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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第四章 因果の通り夢
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58 希望の光

『ルーメンちゃんのかっこいいとこ見ててよね♪』

 

 芽吹く芽吹く、何処までも何処までも、ただ一本の細い茎を持った小さな双葉が…


 ──光に──友に──


 ☆☆


 青い空、(またた)くように飛翔する一筋(ひとすじ)の光。


『いつものリッちゃんの力の使い方じゃなかった…なんか怖かった…ヒィーって感じ!』


 高速で飛翔しながらも器用にイヤイヤと首を振る。


『リッちゃんの力は里の範囲は全部いけるってこないだ言ってたからセーベも眠っちゃってるか~…ヤベ…誰もいないんじゃないの…』


 ブツブツと(つぶや)く光の精霊は、呟きが小さくなっていくにつれ、飛ぶスピードを急激に減衰(げんすい)させていく。

 

『ンー本当にどうしよ…頼る相手は~あの子たちかなぁ…しかいないよね…ガルっちの友達…』


 一部の人にしか見えない小さな精霊は頭を抱えて(うめ)く。


『クゥ~、ガルっちがいれば幻影魔法で私の(うるわ)しい姿を見せることが出来るのにィ…いや!やってみせる!女は度胸(どきょう)!』


 ここで話中(わちゅう)の少年がいれば『度胸は関係ねぇだろ』と言うだろう。


 ☆☆


 ザクザクと草を踏みしめる音が幾重(いくえ)にも聴こえる。

 少し風に湿り気が出てきたのを感じたのか金髪の曲刀使いが5の月にそぐわない身震いを起こす。


「お、門が見えてきたぞ…っていうかなんか()な気配しねぇ?」


 しかし、反応するものはいない。彼よりも強く他の者はこの気配をビシビシと感じ、生唾(なまつば)を飲み込むなど必死にこのプレッシャーに()えようとしていたからだ。


 その誰もが自らの武器に手を()えてすぐ構えられるようしていた。


「チッ…」


 曲刀使いの少年が一つ舌打ちをして、自分も父の形見である曲刀に手を添えた。


 ☆☆


『いた!』


 精霊は少年たちを探すために飛んでいた上空から一気に急降下した。その姿は可憐(かれん)だが又、勇壮(ゆうそう)でもあった。


『ちょっとまってーー!』


 大声で叫ぶ、が、彼らの耳に届くことはない。歩みも止めることはない。


『んぅ!くっそぉー!何で聞こえないんよ!どうしたら!…』


 泣き出しそうな顔をしながら絶叫(ぜっきょう)(とどろ)かせる。しかし、数瞬(すうしゅん)(ひとみ)に溜まった涙を(まばた)きで振り払い、キッと前を向く。


『いや!私がやるんだ!』


 精霊は彼らの目に映る場所に浮く。そして…


『うっりゃぁああああああああ!!』


 腰に手を添え精霊は自らの小さな体全体に力を行き渡らせる。

 (ほとばし)る光の閃光は大地を()がすほどに視界を白く染める。


 ☆☆


 突然視界を覆った発光に四人は思わず武器を手に、剣を抜いた。


 だが、(おさ)まった光の奔流(ほんりゅう)は彼らの眼前(がんぜん)に何も変わらない景色を映すのみ。

 いや、何か異なるところが…と彼らが考えたとき一人の少年が気づいた。


「これは…?僕の体が…?」


 上品な少年が槍を片手に自分の体を眺める、そして自分の体に暖かな力が満ちていることを確信した。

 今、彼らの体には強化魔法にも似た薄いオーラのようなものが(にじ)み出る現象が起こっている。


「おいおい…なんだよこれ…」

「なぁにこれ…」

「……?!」


 他の三人がそれぞれ異なった反応を示す。一人は両の手のひらを見、一人は手を強く握り締め、一人は目を強く閉じた。


 彼らに力を与えたあの精霊は彼らには気づかれることなく、そっと地面に横たわった…

光の精霊は自らの役割を果たす

少年の友たちへ、少年を救うための力を渡す


その力から精霊の意思が彼らに伝わる

友として──すべきことを──


次回 59 邂逅かいこう

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