において傭兵の受容は高まっている。

国家という自身より強大な権力と戦う武装勢力は常日頃から人材不足、国家側もアメリカのような先進国ならまだしも発展途上国であるなら自国の兵力を温存したい(兵士の育成は金が掛かる)が故に使い捨ての人材を求めている。

 つまり非対称戦争が主な現代において傭兵は両者から求められる人材である。俺の予想が確かなら傭兵の需要は今後さらに高まるだろう。


「傭兵…命が幾つあっても足りない戦場に進んで挑む戦争屋、恐れ知らず、戦闘狂……悪くない」


  目標が決まってからの俺は早かった。趣味の品々を全てただ一人の親友にして萌えとはなんたるかを俺に教えてくれた師匠である田中くんに譲った。そして貯金を全て卸し親兄弟にも気付かれないようにして金と着替えだけを詰めたリュックとパスポート片手に俺は日本を飛び出した。




 日本を離れた俺はフランスに向かった。え?ナニ観光してんだ?さっさと戦場に逝けやだって?あのな今まで高校生だったガキが戦場行ったって犬死にがオチだ、俺はスリルを味わう為に戦場に行きたいのであって死にに行きたいわけじゃないんだいくらサバゲーが強かろうがそれだけで生き残れるほど戦場が甘い場所じゃないってことは十分に理解している。

そこで俺はパリにあるフランス外人部隊養成所の門を叩いた。フランス外人部隊とはフランス以外の国籍から募集される正規部隊だ。フランスは自国民を危険にさらさないという伝統があり、危険な任務には外人部隊が作戦行動をとる。入隊自体は簡単で高1程度の学力があれば余裕だ。但し入隊後の四ヶ月の間にフランス語をマスターしなければならないそして危険な任務を任されるだけあって訓練も過酷だ。

 入隊後俺は必死になってフランス語を覚えた学校で教わるのと違い必要に迫られた故か二ヶ月足らずでフランス語とついでにカタコトだった英語を日常会話レベルで覚えることが出来た。どうやら俺は実際に体験する覚え方の方が適してるようだ。四ヶ月の語学研修の後、第2外人歩兵連隊に放り込まれた。そこでの訓練は過酷で同時期に入隊した数名が脱走したのを覚えている。俺も一時脱走しようと思ったが入隊時に五年任期の契約を結んだことを思い出した。もし脱走が失敗した場合、契約違反と脱走の罪で逮捕される。脱走が成功しても入隊時にパスポートを預けた為フランス国外に行けないのだ。それに今逃げたら過去の詰まらない人生を歩む凡人に逆戻りだ。それはごめんだ!俺は過酷な訓練を経て実戦を経験したその時の感想は後日にしよう。(そもそもヘリから落ちて後日もクソもないが…)

幾多の実戦と配置替えを経て俺は5年の任期を終えた。





 任期の延長も可能だったが当初の予定通り、俺は傭兵として各地を転戦した。5年の間に傭兵事情も大きく変わり人件費削減のためアメリカですら傭兵を雇うようになった。日増しに高まる傭兵需要は民間軍事会社(PMC)なる傭兵部隊と装備を組織的に戦地に送り込む企業を生み出した。フランス外人部隊出身の傭兵は各PMCや傭兵チーム(PMCと違い企業として法人登録していない傭兵の集団)から勧誘される。(危険な任務を請け負うだけに兵士の質が普通の軍隊のより上だからだ)勿論俺も勧誘されたさ、最初の2~3年は各PMCや傭兵チームを転々とした。別にクビにされた訳じゃない逆に俺が脱退するのを残念がってた。職場が気に入らなかった?違う違うどこの職場も気の良い奴等ばかりで何て言うか………そう!アットホームな職場だったな。じゃあ辞めた理由は?……なんて言えばいいか……異物感を感じたんだ。

