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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第三章 冒険者…?
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40 決着…


「アァ…ここでは戦いづらいですかね?貴方ぐらいしかワタクシに抗えないでしょうし、お一人の方が戦いやすいでしょう…」


 ゴルチェラードがここじゃない場所にした方が良いか言いだす。こちらとしてはその方が有難い。

 皆を守りきれる自信がない。確かにオレ以外の誰かじゃあ、教官を殺したゴルチェラードになら簡単に殺されてしまうだろう。


「それでは、場所を移しましょう…か!!」

「!?グブッ!」


 ゴハッ!こ、コイツ!クソッ!油断した!ゴルチェラードの攻撃に敵意が感じられなかった…!

 オレはゴルチェラードにミドルキック、いわゆる左中段回し蹴りを食らい吹き飛んだ。木を何本も幹からへし折りながらぶっ飛んだ。


「がっ、ぐっ…」


 何本木をへし折ったか分からないほどぶっ飛び、森を抜け道のある草原にゴロゴロと不様に転がり出た。


 くぅー。ミスった…!キマイラに打ち消された外側の風強化魔法、かけ直すの忘れてた…あ~これ、アバラ何本かいったな…背骨もヤバイ。めちゃくちゃ痛ぇけど、治せない訳じゃない。


「グッ…光よ癒せ!『光癒(ライトヒール)』……!」


 ちっ!ヤベェ光治癒魔法練習してなかったから全然思うように治らねぇ…!無詠唱じゃあ、すぐ使えるけど効き目も薄いから短詠唱だけど詠唱したってのに…


「ッハァハァ…。あ~痛ぇー!マジで許さねぇ…あの野郎!」

「クックック…ィーヒッヒッヒ!誰を許さないんですかねぇー!?」


 ゴルチェラードが悠々と森から出てきた。見た目は肌が浅黒いこと以外、教官のままだ。体の傷も治ってるし、右腕もしっかりある。


 完全に死者への冒涜だ。ゴルチェラードを見てキレた。


 地面スレスレを思いっきり駆ける、足が前に前に動く。


 一瞬で決めてやる!首を狙って振り抜いた。


 金属の高い残響が長く音をたてる。


 ウワッ。普通に受け止められた。力では互角、もしくは少し上か。


「ククッヒッヒッ…やっぱり、貴方強いですねェ…隠蔽してますねェ?久しぶりにゾクゾクしてきましたよ…楽しみですねェ強いやつをぶち殺すのは!」


 鍔迫り合いをしているとゴルチェラードが一人気味の悪い笑みを浮かべ、笑い、そして興奮し始めた。

 オレが他とは比べ物にならないくらい強いことが分かったらしい…でも、まだ完全にオレの強さがキッチリ分からないはずだ。それまでには仕留めたい。


「さぁ!殺し合いの始まりです!!」


 フッとゴルチェラードの力が抜け、鍔迫り合いしなくなった。消えた…


 うしろっ!


「ぜりゃ!」


 後ろ回し蹴りッ。を下に屈んで避けられクンペルでゴルチェラードの顔面を狙う、くそ!弾かれるッ!


 縦、上袈裟掛け、右横と剣を振るが全て丁寧に受けきられる。


 三回打ち合ってギリギリ紙一重のところで弾き合う。


「『光矢(ライトアロー)』!」


 これは目眩まし用だ。本命は無詠唱の闇槍(シャドースピア)。これをゴルチェラードの行動予測場所に地面から伸ばす。


 闇の黒い杭が三本地面から生える。


「どうだっ!やったか…」


 あっ!ヤバイっ!自分でフラグ立てちまった…


「ダメですよ…引っ掛かっちゃあ…」


 ゴルチェラードが右手に持つ教官の剣を簡単に振り抜く。


「ぐぁあぁあああ!」


 クソッ!また油断したッ!フラグ通りじゃねぇかっ!

 背中がッ!斬られたッ!

 クソッ!オレのバカ野郎!


「ハッハァハァ」


 ヤバイな…背中は治癒魔法の効きが悪いんだよ…掌から治癒光を出すのが一番効きがいいんだけど届かないし、クンペルを手放せられない…

 我慢するしかねぇ!もう決着をつけるしかないっ!


