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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第五章 大樹の祭
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65 曇り空

 

 太陽が高く上る昼の刻──


 《精霊の存在値が減少し、存在維持に回すエネルギー不足により消滅することが予測されます》


 次から次へと解決しなければいけない問題が湧いてくる、たった一日のことなのに既に何十日も経過したかのような疲労感。

 アンに聞いた情報からルーメンの存在が消えかかっていることを知ったオレはえもいわれぬ焦燥感に包まれていた。


 出会ってから24時間もたっていないから当たり前かもしれんが、オレはルーメンに悪感情は抱いていない。むしろ憎めないやつとして割りと気に入ってる。

 そんなやつの存在が消えると言うのは嬉しくない。

 本来はリテラに眠らされているであろうリス族やソフィたちを起こさなければいけないが、ルーメンの方が急を要するだろう。


「チィ!ゼン、クラメ、フー、ピタシーナ、リテラを広場に連れてってくれ。眠らされてると思うから全員叩き起こせ!」

「ど、どうした!?緊急事態か!?」

「そんな感じだ!心配すんな!問題ないから!」


 説明はあとだ。どうせ彼らに出来ることはほとんどないし。

 ろくに状況がわからないだろうから、さっさとオレがアイツを回収してこればなんとかなるだろ。


「空が曇ってきたな……、止めてくれよ不吉だから……」


 思わず口をついて出た言葉は自らの心に不安をもたげかける。

 その不安を振り払うようにオレは足に力を込めて地面を蹴った。


 ☆☆


 少し時間は遡る。

 ガルゥシュが目覚め、リテラが(ねむ)った時に。


「っは!?この感じ……またなのね、お母さん…」


 幾度となく味わった微睡(まどろ)み、それを思いだし少しうんざりとするセーベ。

 いつもリテラの能力にかかった後はこの微睡みから始まる。

 魔物に四肢を裂かれる夢、人族に捕まって奴隷にされる夢、ありとあらゆる悪夢を見せられた。中でも一番辛かったのは目の前でリテラとコジベが山賊らしき男たちに惨殺される夢。もちろん悪夢だけではなく、幸せな夢も見た。

 全てがリテラの能力によって作り出された夢だが、起きたときにはリテラが優しく抱いてくれていた。微睡みのなかで見る母の顔はそれはそれは慈愛に満ちていた。

 そういうところからセーベはリテラのことを愛しているのだ。


 セーベは部屋で荷造りしていた時に眠りについたので少し物が散らばっていた。

 ため息をひとつ吐き、頬を軽く叩いてから素早く荷造りを再開した。

 願わくは母が能力を使うことを自重してほしい と考えながら─



 彼女は慣れているためにそれだけで済んだ。しかし、簡単に立ち直れなかったものがいた。

 広場で眠りについた者たちである


「ふわぁぁあ、…えっ!?寝てた!やっべ!ちょ、チヌネア!起きて!」

「……うるさい、エミッタ、なに?」


 暖かな日差しの下、スヤスヤと寝てたらしいと真っ先に気づいたのはエミッタであった。両腕をあげて伸びをしながら欠伸をしてから周りを見渡して隣で縮こまって寝ていたチヌネアを叩いて起こす。

 エミッタは普段から目覚めが早い。逆にチヌネアは遅く、そして寝起きの機嫌も悪いのであった。


「料理焦げちゃってるんだよー!皆起こさないと!」

「…あー……そうね、はぁ」


 火はすでに燃え尽きているが火加減が出来なかったために焦げ付いてしまったようだ。木のお玉で鍋の底を擦るようにしてエミッタが慌てる。

 癖のため息をつくチヌネアは一通り周りを見て目を擦る。めんどくさいという空気を纏わせながら。

 半眼でチヌネアを睨むがめんどくさがり屋なのはこれまでの付き合いで分かりきっていることだと諦める。


「んもぉー!!いいから!皆起こすよ!」

「……ハイハイ」


 大声を出すがいつもどおり適当にあしらわれるエミッタ。

 その声によって近くで寝ていた者たちもゆっくりと起き出す。


 それからの広場は大慌てである。使える料理は少なくなってしまったために一から作らなければならない。

 だがそれには材料があまりなく、一度集まりレシピの相談をしなくてはならないようだ。


「おっ!起きてるじゃねぇか!よかった」


 そう声を出したのは金髪の少年だった。両手に狩りの荷物を持っているようだ。

 これで色々作れる、そう思ってリス族達は安堵するのだった。


 少なくとも門出祭は問題なく行えるだろう。

 眠りによって問題はあったが夢の間の攻防を知ることなく良かったのかもしれない。

 そう思い彼らはつかれた顔を見せないように気を付けるのであった。

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