 抽象的な表現で悪いんだが……なんていうか犬の群れの中に狼が一匹紛れ込んだみたいなそんな異物感……いつ死ぬかわからん仕事上そんな訳のわからん思いを抱え込んだまま戦場に行ったら早死には目にみえてるし仲間に迷惑をかけたくなかった。

職場を転々としてもこの異物感が解消されることなく結局俺はその後、フリーの傭兵として4年間戦地を渡り歩いた。このフリーの4年間は気楽だったな一人だから異物感を感じないし報酬の分け方でいちいち話し合う必要もない。勿論その分デメリットもある、とりあえずなんでもかんでも一人でやらなければならない助けるべき仲間がいないが助けてくれる仲間もいないのだ全て自己責任だ。まあでもその問題は傭兵をやろうと決意した18の冬のあの日から覚悟していた。(当時の俺は「一匹狼の傭兵も悪くないな」なんて下らないことを考えてた)


 実際、仕事を選べば一人でもなんとかなったしゲームのソロプレイみたいな感覚で仕事をしていた。四年間もフリーランスで仕事をしていると、業界内で俺の名前が知れ渡るようになった。俺的には仕事のオファーが増えるから大変喜ばしいのだが通り名を付けるのは勘弁して欲しかった。

 一匹狼で尚且つこの業界では珍しい日本人傭兵ということで『狼人(ろうにん)』(一匹狼&主を持たないサムライ、浪人の掛け合わせ)や黒狼(シュヴァルツヴォルフ)なんて呼ばれるようになったんだが、前者は聞くたびに受験に失敗したような気分になるし後者はどこぞの機動戦士に出てくる白い狼のパチもんみたいで複雑だった。


フリーランスの4年間を簡単に纏めると、


金が無いから依頼を受ける。

2~3ヶ月間戦場で仕事をする。

稼いだ金を手に日本に建てた別荘に戻る。

コミケ、アイドルのコンサート、戦地に居る間に発売された漫画やゲームの収集のために散財する。

2~3ヶ月もすると金が無くなる。

金が無いから依頼を受ける。(以下無限ループ)


 我ながら偏った生活をしていると思う。しかし戦地にずっといると精神がおかしくなるのだ実際、おかしくなって味方や自身の頭に銃口を向けた傭兵を見たことがある。

 そう傭兵にも休息が必要なのだ(だからといってあの散財は流石にやり過ぎたと今は反省している。)

 齢が27になるとソロでの傭兵活動に限界を感じはじめた。この頃俺はソロでも出来る仕事にも慣れさらにワンランク上の依頼を請け負ってみたいと考えていた。しかし今より上の依頼となると基本多人数を前提としたものが殆んどで単独で行動する傭兵には無理なものばかりだった。今更どっかのPMCに所属する気はさらさらなかった俺は外人部隊時代の同僚や戦地で共に戦ったことのある傭兵に声をかけてチームを作ろうとした。俺の呼び掛けで集まった傭兵は6人、国籍も年齢も異なる6人だった。

この6人に声をかけた理由は彼等も犬の群れに紛れ込んだ狼だったからだ。




こうして俺をリーダーとする傭兵チーム『群狼(ヴォルフェン)』が結成された。







 群狼(ヴォルフェン)を結成したのは正解だった。フリーの頃には受けられなかった依頼を引き受けられ尚且つ優秀なメンバーのお陰でその依頼を達成しているからだ。

 確かにフリーの時のような気楽さはないがチームを組んでもPMC所属時に感じた異物感を抱くことなく戦えることは大変有り難かった。フリーの頃より充実した日々を過ごしていた………あの日までは






「今回の依頼を説明する。みんな集まってくれ」


 群狼(ヴォルフェン)を結成してから6年が経った。6年の間に俺達7人は様々な戦場に赴きその度に報酬は良いがその分危険度も高い依頼を率先して引き受けそれらを遂行したことでこの業界内で高い実積と信用を手に入れた。今では特殊部隊の特別講師としてアメリカに呼ばれたり政府高官の護衛任務の依頼が来る程に知名度を上げた。