「うぉぉおぉ!!」


 こうなったら見せてやるッ!オレの編み出した必殺技ッ!


「ライトニングバァーストッ!」

「!?!?」


 オレの体の周りを黄色い稲妻がかけまわる。バチバチという音が耳に届く。


 雷魔法だぜ。属性に雷がなくて、開発するの大変だったよ…4歳からずっと試行錯誤して、今ではオレの最高火力、最高範囲魔法だ。

 ライトニングバーストがオレの今出せる最高だ。オレの体からかなりのボルトの電気を放出する技だ。さすがに紫電になるレベルまでいかないんだけど……


 これでダメだったら本当に不味いんだが……


「ガホッ!グッ…なんだ、それは…!」

「っはぁはぁ…これじゃあ、ダメか。しぶといなぁ…!」


 ヤバイ…魔力のほぼ全部を出したからクラクラするし背中の傷も開いた…万事休すか…


「だ、だいじょうぶですかーっ!」


 !?誰だっ!ここに来るのは駄目だ!クソッ声が出ないッ!特待生の誰の声でもない…しかも森からじゃない…!?

 戦闘のせいで感知まで気が回らなかった。


「……ククッヒィッヒ…グブッ!ハァハァァァ、ワタクシに運がまわったようですね…」

「あ、あなたッ!大丈夫ですかっ!身体中酷い火傷ッ!」


 不味い…今来た娘。恐らく獣人だ…フサフサと大きな丸めの尻尾…少し尖った頭の上の耳…真っ白な髪の毛……


 その時オレの脳内に直接流麗な美声が響く。


 《──ガルゥシュ・テレイゲルよ─彼女が貴方が救わなくてはならない女子(おなご)です─貴方が彼女を救うのです──》


 これはッ!

 オレの使命かっ。なんとしてでも救わないとッ!

  何の疑問も沸くことなく純粋にその声を受け入れる。

 とにかくゴルチェラードから離さないとッ!


「光の精霊さん!おねがいっ!」

『仕方ないなぁー』


 あれは?光の精霊だって?

 小さな女の子の姿をして、薄い黄色の服を纏っているように見える。

 それにしても、奴を回復させるのか?それはダメだッ!


「待って!ソイツは悪党だッ!」

「えっ!?」『え?』


 なんか精霊の方は緊迫感がないな……

 獣人の娘、信じてくれ!お願いだ。


『ん?うぉーっ!スゲェー!アイツめっちゃ光に愛されてるッ!ワタシ好きになったかもっ!』

「へっ?」


 光の精霊がこっちにすごい勢いで飛んできた。 なんだコイツ?今の状況分かってる?


「精霊さンッ」

「動くなッ!貴方…少し侮っていましたよ…」


 ゴルチェラードがボロボロな状態で獣人の子を人質にしやがった。頼むから早まるなよ…


「お願いだ、その子を殺すな…」

『えっ!?なになに?これ?』

「このままだとあの子が殺されるぞ…でも魔力がないし、どうする…奴まで遠い…接近戦は……」

『ヤバイじゃん!あんたに力貸してあげるっ!はいッ。あの娘を救って!』


 眩い光が目に見えて煌めく。その光が燦々とオレの体に降り注ぐ。


 これはっ!?光がっ!オレの手に?


「その力はッ不味いッ!撃つなァあああ!」

「ヒャッ!」


 ゴルチェラードがあの娘を離したっ!逃げるためだろうが良かった。あの娘を巻き込まないで済む。


「喰らえッ!『聖光(ホーリーッ)』!!」


 空気が焼かれるようなビジュンッという音。


「グッアアアアッッッ!!!」


 大きな光線が手を向けた方に放出された。これに当たったら完全に消滅するだろう…


 すみませんでした…ベゼック教官、荒い弔いで…

 今までありがとうございましたっ!お元気で……


 聖光(ホーリー)が消えた瞬間、オレの目の前は真っ暗になり、オレはぶっ倒れた。

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