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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
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87 ギルド

どうも作者さんです。

O型なのでハマったら熱心に取り組むのですが、回りが見えなくなるタイプです。ハマりやすいですが冷めやすいんです。

 

「おーい、おそいぞ! お前が来ないからこの大男が話済ませてるぞ!?」


「あーちょっとクラベちゃん! 大男じゃないわよぉ、せめて身長の高い女性って言ってぇ」


 学校からさほど離れていないギルドに着くと受け付け前の酒場に集まっている皆。

 クラベとピタシーナちゃんがワイワイ騒いでる。


 この町の冒険者連中は今期のオレたち特待生を認めてくれているようでウザ絡みしてくる奴は少ない。

 二人ぐらいいるな。


「おっ、ガル坊じゃねぇか。最近みねぇからぁ何してたんだ?」


 まず一人。

 セドル父さんの昔のパーティーメンバーだ。


「どうもビグダさん。また酒浸りですか。どうせバーのおねぇさんに振られたんでしょ」


「あ~そうなんだよー! 聞いてくれやぁ、雨降りの口づけで飲んでたんだけどよぉ──」


 もういいや、コイツの酒絡みはひじょーに腹が立つから。

 幻影でも見せとこう。


「お、聞いたぞ。お前らのとこの教官─下がったんだろ?」


 出た、クズの情報屋。

 下がったっていうのは冒険者がよく使う俗語で、引退することを意味してる。

 更に深い意味は──死亡だ。

 こんな風にズケズケと人の弱味に踏み込んでくるクソッタレだ。

 校長のズラ疑惑を一瞬で見抜いて広めたのもコイツ。


「あんたに言うことはねぇよ。ガキだからって舐めてんなよ?」


「おぉ、コェーコェー。このラッツさんには天才少年に歯向かう度胸はありゃしませーん」


 ちょっと怒気を込めて睨むと踵を返してビグダの話を盗み聞きしに行きやがった。

 クソッ、伊達に情報屋名乗ってる訳じゃねぇな。

 教官の死を町に帰ってきた数時間で仕入れてきてる。


 皆がいるテーブルにたどり着くまでにほとんど距離は無いってのに案の定この二人が話しかけてきた。

 だからあんまりギルドの建物には来たくねぇんだよ。


「大丈夫か。済まないな、ガルゥシュに色々任せてしまって。僕が状況を説明できる立場にいれれば良かったのにな」


「いや、良いよ。ゼン、セーベとクラベの冒険者登録手伝ってくれたんだろ。別に構わないさ」


 ゼンが座るオレの前に飲み物と軽いつまみを置いてくれる。

 スイカっぽい果物のジュースと皮の漬け物だ。

 定番だけど意外といける。オレは好き。


「ガルゥ、ちょっとしんどそうだよ? 大丈夫? 私はガルゥの側を離れないからね」


「あぁ、ありがとうソフィ。やっぱり眠いのかもしんないわ。説明苦手だってのに何回もしてるからな。未だに慣れない」


 あ~ソフィは可愛いなぁ。

 なんていうんだろ、いつもオレのことを気遣ってくれるって言うかさ、特別なんだろうな。


「いやーそれにしてもねみぃ。ギルド長が帰ってくるまで待てとかキツいこと言うよな」


「あれ、まだ話してなかったのか?」


 クラベが話を終えてるって言ってたけど。

 聞き間違えしてたか?


「違うんだよ、兄貴がギルドの仕組みも分かってないのにそう解釈したっつー話だ」


「クラメー、説明しといてやれよー子分だろ?」


「んむ、そりゃそうかもしれんけどよ。俺だって色々…やってたんだよ」


 クラメが目を泳がせた、オレと目を合わせようとしない。

 どこか変だな。


「アハハ、ガルゥシュ信じる必要ないわよー! クラメさっきまで腹下してたのよ」


「ちょっ、おい! エミッタ!」


「拾ったもの食べるからよ、そんなの食べるくらいなら…私が…」


 クラメとエミッタの暴れる音でクレールの言うことが聞こえなかった。

 頬を赤らめてる様から察するに手作り料理でもつくってあげると言おうとしてゴニョゴニョしてるんだろ。

 恋する乙女なんだよなぁ…

 つーかよくよく考えたら両想いなんだよなぁ…

 素直になれない子たちだけど面白いから放置で。


「……アナタも…そうするのね…分かるわ…面白いもの…」


「クックッ、あぁめちゃくちゃ面白いさ。チヌネアも分かってんなぁ」


 暗く笑うチヌネアには慣れている。

 オレがニマニマしてたのを見られてたんだろ。

 この会話で分かるように主に悪いことを考えるのはオレとチヌネアだ。

 そのせいで勉強の成績はお互い良くない。

 問題解くよりちょっかいやイタズラに走るんだよ。

 割りと簡単な四則計算や実用的なものしか授業が無いからなぁ。

 いや、やろうと思えばやれるんだぜ?

