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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第五章 大樹の祭
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69 空腹

 

 ソフィの声を聴いて皆もオレが戻ってきたことを知ったのだろう。

 数人こちらに小走りで駆けてくる。

 感知力が高いのはソフィとメルネーちゃんくらいなもんだから皆、今ようやく気づいたっぽいな。

 まぁわざわざメルネーちゃんはオレに寄ってくるタイプじゃ無いんだけど。


 あ~体が重い、疲労という状態はステータス的にも精神的にも低下効果があるみたいだ。

 少し頭の働きも遅いかもしれない。んー、さすがにそれは言い過ぎか。

 眠気はほとんど無いんだけどなー。


「よかった、問題は解決したのかい?」

「突然走っていくからビックリしたわよぉ」


 ゼンとピタシーナちゃんがホッとした顔をしながら近づいてくる。

 さっき纏っていたオーラはルーメンに回収されていないのか未だに纏ったままだ。


「あ、ガルゥ。ちょっと私まだ手伝いあるから戻るね?」

「ん、分かったよ。オレも後で顔出すよ」


 二人が来た代わりにソフィが広場に戻るらしい。


「あっ、ソフィちゃん」

「ピタシーナさん、ゼンさん、ガルゥと一緒でいいのでゆっくり広場に来てくださいね」


 オレ以外の男子にはソフィって丁寧な応対をするんだよなぁ…まだ男性恐怖症的なところが有るんだろうか? 昔より大人になったってことかな。


 ソフィはオレたちに軽く手を振ってから小走りで広場に戻っていった。


「ところでガルゥシュ、何があったんだい? あれだけ焦って」

 

 そういえば全然説明してないもんなぁ、わりと危機的状況だったからさ。


「悪い、悪い。ちょっと光の精霊が存在消滅しそうでさぁ~」

「はい?」


 どうしたんだよ、口ポッカリ開けて?

 オレ、非常に簡潔な説明しましたよ今。

 何? 説明するなら30字以上で とか言うつもりですか?


「あ~もう、余計に分かりづらいよ。君の話は…」

「まぁ、いつものことでしょーゼンちゃん。ガルゥちゃんが説明を省くのはぁ~」


 ぐっ、そんなに省いているのか?

 知らなかった。自分が説明ベタだなんて。


「分かった分かった! ごめんって、もうちょっと話すから。

 え~と、さっきも見せたと思うけど、この…精霊。ルーメンっていう名前なんだけど、こいつがお前たちに力を渡した っていうのは説明したよな?未だに纏ったままみたいだけど…」

「うん、そうなんだよ。これのお陰だろうけど凄く体が軽くてね…」

「私達が助かったのはそのルーメンちゃんのお陰なのよねぇ、会ってお話してみたいわぁ」


 そうか、姿はオレが幻影魔法で見せられるけど、音を出すことは出来ないんだよなぁ。


「まぁ、そのルーメンがさ、お前らに渡しすぎたんだよ。そのせいでアイツは自分の存在エネルギーまで使いやがって消えかけたのを…感知したんだ」


 アンのことを話すとまた説明を求められそうだから誤魔化すとして…なかなか巧いこと説明できたんじゃね?


「ふむ。なるほどね、だいたい話は分かったよ」

「う~ん、そこまでしてくれたのねぇ、ルーメンちゃんってば。私達もだけどガルゥちゃんも、ちゃんと感謝しないとダメねぇ~」

「そうだよなー。直接的ではないとしてもオレを救おうとしてくれたわけだしな」


 そうなんだよ、アイツはコイツらにオレの危機を伝えてくれたんだった。

 直接的に救ってくれたのはアンや、ゼンたちだから。

 かといってルーメンだけじゃリテラの能力を潰すことは出来ねぇからいい判断だったんだろう。


「そういえば、そのオーラはずっと付いたまんまなのか? 夜明るすぎて眠れないかもしれんぞ?」


 冗談混じりに疑問を述べる。

 全身を眺めるゼンとピタシーナちゃん。一通り眺め終えた後二人とも腕を組んで小首を傾げる。

 わからないんかい…


「自然に消えるならそれでいいが…正直直視しずらい。ルーメンに聞くのが一番か。

 そんなことより、やらなきゃいけないのはリテラに話を訊くことなんだよなぁ」

「リテラならまだ目覚めてはいないぞ」

「一応、セーベちゃんに見守られてるわぁ」


 頭上を眺めてボソッと言った言葉に反応する二人。

 一人言に反応してくれるとは。

 それにしても、リテラの奴はいつ目覚めるだろうか。今日中じゃなきゃ明日にはクレハーロに戻らないといけないから訊ねる時間がなくなっちまう。


「しゃあねぇ、とりあえず門出祭は出来そうなんだろ?」

「あぁ、出来ると思うよ。ちょっとしたゴタゴタはあったけどね」

「先に開催しちゃうのねぇ?」


 そうした方が無駄がないか。

 かといってリテラってロクシュタリアの巫女とかいうこの里での地位があるわけだし、門出祭主役のセーベの母だぞ?

 あ、やべ。その母のリテラにもセーベの旅立ち伝えてないぞ。

 まぁいい、その役は悔しいけれど夫たるコジベ村長に任せよう。


「そうしよう。いつ目覚めるかは不明だし、腹へった…」


 そうなんだよ、オラァ腹が減ったんだよ。塩っぱい物が食べたい。


「ガルゥシュ、もしかして朝ごはん食べてないのかい?」

「うん、食い物は作ったけど…食べてない。あっ、忘れてた」


 ゼンの疑問に答えてたら思い出した。

 普通にオレ、バケツプリン凍らせたままじゃないか。

 プリンの冷凍ってどうなるんだ? 固まってシャーベット状になるのかね?


「どうしたのぉガルゥちゃん?」

「いや、ちょっと作ったものがヤバいことになってるかもしれないなーと思って」

「また何か作ったのかい? 楽しみだな」


 遠回しにオレにプレッシャーを与えようとしているのか、ゼンよ。

 確かに今回はかなり自信作だからいいんだけどさぁ、不味かったときヤバいじゃん。


「ゼンお前……まぁいいや、用事もできたし広場に行こう。手伝った方がいいこともあるんだろうしさ」

「そうだね」

「そうねぇ」


 二人とも頷いてくれたので立ち話から歩きだす。


 広場に近づくにつれ、活気のある喧騒と肉の焼ける芳ばしい香りが強く感じられる。

 祭りの準備は整ってきているようだ。


 ロクシュタリアの樹がそれを喜ぶかのように枝葉を揺らした。

少年ジャンプのHUNTER×HUNTER連載再開するのは嬉しいけど、左門くんはサモナーが終わってかなり落ちこんでおります……面白かったなぁー

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