そして今回もハイリスクハイリターンな依頼を引き受けていた。


「誘拐されたイギリス系企業の重役の救出でしたっけ?」


 スポーツ刈りがトレードマークの日本人傭兵、黒井 仁(くろい じん)が依頼内容を確認した。


 今回の依頼はコンゴ民主共和国に建設予定のダイヤ採掘場を視察に訪れ誘拐されたイギリス系企業グローバルイングランド社(通称、GE)の重役アダム・マクドネルの救出だ。犯行グループは『3日以内に指定の場所にアメリカドルで300万持ってこないとマクドネルを処刑する』という内容を記録したDVDをGE本社に送りつけた。


「マクドネル氏はイギリス政府に太いパイプを持っている。彼の生死によってはイギリス経済…いや、イギリスという国そのものが大きく変わるだろう」


GEにDVDが送られて1日が経過したがGEとイギリス政府の混乱は収まりそうになかった。


「質問良いか?」


 隻眼のアメリカ人傭兵、イーサン・ジョーンズが律儀に手をあげながら質問してきた。


「なんだイーサン?」


「マクドネルは採掘場の視察に来たんだよな?こいつが拉致られた現場、位置的に採掘場と反対方向なんだが……どういうことだ?」


 そう、マクドネルは採掘場のある北部地区ではなく観光地や娯楽施設のある南部地区で拐われたのだ。


「視察は建前だ実際は愛人と豪遊するためだけにアダム・マクドネルはこの地に訪れた」


「ハァ!?」


「ヒュー♪お盛んだね」


 情報通であるロシア人のイワン(本名不明)が淡々と答えイーサンは呆れイタリア人のダリオ・カンピオーニが茶々を入れる。


「仕事を放棄して愛人と豪遊とは、まったく英国紳士の面汚しだよ!」


 マクドネルと同じくイギリス人であるオズボーン・クラークが静かにであるが怒りを表す。オズボーンは英国紳士を地でいくような男だそんな彼からしたらマクドネルは許せない存在なのだろう。


「そもそもMr.マクドネルはなんでこんな紛争地で豪遊なんて酔狂な真似を?」


 仁が疑問に思うのも無理はない、コンゴ民主共和国は豊富な天然資源、民族間の対立などにより争いの絶えない国だ今でこそ西部はある程度落ち着きを取り戻しつつあるが東部の治安はお世辞にも良いとは言えない。


「愛人にお願いされたらしい、マクドネル氏に雇われてる家政婦が聞いてたそうだ」


イギリスでも家政婦は見たがりのようだ


「旅行にコンゴ選ぶ愛人って……まさか!」


今まで静かに聞いていたフランス人のユーゴ・ベルトワーズが持ち前の洞察力で何かに気付いたようだ。


「鋭いなユーゴ、愛人もグルだよ」


 ユーゴの台詞を引き継ぐように俺が答えを出した。

()()()の情報が確かなら誘拐グループは一年も前にターゲットであるマクドネルに愛人を差し向けたそうだ。


「ハニートラップ……ですか?」


 映画やドラマでしか観たことない内容に驚き半分呆れ半分の仁


「ハニートラップかぁ~」


 自身には無縁の言葉のため関心のないイーサン


「………」


 同じく関心のないイワン


「ハ、ハニー……トラップ……」


 青ざめた顔をするダリオ過去に引っ掛かったか?


「は、ハニートラップに引っ掛かるとは、し、紳士として情けないぞ!」


 動揺を隠しきれないオズボーン、英国紳士はハニトラに弱いのか?


