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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第三章 冒険者…?
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34 特待生殺しの試験

 

「「よろしくおねがいしますっ!」」

「ね、ガルゥさんだよ、やったね私達Aひょうか間違いなしだね!」「ほんとだね!やったぁー!」

「こら!ちゃんと挨拶しなさい!!」

「あわわ!お、おねがいしますー!」「おねがいしまーす!」


 お、おう。こ、これが試練か。上手くまとめられるだろうか…

 ガルゥさん…って。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今は、クレハーロ冒険者学校の試験期間、一日目の月曜日。本試験は来週の月曜日。

 毎年春に、特待生が一般生をつれてパーティーの連携や協調性があるかどうか等、評価を付けられる試験だ。

 特待生は特待生でリーダー性や、状況判断能力、一週間でどこまで一般生を強くできるか等が教官たちに評価を付けられる。


 この試験は通称“特待生殺しの試験”と言われ、それだけ指揮するのが難しいぞ といういみが込められている。とのことだ。

 不吉過ぎるからやめてほしい。

 あんまり喋らないセントやチヌネアは大丈夫か…?メルネーの所は獣人族差別主義者がいたら最悪だろうけど王国はそんな奴ほとんどいないらしいから大丈夫だろ。


 本試験はクレハーロの東にあるトラデニの森でやるらしい。トラデニの森は普段は立ち入りを制限されている。そう、この試験の為に魔物が狩られ過ぎない様にしているとのことだ。


 この試験にはこの地方の最高権力者である、クレメト辺境伯がいらっしゃるとのことだ。極稀にスカウトされる奴もいるそうだ。これはまだ完全に冒険者となっていない生徒たちなので、ちゃんと教育すれば騎士にもなれると踏んでの事らしい。

 そのため、変に気合いが入っている奴もいたりする。エミッタとか… 特待生殺しにならないことを祈ってるよ…。


 まぁそれで今日初めて担当する一般生と会ったと言うわけだ。

 一般生で、ある程度成績のラインを越えている子たち五人とパーティーを組む。

 他の特待生たちも五人担当して、グラウンドでばらけてそれぞれ対面している。ソフィはチラチラこっちを見たりしてるけど…あっレンベルがいる。ソフィのところなのか。あの押しの強いレンベルが。大丈夫かなソフィ…頑張れソフィ…


 冒険者学校の生徒は年齢にかなりバラつきがあり、最年少が7歳、上が22歳らしい。12歳前後が最も多く、平均11歳だったかな。

 強さに年齢は関係無いと言われている世界なので敬語はあんまり使ってなかったりする。それでも実力が離れていたり年齢が離れていたりすると、気性が荒い人がいる可能性もなきにしもあらずなので敬語を使うことが推奨されている。


 オレが受け持つ子たちは女の子三人、男の子二人だ。


「僕がレドー・タテズでーす!」

「自分がペック・シゾンタでっす!」


 先に言ったレドーが黒髪、ペックが茶髪だ。共に10歳っと。


「私はチナレナ・テベイルノと言います。よろしくお願いします」


 礼儀正しいこの娘が12歳で下の子たちをまとめてるみたいだ。

 チナレナはいわゆるサイドテールの茶髪で身長が今のところオレより高い。


「ほら、ミナ、カレン、自己紹介しなさい…」

「ぅん!えっとね!ミナサ・ヒートンでぇす!」

「あわわ!えっ、えっと!カレン・ルービエです!」


 ミナサとカレンでいいのかな。ミナサは栗毛の髪が短めに緩くパーマがかってるっていえばいいかな。カレンは綺麗な黒髪を肩まで伸ばしている。カレンが9歳でミナサが8歳だ。