 ちなみに成績がいいのはクレールとピタシーナちゃんな。

 最下位はクラメです。はい。


「うぃーす、帰りもうした~ですすー」


 騒いでるにもかかわらず、ギルド入り口から気だるげな声が聞こえてくる。

 思わずそちらを見た。


 ボサボサの髪に高そうな丸眼鏡を鼻に掛けた冒険者らしき人物がいた。

 女性っぽいな。


 服装はかなり軽装。

 ダルダルな上着に胸元が見えそうな開いたシャツ…

 いや、ただサイズがでかいだけだろッ!

 思わずツッコんでしまった。

 猫背のせいで余計に胸が見えそうになってるが…うん。

 胸がほとんどない。

 一応見えるのを防ぐようであろう申し訳程度のさらしがチラリ。


 うわぁ~ホントに冒険者か…?

 でもギルドだし、帰ってきたとか言ってたような。

 それに美しい鍔を持った細剣を帯剣しているから冒険者か。


 オレが自問自答を繰り返している間に、アクビをかました彼女は見られていることに気づいたのか、こう言った。


「おっー、雑魚どもちゃん達よん。久しぶりのぴーすぴーす!」


 一瞬唖然とした。

 なにをいってるのかさっぱり分からん。

 目を半月型にしたアイツの目からは感情が読み取れない。


 しかしよくよく考えてみると、血気盛んな冒険者達を捕まえて雑魚どもと罵るとは相当なアホか、強者かだ。


「アァン!? 何いってやがんだこのクソカスは?」


 そして思った通りというか、案の定キレる冒険者。

 クソカスとか汚い言葉使っちゃいけません~。

 お上品に このビチグゾがぁ と言いましょう。

 えっ、まだ汚い… 仕方ない、不浄なる不純物さん でいかがでしょ。


 そんな下らないことを考えてると、キレ気味冒険者があの女に至近距離でメンチを切りはじめた。

「おいおい…いいのか」とクラベがクラメに聞いてる。

 セーベはメルネーちゃんとくっついて顔を伏せてる。


「ありゃまずいことでも言っちった? ぴーす、キライかね?」


「何がピースだ、てめぇケンカ売ってんだろ? 死なねぇ程度にいたぶってやるよ」


 あ~こりゃ止めた方がいいか?

 周りの奴等は賭けの体勢に移ってる。


「うみゅー、ケンカかぁ。イイケド、後悔しても知んないよん♪」


「おし、オモテ出…───アグッ!!」


「ケンカに場所は関係ないでしょん? ぴーす!」


 ぅお、マジ…

 まさか、思いっきり目潰しを喰らわせるとは。

 それもいきなり。

 この行動で完全に場の主役があの女に定まった。


 目潰しを喰らった奴は目を押さえながら、のたうち回っている。

 別に 目がぁ! 目がぁ! とは言わない。

 言う余裕も無さそうだ。


 で、次あの女はどうするんだ。

 思ったより胆力と行動力が凄い女だ。

 何だか場に飲まれて動くことが出来ない。


「おい、コラ。何をやっとるんじゃギルマス」


「いでっ、お、ただいまですー!」


 は?

 ヨーデンさん?

 あれ? 何でギルド受付のドワーフのヨーデンさんが…

 重そうな見た目に反して軽く飛び上がってあの女の頭を小突いていた。


「あぁお帰り。しかしクレハーロのギルドマスターなんじゃからたまには連絡せぇと言っとるだろうが」


「うみゅー、いきなり説教~? ヨーデン~」


「うるさいわ、ギルマスにしか出来ん仕事が溜まっとるんじゃぞ」


 は、はぁー!?

 嘘だろ、あんな人がここのギルドマスター!?

 ヨーデンさんは信用してるけど…真偽を見極めてやる。

 行儀は良くないけど…鑑定!


 《【鑑定】が妨害に遭いました。キャンセラーを保持している可能性が高いです》


 うげっ!

 鑑定対策をしているだと!

 鑑定はほとんどその存在を知られてないんじゃ!?


 マズイ─、目があった。


「ちょっとゴメンー、ヨーデン」


「ん、あ? 何じゃ」


「いや、ネ──」


 トントンッとステップのように瞬間でオレの目の前に近寄り、フワリと降り立った。

 突然で対処が出来ない。

 一歩後退っただけ。

 そしてこの女は──耳元で口を開いた。


「…んー、《ユウシャ》…んにゃ、まだ《核》──カナ?」


 波乱を呼びそうな女は首を傾げて奇妙に微笑んだ。

はい。作者さんです。

口調がふざけてるキャラクターって好きです。サイコパスキャラクターに多い気がしてます。

サイコパスキャラは大体重要人物説が持論です。

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