「一年も前からハニトラ要員を…犯行グループはかなりの手練れなのか?」


 理知的なユーゴは話の続きを促す。


「残念ながら不明だ…様々な犯罪が横行するコンゴだがここまで手が込んだ要人拉致は今までなかったからな。」


「素人の犯行だってーのか?」


 イーサンがそんな馬鹿なと言いたげな顔をする。一年前からハニトラ要員を差し向けるようなグループが無名の組織だとは思えなかったのだろう。


()()()の話によれば犯行グループは過去にも同規模の身代金目的の誘拐をしている常習犯であるとのことだ……ただ今回と違い誘拐された側と誘拐した側だけで取引を済ませたと考えられる」


 企業としても身内が誘拐されたなんて外聞が悪いことを世間に知られたくないからな。


「「「「「「……………………」」」」」」


 俺の説明に黙るメンバー……納得したというより依頼人という言葉に反応したと言うべきか。


「最後にひとつ質問いいかね?」


 ユーゴが皆を代表するように言葉を発した俺はそれを無言で頷き了承した。


「なぜ、この事件に対する依頼人がGEでもイギリス政府でもなくアメリカの中央情報局(CIA)なのかね?」


 アクション映画でも見かけるアメリカのスパイ組織CIAが今回の依頼人なのだ。


「話は実に単純!俺達の嫌いな政治的な問題さ」


 簡単に説明するならイギリスに貸しを作りたい&世界の警察として改めて名声が欲しいアメリカ政府が当初特殊部隊を使い独断でマクドネルを救出しようとしたが他国の領土に勝手にアメリカ兵が入り込んだら国際的な批判を招くため断念したがCIAが救出した栄誉をアメリカ軍に差し出す変わりに来年度の予算増額を条件に引き受けたのである。しかしCIAもリスクの高い救出を自分達でする気はさらさらなく失敗しても痛くも痒くもない傭兵…つまり俺達に救出を依頼したのだ。



「なんというか……」


大国の思惑を知って言葉を失う仁。


「美しくないな」


 普段チャラけたダリオも苦言を呈した。


「君達の気持ちもよく解る。たしかに優雅でない話だ。しかし今回の依頼成功すればかなりの報酬を彼等(CIA)から補償されている。それに要人救出くらい我々にとっては造作もないことだろう……違うかね?」


 俺と一緒に奴等(CIA)との交渉の場にいたオズボーンが擁護する。群狼(ヴォルフェン)結成前よりCIAの仕事を引き受けていたオズボーンが慣れた様子で交渉する場面を思い出し交渉の場に呼んで正解だったと改めて思った。



「へぇ~そこまで言うんならそれなりの報酬なんだろうな?」


 イーサンが報酬に食い付く


「ああ、アメリカドルで300万だ」


「さ、300万!?」


 俺の答えに面食らうイーサン


「凄いな、身代金と同じ額じゃないか」


「成功すれば来年度の予算はそれ以上になるからな、奴等金を出すタイミングは心得てるようだ」


 疑問に思ったユーゴも俺の説明に納得したようだ


「長期の依頼ならともかく一度の依頼でここまでの報酬はお目にかかれねぇからな。やってやろうじゃないか!」


 ノリノリのイーサン


「CIAは好きじゃないけどこんな報酬だったら話は別だね♪」


 ダリオも納得したようだ


「山分けにしてもかなりの額になりますね。やりましょう!」


「……装備を準備する」


 テンションが上がった仁と既に準備を始めているイワン……どうやら乗り気じゃないメンバーはいないようだ。


「よし!二時間後に出発する。準備を怠るな解散!」


「おっと、仁!俺部屋に時間まで引っ込んでるから時間になったら教えてくれ」


 早速準備を始めている仁に声をかけて自室に籠ろうとすると仁を含めたメンバーが作業を中断して白い目で見てきた。


「な、なんだよ俺はムサイ男共に見詰められる趣味はねーぞ!」


 俺が叫ぶと溜め息を吐くムサイ男共一体なんだっていうんだ!?


