44 血清とアン
ロクシュタリアの木の下の家は、夕焼けに照らされ真っ赤に染まっている。
暖かみのあるログハウスのような家だ。
木々の匂いが香ってくるようないい家だと思う。
クレハーロとか、オレの村は石造りの家だからこの里の木造建築は趣が異なっていてなんというかノスタルジック。
「じゃあ、お邪魔します」
「どうぞどうぞ」
「ねぇ…わ、たし、悪いんだけど、何処かで、休憩させてもらえないかしら……」
セーベがドアを開けてくれて、入らせてもらおうというところでクレールが気分の悪さを訴えた。
確かにクレールは目に見えて青白く、目の下の隈が体調の悪さを強調していた。
「クレール、大丈夫か…?
ガルゥシュ、ピタシーナ、オレはクレールが心配だから話しといてくれ」
「ご、ごめんね、クラメ…」
「分かったわぁ~、クラメちゃん、ちゃんとクレールをみてあげるのよ!」
不安だな、
1年以上も一緒に訓練してきた仲間だから分かるけど、あんなしんどそうなクレールは見たことがない。
あ、鑑定すれば分かるかも知れないな。
ステータスの状態を見れば分かるだろう。
ということで鑑定。
{個体名:クレール・タセナ
状態:血罹}
血罹?
ステータスに出たのはいいけど…えーわかんね。
教えてアン先生~!
《彼女の血にスキルによるウイルスが混入、抗体を精製することが出来ず高熱におかされているようです》
スキルによるウイルス…?
クレールは別に裂傷等の怪我はない……怪しいのは、キマイラの吐息か?
《はい。マスターのお考え通りです。》
まぁそれしかないだろ考えられるのは。ならどう治せばいいんだ?
《補助します。[水変]を使用してください》
[水変]?魔法でいいの? んー、分かった、信じるぞ。アンの言葉に間違いはないだろうからな。
「ちょっと待って、クレール。
えっと水玉…からの水変?」
オレはクレールを呼び止めて、まず水玉で2cm位の水を出し、それに水変をかけた。
水変はそもそも水質を変えたり、汚い水を飲めるようにするなどができる魔法だ。今回はアンに任せたからどうなるかわかんねぇけど。
オレが作り出した水玉はスゥっと色が変わり、少し黄色い透明な水玉になった。
この色…アン、これってもしかして血清?
《はい。マスターのお考え通りです》
血小板みたい…献血してチラッと見たことあるわ。
それにしても血清って水変で作れんのか……
《通常、不可能です》
そりゃそうだよな。そうじゃないと毒耐性スキルは要らないだろうし。
はい、アンのお陰ですね、分かります。
いや、マジでありがとう。さすがアンですわ。
オレャもう、アンがいねぇともう生きられんわ……
《…照れますね》
えっ?あ、アンが照れた!? マジ?
そ、そんな機能があったなんて…てっきりロボットか何かかと…
《……………》
ご、ごめん。
「ね、ねぇガルゥシュ…これを、どうすれば、いいの?」
「えっ?」
あ、アン?どうするの?オレ分かんないぞ?
《摂取させてください》
分かった、ありがとう。摂取は飲んでもらえばいいかな?
まぁ普通そうか。ぶつけて治るようなもんじゃないだろうし。
「クレール、それを飲んでくれ。多分それで治ると思う」
「こ、これを、口に入れれば、いいの?」
「ああ」
「わ、分かった…」
クレールはオレが手のひらから浮かせた血清の水球を口を開けて飲み込んだ。味とかは知らん。
よし。アン、これはどれくらいで効く?
《2分11秒です》
早っ、そんなもんか?
「えっと、2分位で効くと思う…まぁ休んだ方がいいと思うから。
クラメ、クレールをよろしく」
「おう。分かった」
「あ、ありがとう…セーベさん、何処か、休むとこ…ある?」
「あ、はい。私の部屋に案内します。どうぞ」
セーベの勧めにしたがってオレたちは改めてセーベの家に入らせてもらった。
「お父さん?ただいまー、いるー?」
「おかえり~。なんじゃー?」
「あの~ちょっと人が来てるんだけど」
セーベがオレたちを紹介してくれるのかな?
「お邪魔します…」
「おお、おお、たくさんおるの?」
玄関をくぐってオレたちが目にしたのは筋肉の盛り上がったリス族のオッサンだった。え?この人セーベのお父さんですか?
「お父さん、この人体調が優れないみたいだから私の部屋に案内するね」
「おう、分かったぞ」
クレールがセーベに連れられて奥に向かっていった。その足取りがフラフラしていてクラメが肩を貸しつつゆっくり奥へと進む。
アンが処方してくれたから大丈夫だと思うけど……
「ふむ。そんじゃ、自己紹介しようかの。
わいの名前はコジベ・リースタ。
ロクシュの里の村長だの、よろしくの」
渋い声でリス族とは思えない身長と胸板を大きく張った。
この人マジでセーベの親?似ても似つかねぇ……