 えーとこれはオレもしっかり自己紹介した方がいいな。


「えっと、オレはガルゥシュ・テレイゲル。今は11歳です。よろしく、レドー、ペック、チナレナ、ミナサ、カレン」


 ちゃんと一人一人の目を見てから頭を下げて自己紹介した。


「あっ、そ、そんなに畏まらなくていいですよ!こっちがお世話になるんですから…それに、私の事はチナと呼んでください」

「あ!ミナ!でいいよー!」

「えっ、そうですか。じゃあチナ…とミナね。皆もオレに敬語はいいよ。タメ口でいいから」

「えっとじゃあ…ガルゥシュ…くん」

「ガルゥでいいですよ。まぁ呼び方はなんでもいいか」


 ゆっくり慣れていってもらったらいい。


「ところでオレって有名なの?」


 最初にミナがガルゥさんって言ってたから名前知られてるんだと思ったんだよね。


「そりゃ!有名だよな!」

「うん!特待生はボクたちとは きゃく?がちがうし!」


 ふ、ふーん。そうなのか。嫌な気分ではないな。特待生は10人しかいないしな。基本、訓練ばっかやってるから見られてるんだろうな。

 ところでレドーが言いたいのは多分“格”だろう。きゃくではないな。


「特待生の中でもガルゥさんが一番なんだよね!?スゴいよねー!グルングルンずどーん!って!」

「そうそう!あたしもあんな動きしてみたいなぁー!」


 ミナとカレンからの羨望と尊敬の眼差しが凄い。

 オレ、こんなに慕われてるんだなぁ。前世のオレとは比べ物にもならないな。


 さて、オレの有名度が分かったところで、この子たちの実力が見たいし何か披露してもらおうかな?いや、狩りに行った方が早いか?まぁ訊いてみるか。


「オレのことはさておき、早速で悪いけど、何が得意か聞かせてくれる?」

「あっ!僕、弓と剣がとくいー!」

「自分!自分は盾と剣がとくいでっす!」


 ふむ。レドーとペックは剣なら教えられるな。二人とも魔力はそんなに高くないから剣を教えるか。レドーの弓は少し見てみたいな。


「私は剣はマシなんですけど魔法がどうにも苦手で…」

「あたしは…剣は使えなくて魔法だけできる!」


 う~ん。魔力は二人とも結構持ってる方かな。チナは魔法が苦手っと。カレンは魔法使いか。後でしっかり教えよう。


「ミナ!ミナはね!これ!」


 うお!元気だなぁ…

 ミナが見せてきたのは一本の短剣だった。ちょっと紫の液体が滴ってるけど……


「あっ!それ、触っちゃダメです!」

「えっ!?」


 触りそうになったらチナから注意を受けた。

 ジュウゥ と音がして地面の雑草が焼け枯れた。


「えっ!?なんじゃこりゃぁ…」

「こらっ!!ミナ!それがどれだけ危険か分かってるの!?」

「ぅう、ごめんなさい!チナ!」

「私じゃないでしょ!大丈夫?ガルゥシュくん」

「えっと!ごめんなさい!ガルゥ!」

「あ、あぁいいよ。別に触ってないし。ところで何なの?この短剣」


 危なかったのか。滴った液体もあれだけど短剣も禍々しいフォルムで…

 え~と、鑑定!


 〈ポゼガー:攻撃力+10 毒を貴方に贈りましょう〉


 え?これって…説明文恐すぎだろ、説明文っていじれるのか?


 《製作者は完成時24秒以内なら説明文を変えることが出来ます》


 あっ、そうなの。24秒か、意外とシビアだな。作った奴、何かかっこいいわ。


「えっとね!ミナのパパが作ったの!魔道具なんだよ!」


 へ、へぇーミナのお父さんか。魔道具…どうやって作ってるのか気になるな…今度紹介してもらおうかな?

 いやいや、今はその話は置いといて…


「まぁ大体皆の得意な事は分かったけど見ないことには完全に把握出来ないからこれから狩りにいこうか」


 連携が今の時点でどれだけ取れているかっていうのも見ないとな。

 オレは皆が頷くのを確認してから気合いの掛け声をすることにした。


「頑張ってA評価を取ろう!エイ・エイ・オー!」

「…?」


 えっ!?何で皆反応ないの?え、知らないのこれ?嘘だ、これじゃオレ恥ずかしい奴じゃん…はぁ。


「なんなのそれー!ギャハハハ!おもしれぇ、なぁレドー!」

「えー!でもかっこよくない?ペックは違うの?」

「ミナはかっこいいとおもったー!」

「あたしも!」

「わ、私は…」

「かっこいい?かっこいいかもしんねぇなぁ…」

「そうだよペック!かっこいいよ!」


 何だこの反応…エイエイオーってかっこいいものなのか?チナが何て言おうとしたのか分かんないし……


「まぁ、いっか。じゃあいっくぞー!A評価目指してー!エイ・エイ!」

「「「「オー!」」」」「オー…!」


 チナが照れてちょっと遅れたな…恥ずかしさが表れたのか顔を手で覆った。


 まぁとにかくやるだけやろう。

 オレのリーダーシップ性を見てろ!

学校の試験はつらいですよね。

こういう数字に表れない能力が大事だと思います。

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