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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第五章 大樹の祭
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84 馬車

メリクリ…

 

 大きな樹が遠ざかっていく。


 最初に来た森から六樹、タリアの樹は見えていたみたいだ。

 意外と訓練に緊張していたのかもしれない。


「うぉー、すっげえなぁ! 馬が引いてるのかっ! おおっおおっ揺れるぅっ」


「テーベちゃん、ちょっと騒ぎすぎだよ。身を乗り出さないでぇー!」


 いつの間にかメルネーちゃんがテーベの世話役になってる。

 テーベの言ってる通り揺れる馬車に乗り、オレたちはクレハーロへの帰途についている。

 元気に叫んでるのはテーベだけだ。

 彼女にはこれから見るものは全て驚きに包まれているだろうから元気なのだろう。


 オレは純粋に疲労で。

 他の皆は…疲れやら、思案やらで口を閉ざしてる。


 それにしても揺れるな。

 馬車に乗れたのはいいが、御者には少し待ってもらったみたいだ。

 この御者はあまり仕事熱心じゃないタイプらしい。

 人数確認もかなり適当で男女で分けるような丁寧な数え方をしてなかった。

「えっと1、2……10。…乗ってくれ」と、投げやりな感じだった。

 確かに人数は合っている。

 ベゼック教官がいなくなって、セーベが入ったからな。

 セーベには一応御者にバレないよう耳と尻尾を幻影魔法で隠しておいた。

 にしても……はぁー、説明しなくてもいいのは助かるが…いかんせん揺れるのがなぁ。


 くぁ…眠気がまた…

 それにしてもロクシュの里の別れは和やかだったなぁ…皆が貯めていた栗の実だったり様々な木の実を一人づつ渡して…

 さすがに村全員では無かったが、「頑張ってね」とか「また帰ってくるんでしょ」とか柔らかな感じだった。

 セーベは遺伝子障害のアルビノのために体毛が生まれつき真っ白だ。

 そのせいで目立ったんだろう。

 おもむろに避けている雰囲気の奴は少なからず、いた。

 それでもセーベを可愛がっていた人もいたみたいだ。

 アハタのおばさんとかその最たる例だな。

 だから、あの里はいつまでもセーベとテーベの故郷なのだ。


 最後は笑って見送ってくれた。

 一部セーベやテーベの名じゃなくて、ぷりんコールだったけども。


 コジベ村長には「くれぐれも娘を頼む。もちろん二人ともな。それと…妻を…」と。

 村長の目には涙が浮かんでいたように思う。


 すまないと思う気持ちはあるが、彼女が選択したことだ。

 オレにはどうすることもできねぇ。

 神を疑いながらも、神に連なるものに身をおき、己の決断を覚悟を引き出したのは彼女リテラなのだから。


 だけど、その覚悟は認めたい。

 そのためにはリテラを元の状態に戻す薬か魔法を探しだそう。

 セーベたちの旅の理由の一つはそれだから。


 オレはその手伝いをこなしたい。

 現時点で確実だと思う方法は、オレの特集スキル【解答解説(アン)】のデータベースを増やすことだ。

 現在のアンのデータベースはおそらくオレ自身と六樹タリアの2つだと思う。

 オレの前世の記憶の深いところからでもリテラを治す方法は見つからなかったということは外部からその答えを探し出すことしか出来ない。

 その外部の情報を入れる方法で効率が良さそうなのは、六樹タリア以外の神に連なる聖なる柱──めんどくさいから神っぽい生き物で─“神生柱(しんせいちゅう)”と名付けよう──を探しだして受けとるのがいいだろう。


 ということで一つ目の目的地は南西、アンセビメル神国にいる三亀という神生柱に、けってー。


 オレが考え事をしつつ、テーベが騒ぎつかれて来た頃、馬車は森に一番近い村に()()()()戻ってきた。


 各々馬車に揺られ凝った肩を揉みほぐすものがいたり、伸びをしたり腰を叩くものがいたりと、体を解きほぐす。

 馬車に乗りなれていないとどうしてもしんどいのだ。

 特にオレは……()()()()というのはそういうことだ。

 車という超人類技術の粋を凝らしたものに乗った経験があるとマジで…ホントに辛いから!!

 ただの木製の幌の付いた荷車は…出来ることならもう乗りたくない。

 ケツがいたい。


 閑話休題─。

 ここによるのはたった2日振りなのに、随分久しぶりな気がする。

 この2日、濃い時間を過ごしたからな…


 ここの村では森に入る前の最終調整をしたからベゼック教官のことを知ってる人が幾人かいた。

 その人たちには嘘をつくことにした。

 彼は森にいる魔物を間引きしてから帰るためまだ森にいる、と。

 なぜこんな嘘をついたかと言えば、ここの村は森にかなり近い。

 教官が殺されるような魔物がいたと言うと途轍も無いパニックを起こす可能性があった。

 教官は腕利きの冒険者だったから。

 あの人が間引いてくれるなら安心だと村の人たちが言う顔がとても胸に刺さった。

 心苦しいが、嘘をつくしかなかった。


 この村でオレは約束をしていたのに。

 クレハーロに帰ったら美味しいものをたくさん作って食べさせてあげるという約束を。

 あの時はこんなことになるとも思わず、あー大変なことを約束してしまったと思ったものだったのに。


 虚しい。

 オレはこれから幾度も別れを繰り返すのだろう。

 そのたびに嘘をつくのかもしれない。

 約束を繰り返し、繰り返した分だけ虚しさが増していく。

 きっと苦しいこと、辛いこと、悲しいことが積もり重なっていくことだろう。

 その分だけの別れがある。

 そんな分からない未来を空想し、吐いた息は5月を過ぎようとしているのに白い雲を作った。


リア充爆ぜろ。

クリスマス小話書こうかと思ったけどガルゥシュ、リア充じゃんと思ってムカついたので止めました。どうも作者です。


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