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本当にありがとうございます!拙すぎる物語をこんなに読んでくださって…ありがとうございます。
~男ならぁぁっ!~
☆☆
これはガルゥシュ・テレイゲルがゼンエスたち特待生男子と仲良くなり始めた冒険者学校初期のお話。
思春期に入り始めた男子のお話。
☆☆
事の始まりは単純かつ不純だった。
「よし! 女子寮潜り込もうぜッ!」
「は? なにいってんだお前?」
男子たちが集まる食堂でクラメ・ベーズのバカが何かほざきやがった。
まだ出会って数日だがもう分かった。こいつはバカだ。
よりにもよって女子寮に潜り込もうなど…オレ一人なら出来なくもないが…
「だからぁ! 風呂覗きに行こうぜって話だよ」
「バカか、そんなこと…」
「やろうじゃないか、これは楽しそうだ」
他の男子たちに聴かれないようにヒソヒソ声にして顔を寄せ会うバカども。
ゼンまで頭でも沸いたのか賛同を示すし。
そもそもオレはガキの裸を見ても欲情しないんだよ…オレを参加させたいなら巨乳美女でも連れてこいってんだ。
「はぁ、オレは参加しないぞ」
「何でだよ!? 絶対ばれねぇって! セントが調べあげたルートだからな!」
「……どんなことでも万全を期すべき」
「いいねっ! 楽しくなってきたね」
なんでセントまでやりたがってんだっ?コイツら揃いも揃って思春期か…
「とにかく参加しろよ、ガルゥシュ。チヌネアの胸が見れるチャンスだぞ?」
「うっ、なんて汚い切り札だ」
そんなカードを出されたら参加せざるをえないじゃねぇか。ロリ巨乳というパワーワードの体現者だからな…チヌネアは…
「チッ、危なくなったら躊躇なく逃げるからな」
「よっし、ガルゥシュも参加決定な」
はぁ、乗ってしまったものは仕方ない。そういえばアイツがいないが。
「ピタシーナは?」
「あぁ、アイツは俺らを狙ってるから興味ないだろうと思ってな?」
あ、そういうことか…アイツがゲイなのかどうかは知らないが。バイセクシャルかも知れないけど。
「それに、目立つだろう?」
「なるほどな…」
アイツはガタイが良すぎるからな…確かに目立つだろうな。
「とにかく、決行は明日だッ!」
☆☆
男子寮と女子寮は目と鼻の先だ。中庭は共有場所だが、風呂は別々だ。女子は露天風呂。男子は屋内だ。
オレたちの男子寮から少し離れている風呂場。
そこまでの道には魔力感知警報装置が設置されているというのがセントからの情報だ。過去、何人もの命知らずがそこで捕まったことも。
しかし、珍しく自信ありげにセントは胸を張ってバレナイであろう方法を示した。
そう、逆に全く魔法を使わずに魔力を封じて忍び込む方法だ。
いくら魔力感知警報装置といっても感知出来るのは魔法が打てるくらいの魔力だ。漏れ出る程度の微弱な魔力を感知出来ないらしい。
ということで、あっさりと湯気が立ち上るのが目で見えるほどに接近出来た。
興奮からか、オレたちはほとんど言葉を交わすことなく静かに静かに忍び寄っていく。
誰かの足元からジャリッ という砂の音が。
その瞬間に示し合わせたかのようにピタリと止まる。そして、数秒後に動き始める。
「やっぱチヌネアの胸はでっかいなぁー!!」
ビクンッというかのように全員の体がはね上がり、鼓動が張り裂けそうになる。
こんなことを言うのはエミッタ・レビスしかいない。
声が普通に聞こえるところまで来た、その事がオレたちの鼓動を速めていく。
この壁を隔てた先に桃源郷があるのだ…
男たるものここまで来て引き下がるとはどういうことかッ!
「いくぞっ…」
先導をきってしまうほどにオレの胸の内は熱く燃え、このシチュエーションを楽しんでいた。
何も言わずともオレたちの心は紛れもなくひとつであった。
「こ、ここに穴がある、木の隙間が…」
クラメが震える声で木の柵に空いた穴を指差す。柵はかなり高く覗く為に登るのは無理そうだ。
結局全員がゆっくりと音を立てないようにその小さな穴に近付いていく。
「ところでさぁ、あんたたちなら誰を選ぶ?」
またもや皆の足が止まり、耳をすませる。聞こえるのはエミッタの声と水の流れる音だ。
「私? 私はねぇー」
ずっとエミッタの話を聞いているわけにもいかない、と思ったオレは思いきって穴を覗く。
湯気でなかなか見えづらいが確かに特待生女子は皆いるようだ。
だが、詳しいところまで見えないッ!
