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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第五章 大樹の祭
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67 吸収

 

 ルーメンも見つかったことだしロクシュの里に帰ろう。

 帰るのはあれだけ大きな樹があれば迷わず帰れる。


 ハァ……これからすること多すぎじゃね?

 まずひとつ、ルーメンの復活 と言っていいのかわからんがこれだろ。

 次に広場で寝ているであろう皆を起こす。

 そして、門出祭。

 んで重要なリテラへの事情聴取。

 最後にクレハーロへ戻って教官が殺されたことの報告だ。

 チッ胸くそ悪い。


 吸血鬼ゴルチェラードを思い出すとフツフツと怒りが沸き上がってくる。

 魔力が少し漏れ出すくらいには憎しみが制御出来ない。


『うぅ、ヤダ…』

「!?ルーメン大丈夫か!」

『気持ち悪い…止めて…』


 ルーメンが意識を取り戻したがどこか様子がおかしい。

 もしかして未だに収まらない憎しみのこもった魔力のせいか?

 その可能性が高い。

 鎮まれ、冷静になれ。力の弱まっているルーメンには今のオレの魔力は害になる。

 ゆっくりと気持ちを落ち着ける。そうするとじわじわとだが漏れ出た魔力が体に戻ってきた。

 おそらくオレの眉根のシワもましになったと思う。


「すまない、ルーメン」

『…ん、ダイジョブ……』


 目を開けることはないが、ギリギリオレの耳でも聴こえる声量で言う。

 これは本格的に衰弱してるな。


「すぐ里に連れていくからな、待ってろよ」

『……う、ん』


 反応が遅い…、急ごう。


 再び壊された門を通り抜ける。

 一応アイツらにも事情を訊かないといけないな。

 ま、オレを助けるために急いでたんだろうけど。何か照れる…


 不意に料理の香ばしい匂いが鼻に入る。

 煮炊きをしているということだろう。

 なら、皆は今起きているはず。もしかしたらゼンたちが起こしてくれたのかもしれないけど、正直助かる。

 オレだけで全てを請け負うことは無理だから。

 前世のオレなら、オレ抜きで事態が終息したらいいなぁ とか考えるだろうなぁ。

 そう思うと少しだけどこの体の意思、要するにオレじゃない何かの意思がが入ってきているような感覚があったことがあるような気がする。

 遺伝子が交じったからオレの思考が変わったのかも知れないが、何故かあまりめんどくさいと感じることが少ない気がする。


 ま、今はいいか。

 煮炊きの匂いがするなら広場では特に問題は起こってない可能性が高いな。

 なら先にルーメンをどうにかするか。

 確かロクシュタリアの樹からエネルギー吸収だっけか。

 クローネ母さんのお腹の中でへその緒を通じて得たスキルがこんなとこで役に立つとは って感じだな。


 ロクシュタリアの樹は紛れもなく大樹だ。


 そんな感想が近くにいけばいくほど感じる。

 なんやかんやで昨日は暗くなってきた頃にセーベの家に来たからロクシュタリアの樹の全容はあまり見れていない。

 今、見上げてみると青々とした葉が大きく広がり日の光を受け止めている。

 その日の光がロクシュタリアの中で純粋な光エネルギーにでも濾過のように染み込んでいるのだろう。

 もちろん葉緑体がいて光合成とかしてるんだろうけど、なんといってもここは異世界。

 魔法のある世界だ。地球の科学では解明出来ないこともあるだろう。

 現に地球ではあり得ないぐらいデカイからな、この樹は。


 さて、そんな不思議な樹のエネルギーをちょちょっと吸わさせてもらいましょうかね。

 ゴツッとしているように見えて意外とスベスベしている樹皮に触れる。少し暖かい。


 エネルギー吸収のスキル発動を意識する。

 その途端に莫大な純粋光エネルギーが突き抜けてくる。

 エネルギー吸収のスキルのLvが2 と低いせいか相当な量のエネルギーが吸収しきれず霧散してしまう。


 《【エネルギー吸収】がLv2からLv3に上昇しました》


 少しは吸収する量も増えたけど相変わらず吸収しきれない。

 それに、エネルギーが強大過ぎて胃がもたれるように感じる。

 オレの体には過ぎたる力なのかも知れない。


 《解析完了。マスター、エネルギー吸収を終了してください》


 お、もういいのか。

 それにしても胸焼けがひどい。厳格には胸焼けと胃もたれは違うものだけど、今のオレの上半身全体で鈍痛がある。


 《解析を基にマスターの光属性魔力に変換します。激痛に備えてください》


 アン、そんなことまでやってくれてたのか。

 それは感謝するとして、激痛に備えてください って──


「いづっ!!いっでぇーー!!」


 急に全身の血管が張り裂けるような痛み、目がチカチカする。

 これは激痛ですわ。


 《成功しました。これからはマスター自身の魔力で代用可能です》


 あ、あはは……そりゃーよかった……


「じゃ、流し込むぞ」

『……ん』


 色も存在も薄くなってしまったルーメンが少しだけ口を動かす。

 ギリギリだったかな。

 ま、オレも激痛まで背負ったんだ。

 これで復活しなかったら怒るぞ、ルーメン!


「ほら、元気なお前を見せてみろ!」


 右手で得たエネルギーを左手で包んでるルーメンに流す。

 一瞬彼女の体が跳ねるようにのけぞったが、問題ないだろう。

 眩い光に閃光耐性を持っているにも関わらず目を背ける。


 これで元のルーメンに戻ってくれよ。

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