37 ケチャップ
冒険者学校入学から一年経った。
今日から特待生は二グループに別れて、クレハーロの北にある村にいく。
その村は言わば、中継地だ。目的地はその村のさらに北の森だ。
この森はアシヤカ村の西の森より強い魔物が出るらしい。
その森で二日間生き残れというものだ。一応どこに生徒がいるのか教官には分かるようになっているらしい。
二グループの分け方はリーダーがオレのグループと、ピタシーナちゃんがリーダーのグループだ。
オレのチームはクラメ、クレール、チヌネア、メルネーだ。
ピタシーナちゃんの方が、ゼン、セント、ソフィ、エミッタだ。
だんだんソフィも分別がついたのか文句は言わなかったが少し拗ねていた。ピタシーナちゃんとゼンは何故か物凄く悔しがっていたが…。ちなみにクレールがクラメの方を見て頬を紅くしていたりした。クレールちゃん青春してるなぁ。
さて、オレとゼンが遊びでどっちが多く魔物を狩れるか勝負しようぜとか言ってたら、ベゼック教官が聞いていて、より多く魔物を狩ったチームにおごってやる。と言うことになって俄然皆やる気がある。
「うっしゃあ!狩るぜ!セントには敗けねぇー!」
「……」
クラメがセントに宣戦布告したがセントは黙って馬車に乗り込んだ。やっぱりなんかクラメって哀れだよなぁ。
あ~やだやだ、馬車に乗りたくねぇ。ケツが痛てぇんだよなぁ。走っていった方が楽なんじゃね?ステータス値高いし、訓練になるしさぁ…
「おい!ガルゥシュ!早く乗れ!置いてくぞ!」
まぁダメだよねぇ…ハァ仕方ないな…
途中の村ではまぁまぁの歓迎だった。一応泊まるための宿屋と食事等の料金は前もって徴収されていたし。
だいたいどこにいっても黒パンとスープなんだよ!飽きたよ!もっと味の濃いものが食べたい!米食べたい!
オレはせめて、黒パンをもっと美味しく食べるためにある調味料を作った!
そう!ケチャップだ!本当はマヨネーズが作りたかったけど卵が高い!トマトは安かったからケチャップで良いかと思った。トマトじゃなくてトミトだったけど。
味は良い感じに纏められたから道具屋に売ってた木の瓶に詰めてきた。
よーしこれを黒パンに塗って軽く火魔法で炙ると…!
おぉー!旨そう。いただきまーす!アームッ
あ~ピッツァ~っぽい。お世辞にもすごい旨い訳じゃないけどかなり美味しくなった気がする。これでチーズつければほぼピザだな。
「ねぇ、ガルゥ何つけてるの?」
「ん?ソフィこのソースはねトミトケチャップと言うんだ。つけてみる?」
「うん!ガルゥが作ったものならきっと美味しいもん!」
「わ、私にも下さいませんか?」
「いいよ。はい。メルネーちゃんにもあげるよ」
ソフィとメルネーちゃんにもケチャップをつけてあげた。さらに軽く火魔法で炙ってあげた。
「い、いただきます…」
恐る恐るといった風にケチャップが塗られた黒パンを口に入れる二人。
「ん!?おいしぃ。黒パンじゃないみたい」
「美味しいね。さすがガルゥだよ!」
「本当は、もうちょっと他のものをつければもっと美味しいんだけどね」
「いえ!これでもすごく美味しいです!」
「あはは黒パンは飽きてきたからね」
「おい、ガルゥシュ。君たちは何を食べてるんだい?」
ゼン、クラメ、セントにピタシーナちゃんがこっちに来てしまった。三日分持ってきたけど無くなりそうだ…
「ハァー。つけて食べてみる?トミトケチャップって言うんだけど」
「あら!嬉しいわぁん!ガルゥちゃんの手・作・りが食べられるなんてぇ~!」
「いいのか!メルネーがすげぇ旨そうに食ってるから食べてみたかったんだよ!」
「………!」
「ありがとうガルゥシュ」
う~ん黒パン片手にこっち来るってことは食べたかったんだろうけどさぁー。まぁいっか。どうせならケチャップじゃなくてマヨネーズを広めたかったよ。
「おいしぃー!」
「うん!美味しい!」
「………!?…旨い…」
「美味しいわぁー!アタシの心にグサッときちゃったぁーん!」
上からクラメ、ゼン、セント、ピタシーナちゃんの感想だ。別にピタシーナちゃんの心を狙った訳じゃないのに…!て言うか久々にセントの声聞いたよ!
「なになに!楽しそうなことしてるじゃーん!」
「私達も混ぜてもらえないかしら?」
「…おいしそう…」
エミッタ、クレール、チヌネアが来た。まぁ来るよね。来ない方がおかしいもの。
はい、塗って炙る。なんか手慣れてきたよ…
「どうぞ」
「ありがとー!いただきまーす!」
「申し訳ない。有り難う。いただきます」
「…ありがと。いただきます…」
三者三様のお礼を言って食べた。というかなんかこの三人って良い相性してるような気がするな。
「ウマッ!」
「美味しいですね…」
「おいし…」
感想まで三者三様……
「おい!てめぇら!今日は早く寝ろ!ん?まだ食べてるのか?」
ベゼック教官が来た。もしかすると…
「あ!教官!これ食べてみ!」
「なんだこれ?」
「黒パンを美味しく食べるためにガルゥシュが作ったトミトケチャップですよ」
エミッタが教官にケチャップ黒パンを勧めて、ゼンが説明した。
「ほぉー!この黒パンを美味しくするために、か。面白そうだ。一つ、くれ」
こうなると思ったよ。もう在庫が無いんだけど…仕方ないか。
「いただくぞ」
大口を開けて黒パンにかぶりつく教官。
「…………」
あれ?何も言わないけど、どんどん食べてる。
「ブハァ!うまいっ!旨いぞっ!」
あ、そういうことね……
「ガルゥの作るものは何でも美味しいもん!」
「「何でも?」」
クレールとクラメがはもった。
クレールが横目でクラメを見た。赤らめた…もういいよ!そんなのは!ピュアか!
それにしてもソフィさん、分かってる?材料費は基本オレ持ちなんだよ?
「えっーとね!ガルゥはこれまでいろんなの作ったの!それの全てが美味しかったの!」
あ~ソフィが語り出しちゃった。熊鍋や、カラアゲ、その他にもうどんや豚の生姜焼き等の料理を作ったことを言った。
なんか作りたいというより食べたいから作ったんだけど基本的にこの世界の料理ってあんまりいいのないんだよね。焼くとか煮るとかしかないから。
「クレハーロに戻ったら食わせろよ!」
「「「「楽しみに」」」」「してる」「待ってるね!」「してるぜ!」「してるわぁーん!」
「分かった!分かりました!作りますよ!クレハーロに帰ったら!」
こうしてオレはクレハーロに帰ったら色んな料理を作ることを約束したのだった。
───この約束は、ある人だけ守られなかった…。それがオレの一つの後悔だ───