「いえ別に……ただ澤村さんがいつも悪い癖が出たなと思いまして」


「俺はケンジのことを高く評価してるけどよ……その癖だけは理解出来ん」


「…………」(無言だが批判的な目線のイワン)


「いや、まあ、あのゲームプレイすること自体は百歩譲っていいとしてもさぁ……普通仕事前にする?」


「君のような優秀な傭兵でも短所のひとつやふたつくらいあるとは思っていたが……その癖は些か……」


「病院に行って診たらどうだ?なんなら医師免許持っている私が診察するが?」


「グハッ!」


 仲間から発せられる批判の言葉の数々が俺の心に突き刺さる!


「うっせーな!!あの手のゲームをプレイするかしないかの有無で俺のモチベーションかなり変わるんだから仕方ないだろうが!」


半分キレ気味に反論する俺


「イヤだからって殺し合いする前に部屋に籠って()()()します?しかもハードなやつ……」


前にも話した通りフリーランスの4年間は俺は偏った生活をしていた。その時に生活習慣というべきか変な悪癖が身に付いてしまった。それが仕事前(殺し合いをする前に)にエロゲーのダーク・ハードな、詳しく言うんなら凌辱ゲーやら寝取りゲーなどといったリアルでやったら犯罪なゲームをプレイするというなかなか逝っちゃってる癖だ(自覚あり)



 そもそもなぜそんな癖が身に付いたかというとフリーの傭兵を始めてから2年経過した時だった。



「あ~、来週仕事(ソマリア行きのタンカーを海賊から守る警護任務)じゃんだり~」


 当時、日本に帰国して趣味に金を使っていた俺は大分ソロ傭兵プレイ慣れて少し飽きが来ていただが前もって仕事の契約をしてしまった俺は仕事に行かねばならなかった。



ソマリア海賊(あいつら)傭兵が乗ってる船と判った途端逃げ出すから張り合いないんだよな、かといって警護の仕事放り投げて海賊追っかける訳にはいかないし……あ~めんどくせ~」




 契約違反だけど仕事サボろうかな?なんて考えてた日曜日の午後我が盟友であり師匠の田中君が遊びに来た。田中君は俺が傭兵をやっていることを知っている人の一人だ。


「久しぶりじゃないか田中君!」


「デュフフwww…澤村殿久方ぶりでござるなww」


 学生時代からそうだったが田中君は普段は真面目な優等生なのに周りに俺や同好の士だけになるとこのような今のオタクでも使わないような言い回しをする。


「拙者、澤村殿がまた日本を離れると伺いましてなプレゼントを用意してきたでござるよwww」


 田中君が差し出したのはユートピアというエロゲメーカーの製作したエロゲだった。


「おぉ、ありがとう!タイトルは……『悪夢の学園』?どんな内容?」


「オウフwwwストレートな質問キタコレwwwこの作品はですなwww」


 要約するとこのエロゲはヌキゲーと言われるストーリーよりも実用性に特化した作品だ。内容は鬼畜な主人公が人間の深層心理を操ることが出来る『催眠携帯』(発売当時はガラケーが主流だった)で学園の美少女たちを調教するというものだった。


「凌辱ゲーか……俺の趣味じゃないんだよな…」


 当時の俺は純愛ゲーや泣きゲーといった物語重視のエロゲが好みだったので凌辱ゲーを渡されても喜びよりも戸惑いの感情の方が強かった。


「デュフフフwww澤村殿好き嫌いはいけませぬぞwww試しにプレイしてくだされwwwコポゥwww人生が変わりますぞwww」


師匠の強い進めとあれば嫌とは言えない。少しばかりの興味もあった俺は仕事までの残りの日数を『悪夢の学園』のクリアに費やした。




 結論から言うと田中君の言う通り人生が変わったよ。可愛く個性豊かな美少女キャラ、豊富なCG、簡単な選択肢、サクサク進められるシナリオ、Hシーンなんか今までプレイしてきたどのエロゲより量が多くそして……エロかった。

