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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第四章 因果の通り夢
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50 収納魔法


「のぉ、お前さんらなんか食べ物もっとらんかいの?」

「はい?」


 突然だなぁ。セーベの話から急に変わった…

 でもなんで食べ物?村長さっき何か食べてたよね?


「まだ食べ足りないんですか?」

「いや、セーベの門出を祝わんといけんじゃろ?

 やはり豪勢にしたいが今年はあまり木の実のストックがなくてのぉ」

「あぁそうでしたか。

 木の実じゃなくてもいいなら…あるにはありますけど…」

「おっ。そうか、リス族は雑食じゃからの、出してくれると有難いの。

 まぁリス族的に木の実が一番好みではあるがの! わいは白樫のドングリが好みだぞ! カッカッカ!」


 別に村長の好みは聞いてねぇよ、むしろセーベの門出なんだからセーベの好みを教えろよ。

 食べ物って肉でもいいんだよな。

 さすがにキマイラ出すのはヤバイかなぁ…噂にならないんだったら出してもいいか。


「じゃあ出すので、外行きますか」

「ん? お前さん荷物あるのか? 他の者が出すんじゃないのか?」


 あっ、忘れてた。オレ野営道具とか置きっぱなしじゃん。

 ケチャップ瓶とか細々とした物は収納魔法で持ってるけど…。

 まぁしゃあない。明日の朝パパッと取りに行こう。


 違うか、村長が言ってるのはどこに持ってんだってことか。

 収納魔法説明すんのめんどくさい…まぁいっか。


「いや、自分が出しますよ。とりあえず外じゃないと出せないですね」


 村長は首を捻っていたが、信じてもらうしかない。

 ソフィは教官の剣を入れた魔法だと分かっているので問題ない。


 そろそろ皆起きてくる時間だと思うんだけど、誰も起きてないかな。太陽は柵を越えて見えるくらいには昇っていたからもう起きてもいいと思うんだけど…

 リス族は朝ごはんなのか、煮炊きの音が聞こえる。煙も少し上がっているようだ。


 オレたちは村長宅から出て、少し広めの場所があったのでそこで立ち止まった。


「ここでいいですかね」

「本当にお前さんがだすんかいの? どうやってするだの? 何も持っておらんではないかの!」

「まぁまぁ。えっとよいしょっ」


 オレは収納魔法を発してキマイラの半分を地面に置いた(落とした)


「ハッ!?はぁぁあああ!?!?」

 

 びっくりしたっ!この叫び、里中に聞こえたんじゃないか!?



 ☆☆


 ざわめきがそこらじゅうで聞こえる。


 何かめっちゃ人が集まってきた、完全に村長の叫び声のせいだな…こりゃ。


「…お前さん、規格外過ぎるの…これはなんじゃ、どこから出てきたんじゃ、聞きたいことが多すぎる…」

「あ~えっとこれ出したのは自分のオリジナル魔法です。このキマイラは森にいたんですよ?」


 嘘は言ってないぞ?ホントだよ。ちょっと省きまくってるけど…


 クレハーロの近くで狩ってたホワイトラビットとか猪っぽいドドファンゴとかも出すか。

 ギルドに売ってもよかったんだけどちょっと売値が安かったしいいかなと思って、腐らないからちょくちょく収納魔法で異空間に入れてたんだよね。


 おっ、あれは。

 総じてリス族はそんなに身長が高くないからピタシーナちゃんがやって来るのは見えた。気配的に男組は全員いるかな。


「お前さん…、こ、このキマイラはやり過ぎじゃの…幻獣と呼ばれるとても珍しい魔物じゃぞ。

 街で売ればどれだけの値がつくか…これは仕舞ってくれ」


 やっぱりそうかな。また今度売ろう。

 じゃあドドファンゴとパニックバード出すか。

 ちなみにパニックバードはダチョウっぽい。敵に攻撃を食らうと大慌てして逃げたり攻撃してきたり様々な行動をとる魔物だ。


「じゃあキマイラは仕舞います。代わりにドドファンゴ出しますね?」

「ま、また何もないところから出てくるのか?」

「そうかもしれませんね?」


 オレから見ると黒い切れ目みたいなのが出てそこから思い描いたものが出てくる感じなんだけど…

 周りから見ると本当に何もないところからヌルンッて出てくるみたいだから気持ち悪いんだろうなぁ…


 まぁ、知ったこっちゃないか。アン頼んだ。


「ホイッ」


 無音でオレと光の精霊にしか見えないらしい“穴”が空中に空き、オレはそこから魔物の死骸を取りだし地面に置いた。


「「「!?!?」」」


 うわぁ~、リス族の皆さん、仰天しすぎて、開いた口が塞がらねぇ状態だわ。目の見開きかたやべぇ…

 オレはドドファンゴ・二体とパニックバード・一体の三体を出した。手持ちの肉として一番大きいから良いかと思ったんだけど。


「ちょ、ちょ、ガルゥシュ」

「よぉ。おはよう。どうしたんだゼン?」


 ゼンのやつがオレの服の袖を引いて小声で話しかけてくるので振り返って朝の挨拶をしてみた。挨拶って大事だよね?


「お、おはよう…じゃなくて! あまりそのオリジナル魔法は人前で使わない方がいい。誰かに利用されるぞ!」

「そうだな。ガルゥシュはあまり深く考えてないが、歴史上そんな魔法を持ったような人はいないぞ」

「……その通りだ…」

「そうねぇ危険だと思うわぁ…」


 おろろ。ゼンだけじゃなく、クラメ、セント、ピタシーナちゃんに言われてしまった…う~ん便利なんだけどな。


「そうだよガルゥ。ガルゥは凄いけどやり過ぎると誰かに目をつけられちゃう…教官を狙った奴みたいに…」


 ソフィ…、そうか、そうだな。今度からはこそこそと使おう。

 悪意を持った誰かに目をつけられたら厄介かもしれないしなぁ。


「ハァー、お前さん、リス族はこの事を見なかったことにする。この力は強大過ぎるからの…」

「えーとすいません、村長。気を使わせちゃったみたいで…」

「まぁよい、食料を恵んでくれたのじゃからの。これで貸し借り無しじゃ。

 よし! 皆の者!! ここで見たことは他言無用じゃ!!」


 ありがたい。口止めになるか分からないけど、排他的な種族だそうだし大丈夫だろ。

 それにしてもこう言うところは村長らしいんだな、コジベ村長って。あんまり村長感を感じてなかったんだけど。


「いい忘れておったが! 我が娘セーベ・リースタはこのガルゥシュ・テレイゲルと共に世界へ旅に出る! まだ我が娘には言っておらんがの。

 しかし! 今日はセーベの門出を祝う祭りを開催する!

 昼から始めるぞ! 調理にかかれ!」


 おおっ! かっこいい! 伊達に村長やってねぇな!


 村長が発した言葉によってリス族はバラバラとそれぞれの業務に別れていった。

 何人かのリス族が魔物三体を持ち上げて持っていく。多分解体をするんだろう。かなり大きいからな。


 オレが狩った魔物だから血抜きはしっかりしている。それだけで味が全然違ったからな。旨い方が良い。

 血が抜ききれてないと物凄く生臭くて血の臭いがして獣臭がすると言う悲惨なことになるからな…


 つーか、オレも忘れてたけどセーベに何も言ってないぞ? 大丈夫かね?

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