「お、おい、ガルゥシュ変わってくれ」
肩を強く捕まれて没頭から引き戻された。
結局どれだけ目を凝らしても胸のポッチすら見えなかった。
それはクラメもゼンもセントもそうだったようで…
「くそっ! 誰一人見えないじゃねぇか」
「仕方ない、諦めて帰ろうぜ」
「…いや、まだ手はある。俺は諦めない」
オレは全員見れなかった時点で普通に諦めた。よくよく考えたらオレの精神年齢はとっくに思春期越えてるんだ。そんなガキ見たって仕方ない。
そう思って言った言葉だった。
血走った目で拳を握り締めたクラメが…拳に魔力を集め始めた。
「ば、バカやろッ!」
「クラメ、それはダメだよっ」
「あんな謎の屈折光と湯気は消えてなくなればいいんだッ!!」
完全にイカれちまった…いや、確かにオレもあのピンポイントで隠される光と湯気にイライラしていた。
だが、それをすればバレるっ!
「うぉぉ! 『風よ風よ! 渦巻き走れ! 彼のものを吹き飛ばせ! 包み吹き散らせ! [風散]!」
クラメの手の中でかなりの魔力が薄い緑をまとって収束される。
「どりゃぁああ!」
オレが一瞬ボケッ としていたらクラメが魔法を柵の奥に打ち込んだ。
柵の奥で涼やかな風が舞った。湯気が散らされていくのが分かる。
だが、これでオレたちはお縄にされる。はずなんだが?
「お? 警報がならないぞ?」
「そりゃそうよ」
えっ? オレたちの頭上からさっきも聞いた声が…
「え、エミッタ!」
「警報装置はチヌネアとクレールが止めにいってくれた。にしてもバカだねぇーあんたら、普通に声聞こえてたっつーの」
「グッ……」
柵から乗り出してオレたちの愚行を諭すエミッタ。
身体強化魔法を使えば柵を登ることは容易だし、体重が軽ければ柵が壊れることもない。
「んしょ、と。ガルゥ…ダメだよー? 私は…いい……ンン゛。他の子はダメ! 覗くのはダメ!」
かわいい声を響かせてタオルに身を包んだソフィが柵の上に表れる。ここでも若干の謎の光がオレたちの視線を遮る。
「そ、ソフィ! ち、違うんだ、オレはコイツらがバカなことをしないか監視として…」
「何言ってんだ! ガルゥシュが一番最初に穴を覗きこんだだろうが!」
「はぁ!? ち、ちげぇし」
「…まぁ結局、どの方も覗きに来たんですよね?」
オレは必死に弁明しようとしたが、柵からピクピク動くケモ耳が結論を出した。
「め、メルネーちゃん! あぁ水に濡れたその耳はなんて美しいんだ…」
こんな危機的状況になっても、ゼンのケモナー癖は全開のようだ。
「ま、とにかく出ていけっちゅうことやな。ソフィとクレールの好意を無駄にすんなよー?」
「エミッタちゃん!」
何故か関西訛りで話始めたエミッタがソフィとクレールの名前を出す。
そしてソフィが慌てたようにエミッタの口を塞ごうとする。
「うわわっ、危ないってソフィ! あーもう! お前ら!! 早く帰れって!」
「うっ! ご、ゴメン悪かった! この借りはいつか返す! ゼン、クラメ、セント帰るぞっ!!」
柵の上で戯れ合うようにした二人だが、エミッタとメルネーが手を払うようにシッシッとする。
それで呆けてたオレたちは逃げるように男子寮に帰った。どうも皆興奮でほとんど眠れなかったみたいだが。
こうしてオレたちは女子の恩によって学校に処罰されることは無かったが、ピタシーナと濃密な絡みを要求されそうになったのはここだけの話。
結局、スイーツを財布が空になるまで奢らされた。
ま、久しぶりに心が踊るイベントだったから良しとするがな。
いかがだったでしょうか。
改めましてありがとうございます。ほんの興味本意で書き始めた物語ですが、皆さんに読んでいただき、感謝の気持ちが絶えません。
物語はまだまだ続く予定なので、これからもどうぞ宜しくお願い致します。




