66 日射し
めっちゃ忙しいんですけど!
遅れてすみません!
「あ~くそっ!何処だルーメンー!!返事をしやがれぇ!」
里の壊れた門をダッシュで駆け抜け、緑広がる草原を走りながら大声をあげてルーメンを探す。
壊れた門は外側から強引に開けられていたが今はそれどころじゃない。
どうせあれだろピタシーナちゃんが殴ってぶっ壊したとかだろ?
自分で言っておきながらあれだけど…めっちゃ有り得る。
さて、光の妖精であるルーメンはおよそ体長30cmと、とても小さいので見つけづらい。
せめて名前通りに光っていたら良いが、そんなのはただの願望でしかない。
アイツの光っぽいところといえば、飛ぶときに背に生えた羽から出る鱗粉のような光の破片だけだ。
かといって今はその破片を頼りにすることは出来ないだろう。
存在値が減少するほど力を使い果たしているのだから。
「ルーメン!どこだー!」
今のところオレに出来るのは大声を張り上げ聴覚感知と気配感知を最大限敏感にすることだけだ。
だがいくら経っても引っ掛かる気配がない。
こっちの方向じゃないのか?
気が急いて脚が引っ掛かりそうになる。
ダメだ、こんなことじゃどれだけ走っても見つけられない…
落ち着こう、一度深呼吸をしよう。
「……スーハァー……」
…よし、まだマシか。少し感知範囲が広がったような気がする。
チッ、雲の切れ間から指してくる日射しが眩しい。
…?あ。
そこでふとオレは思い出した。
あの冒険者学校のフンバ・デロウカン校長の長々とした話に出てきた光の性質を。そして闇の性質を。
光と闇はその性質ゆえに相反する。反発しあい、吸収しあう。
その吸収しあう作用が今、役に立つかもしれない。
『闇に抱かれしものは暗黒。暗闇が欲すものは光。闇よ光の権化を捜し出せ![光喰]』
未だにLv3 な闇属性魔法を詠唱して発動する。
ホワッと胸から黒い蟲のようなものが滲み出る。
一番オレに闇のイメージとして近い強いあの黒光りする生物だと思う。
その蟲がまさにカサカサと動き始め周囲を一周してから一定の方向に飛んで移動する。
おそらくルーメンがいる方向を察知したのだろう。
正直気持ち悪い。キモい、吐きそう。
だけど……
メチャクチャ優秀だった。
《闇蟲が光の精霊を補足、権限を取り込みました。その時点において闇が光とぶつかり合い破壊属性蟲が生まれました》
はい?権限を取り込んだ?
そんなこと詠唱の文言に盛り込んでないぞ!?
まぁそんなことよりも…破壊属性?
名前からしてヤバイ気しかしない、使いたくねぇし見たくもない。
いやいや今はそれどころじゃないぞ!
「おい!ルーメン!!大丈夫か!」
若干伸びてきているであろう草の中ルーメンは横たわっていた。
闇蟲がルーメンの周りでゴソゴソと動く。
キモいがオレの出した魔力蟲、我慢してゆっくりルーメンを抱き起こす。
小さいから水を掬うような抱き抱え方になってしまうが……そこは勘弁してほしい。
精霊であるから呼吸という概念があるのか分からない。
ただ、力を失いつつあるのは理解できる。見た目にも顔が青白いし…。
さて、どうすればいい。
こういう時は勿論~!アンせんせ~!
《頼りにされていることはわかりますが少々…いえ、止めておきましょう。解答としてはロクシュタリアの樹のエネルギー吸収が必要です》
ふむ、もしかしてあれか?
『ワタシの力の源なんだよねー、ロクシュタリアちゃんって。あのこから光分けてもらってんのよ』ってやつ。
取り合えずロクシュの里に行くか。
それだけの時間はあるかな。
歩いて帰るつもりはないからまぁ大丈夫だろ。
そこまで切羽詰まった状況では無さそうだ。オレがルーメンに触れてから少しだが顔色は良くなったと思うから。
ふぅ、これを最後に問題が起きなければいいなぁ……
この2日間、色々起こりすぎ……解決した問題は何一つとして無いのがため息つきたくなる。
確認事項だらけだ。
ネットサーフィンだらけの日々よりかは……生きている感じはするが……




