47 膝枕
あ…ありのまま今起こっていることを話すぜ!
『オレは 部屋で寝ていると思ったら いつのまにか外で膝枕されていた』
な… 何を言っているのかわからねーと思うが オレも 何をされたのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった…
手を繋ぐだとか見つめ合うだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ
もっと幸せなものの片鱗を味わったぜ……
つまりそういうことだ。わからねーと思うがな。
と、まぁおふざけはこの辺にして。
「あっ、ガルゥ…起きた…?」
ソフィ…可愛すぎる…!
空が白み始めている時にオレは目覚めた。何所と無くいいかおりがする気がする。
下から見るソフィは美しいな。もう少しこの膝枕を味わっていたい…
「大丈夫?気持ち、楽になった?」
あぁ。そうか、オレは昨日精神が病んでたのか。
ソフィは心配してくれたのか。慈愛に満ちた顔をしているな、ソフィ。
そんな慈母の如きソフィのお陰で踏ん切りが着いた感じだ。
「ありがとう、ソフィ。楽になったよ。
忘れはしないだろうけどね…」
「うん。絶対忘れちゃ駄目。
その気持ちを持って前に進まなくちゃ…」
その通りだな。
オレにはこれからもやらなきゃいけないことがある。
ここでソフィに言っておこうか。
「ソフィ、オレはクレハーロに戻ったら冒険者学校を出ようと思う」
「そうなの? …もう、教官がいないから…?」
「それもあるかもしれない…けど、オレは早くこの目で世界を見て回りたい」
あの声に言われたように、そうしたほうがいいと思う。
今ならちゃんと冒険者を出来ると思うしな。オレたちにはそのくらいの実力があると思う。
と言うか、ソフィはいつからオレを膝枕してんだ?
「ねぇソフィはいつからオレを膝枕してくれてるの?」
「えっと…昨日ガルゥが泣き疲れた時くらいかな?」
「そんなに!? 足痛くない?」
オレはそれを聞いたとき名残惜しかったが、飛び起きた。
「大丈夫だよ、途中から[風枕]っていうの使ったから」
「オリジナル?」
オレが聞くと少し照れながらソフィは頷いた。
って、途中はソフィの膝枕してもらってないのね…なんか残念…
「ソフィ、魔力まだあるの? 長時間魔法使ってたんでしょ?」
「たぶん大丈夫だよ? そんなにしんどくないから」
「凄いな! オレは長時間もたせるのは難しいんだよなぁ」
「魔力の節約は頑張ってるもん!」
“もん”カワイイな、オイ。
まぁそれはさておき、オレはフンバ校長に魔力の使う量が多いって言われたっけ。
どうしても魔力が人より多いからいっぱい使っても大丈夫と思っちまうっぽいんだよなぁ…
んで、魔力穴っていうのが、魔法を発動させるときに開くらしいんだけど、魔力を一杯放出してるせいでかなり開いちゃってるらしい。
だからオレの幻影魔法はかなり曖昧な感じになる。
魔力穴は開きが小さいほどコントロールや節約がしやすくなるらしい。
こういうのなんて言うんだっけ…? んーと…
「あれだ、水鉄砲理論!」
「え? どうしたの?」
「いや、魔力の使い方の話。
あの~水鉄砲の穴が小さいほど遠くまで飛ぶっていうのがあるんだけど、魔力を水に見立てると、魔力穴が水鉄砲の穴ね。
ソフィは水はそんなに大量じゃないけど穴が小さくて遠くまで飛ばせる。オレは穴が大きくて水の多さで補ってるような勿体ない使い方してるって話」
「ふーん、そんな考え方があるんだね」
「そうは言ってもソフィも魔力は人よりかなり多いよね?節約方法教えて貰おうかな~?」
「ふふん、私の授業は厳しいよっ!」
「なにぃ!いや!お願いします!ソフィ先生!」
「…プッ、アハハハ!ガルゥ冗談に乗らなくてもいいよぉー」
「アハハ、可笑しかった?」
「アハハ…私がガルゥのそばで…」
ん?あれ?なんか…?んー?
「ソフィ…ちょっと変わった?」
「えっ?そ、そんなこと…」
「そうかなぁ?たくましくなったって言うか…いや、この言い方はよくないか…可憐になったかな?」
あっ、赤くなった…
「なっ、なっ!」
「あはは!本当にソフィは可憐で女性らしくなったよ」
「んー! もうっ!」
ソフィはほっぺを膨らませてオレに抗議した。耳まで真っ赤かで非常に可愛い。
ソフィが可愛すぎて思わず頭をポンポンしてしまった。
「!?」
オレの行動に驚いたのか震えるように仰け反る。
「あっ、ごめん!つい」
「い、いいよ…ガルゥなら…」
えっ!?なにそれ!いいの!?オジサン、イッちゃうよ?
「アー! いたぜいたぜ!
オイ! ガルゥシュ、遊ぼうぜっ!」
ウエッ!? テーベか!?
ビビっちまった。くっそぉーいいところだったのに!
セーベめ、ドングリ食いやがって、ハァ…