良い点を挙げればキリがないゲームだった…………だが、だからこそ言わせて貰いたい!何故これを凌辱ゲーで出した!?主人公鬼畜過ぎるだろ!?Hシーン興奮したけどそれに比例して罪悪感がはんぱなかったわ!各キャラのキャラ立ちは良いんだから普通に純愛ゲーで出した方が売れただろ。つーか主人公なんなんだよ!手込めにした学園のマドンナを男子生徒達に輪姦させるって………なんて酷いことを普通あんな可愛い娘手に入れたら独り占めだろうが!(論点がズレるアホ)あと男子生徒共テメーら何学園のマドンナ嬉々として犯してんだよ一人ぐらいは止めやがれ!選択肢?ああ、あったよでもあれ調教内容選ぶのが殆んどでストーリーに関わるの少ねぇんだよ。あ?√分岐あるかって?あったよ分岐によってはハッピーエンドかバットエンドになるさ、けどよあれって主人公のハッピーorバットを決めるのであってヒロイン達はどう転んでもバット確定なんだよあのゲーム…………


 おっと、八つ当たりに付き合わせて悪かったな。んじゃ続けるぞ。キャラは良かったが内容で台無しにされて不完全燃焼の俺はソマリア行きのタンカーの警護の仕事に就いた。ソマリア海域に入ると案の定小型の船に乗った海賊どもがやって来た。いつも通りに適当に銃ぶっぱなして追っ払おうとしたが今回は違った。いつもなら小型船2~3隻くらいで来るはずの海賊が今回はやたらと数が多い、小型船の大船団だった後から解ったことなんだが海賊共は来るタンカーに毎回俺が乗ってるせいで商売上がったりになり我慢の限界に達した奴等がソマリアで海賊をやってる他のグループと徒党を組んで商売仇の俺を消しに来たそうだ。つまり数で質をカバーしようとしたらいしい。

戦いは苛烈だった幾ら倒してもゴキブリのように海賊は涌いてきて俺と一緒に雇われていた傭兵たちは数の暴力に叶わず次々と倒れ戦えるのは俺のみとなった。普段の俺ならここら辺で倒されていただろうが今回は違った。え?何でかって?それはな……


「死ねぇええ!腐れ主人公が!!」


『悪夢の学園』をプレイして溜め込んだフラストレーションをぶちまけていたから。

いや~ね、あれプレイしたあとに戦闘すると敵があの鬼畜主人公やその手先に見えてぶちギレちまったんだ(完全に八つ当たり)


 そのあとも俺は暴れまわって気が付いたら海賊共は既に撤退していた。来た時の半分になって

任務が完了すると当初の予定より多めに報酬を貰った俺は2~3ヶ月戦地での仕事の予定を変更してすぐさま日本に帰った。田中君のゲームのお陰で助かったからお礼をしようと思ったからさ

 しかし田中君はおれにあってそうそう衝撃の一言を発した。


「デュフフフwwwお決めしてたようですな澤村殿wwwこちらのゲーム続編もありますがいかがでござるか?www」


「なん………だと!?」


えぇ、もちろんプレイしたとも、『悪夢の学園』は続編派生作品が多くてな色々プレイした。プレイして解ったんだが仕事前に凌辱ゲーをやると俺の戦闘力はやらなかった場合と比べ、段違いだった。どうやら

敵兵を凌辱ゲーの鬼畜主人公に見立て攻撃しているのが原因のようだ。

それが解って以来俺には仕事前に凌辱ゲーをやるという日課が出来上がってしまったのだ。



「兎に角、俺はゲームやるから時間まで誰も来るなよな!」


「「「「「「…………はぁ~」」」」」」


もちろん今回も時間までプレイしたのは言うまでもない。
































いかがでしたか?

誤字脱字などがあれば感想欄に報告くだされば幸いです。

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