ソフィの思い
ソフィ視点
かわいい寝顔…
ガルゥは疲れて眠っちゃった。
今は私の膝の上に頭をのせてあげているとこ。
私の膝に頭をのせるときにちょっと身じろぎをしたけどすぐに呼吸が整って、スヤスヤと寝てる。
今は夜だし、少し肌寒いかもしれない。
『火よ、風よ…[暖間]』
うん、暖かくなったかな。
これは冒険者学校で学んだ、冷帯の地域じゃ必須だって。
温度調節は火属性の魔力を上げ下げすれば出来るみたい。
逆に熱帯地域では水属性の魔力を込める、[冷間]を使うんだって。
「…ごめんねガルゥ……」
ポツリと呟く言葉は何に対してだろう。勝手に口から溢れたみたい。
私、ソフィティア・チヨクスは産まれたその日からガルゥと一緒にいたってママから何度も聞いた。
ガルゥはすごい子で、とても頼りになって、面白くて、いろんなものを作って…、そんなガルゥがこんなに弱いところを見せたのは初めてだったかもしれない……
私は正直に言ってそれを見て嬉しかった…ガルゥも皆と同じように悩み苦しむ、弱いところもある人なんだって分かったから。
今まで私は、ただガルゥが凄いから、小さい頃から一緒だったから、そんな理由でガルゥの後ろをついていってた。
比べる人がいなかったっていうのもあるけど、クレハーロに来て、冒険者学校で色んな人に会ってやっぱりガルゥは凄いんだって分かった。
──そしてまた自分の意思を隠してガルゥに縋ってた──
そう、私は自分の考えをあんまり表に出さなかった。
ガルゥのことは好きだ。だけど、どこか上辺だけだったかもしれない。
こんなにガルゥのことを真剣に考えたのは初めてかもしれない。
今ならはっきり言える。
──私はガルゥのことを愛している──
本当にガルゥが起きているときに言えるかは分からないけど…
さっきのガルゥは折れそうに弱々しかった。
ロクシュの里に入るまで気丈に振る舞っているみたいで少し心配だった。
無理もないと思う。ガルゥは教官より強かったけど純粋にベゼック教官を尊敬してた。
その教官が殺された。
私は見てないけどガルゥはその教官を殺した奴と戦った。
森で魔物を探しているとき、雷鳴が轟いた。
私はその瞬間走り出してた。フードと髪がどうなるかなんて気にしなかった。
昼で雲もなく、雷が落ちるわけがない。
あの雷鳴はガルゥの奥の手だ。一度だけ、昼間に村の近くで聞いた音だった、あの時ガルゥに聞いたけど答えてくれなかった。
私にも言わない本当の奥の手だと思う。
そんな奥の手を出さなくてはならない敵が出てきたこと、それが私には恐怖だった。
ガルゥが死んでしまうんじゃないかって…だから形振構っていられなかった。
私がそこに着く前に、一瞬景色がほとばしるように光った。
その時私はさらに胸に暗雲が立ち込めたのを感じた。
恐ろしかった。怖かった。
ガルゥを失う…その考えが私の喉を詰めた。
景色が光ったあと、少しかかってガルゥを見つけた。
ガルゥは血まみれで横たわっていて背中から血が流れて出ているようだった。
ガルゥの横に獣人がいたけど、そんなことはどうでもよかった。
ただ「どいて」という言葉だけが出た。ほとんど無意識で。
手が震えていた。取り返しのつかないことになっていたらどうしようという思いを振り払って私は魔法を唱えた。
魔法を唱えてもガルゥの背中の傷は治らなかった。それどころか何度も何度も傷が開いて、そのたびに魔法をかけ続けた。
私は魔法を唱える時以外はガルゥの名前を呼び続けた。
何回も何回も名前を呼び続けて皆が来たことにも気が付かなかった。
魔力が枯渇し始めた頃にガルゥが目を覚ました。あの時の気持ちは言葉では語り尽くせない。とにかく安心した気持ちは強かった。
あの時無意識に抱き付いてた…体温は血が流れ出たからか、少し低かったけど、見た目よりガルゥの体はがっしりしていて男らしかった。
今日起こったことはもう二度と忘れない。
あんな不安な気持ちにはなりたくないから。
ガルゥにも出来ないことはあるし、一人では悩みは解決できない。
私はこれからガルゥを、ガルゥの側で守っていく。
そう心に誓った。
私はガルゥの頬に唇を落とし、私は空で大きく私達を照らす月を見つめた。
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《特殊スキル【守護】が成長し【光風霽月】になりました》
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【光風霽月】は心がさっぱりと澄み切ってわだかまりがなく、さわやかなこと。と言う意味ですが、ソフィの心が成長した結果です。
能力も少し変わっていますがそれは後程…大分あとになるでしょう。
あ、ちなみにソフィのシンボルは月がイメージです。白く光輝く月。




