33 特待生と校長
特待生の人数は10人で、一般生は多分80人くらいかな。
今は冒険者学校入学から半年ほど経って冬だ。橙の月11月である。
毎年学校が年によってどこの都市でやるか決まっているため、同級生しか居ないことになる。
冒険者学校では普段は教室で座学が基本的にあるが、計算や読み書き、魔法学や魔法道具についてをやっている。この辺は一般生と変わらないそうだが、特待生は実戦訓練が多く、特待生同士のランキング決めが一ヶ月に一回ある。
オレ、ソフィ、ゼン、メルネーちゃん以外の特待生6人を紹介しよう。
まず曲刀金髪ことクラメ・ベーズ。11歳。
影の薄い男、セント・フー。12歳。
ずっと笑ってる活発そうな女の子、エミッタ・レビス。12歳。
凄く真面目な女の子、クレール・タセナ。13歳。
おどおどしてる女の子、チヌネア・シトマウ。10歳。
そして、オレのお尻を狙う巨漢、ピタシーナちゃん。
ピタシーナちゃんは本名不明、性別不明(いや、分かるけども)、年齢不詳である。鑑定することも出来るが絶対したくない。
ピタシーナちゃんはクラメとセントと同じ部屋なのでそれを知ったとき心の底から安堵した。
現在ランキング決めでオレは1位でソフィが2位。ピタシーナちゃん、ゼン、セント、メルネー、クレール、エミッタ、チヌネア、クラメの順番で、クレール以下はよく入れ替わっている。
手加減してるんだけど、うん。勝っちゃうんだよね…まともに戦えてるのってソフィだけなんじゃないかな。あと、ベゼック教官も。色んな戦術が見れて面白いんだけどね。
皆、武器はたまに代えたりしている。大体の武器は木で作られたものがあるので色んな武器を試している。オレもちょくちょく色んな武器を使ったりしているが、木の武器なのでかなり軽い。
セントだけは短剣の逆手二刀流しか使わない。とても似合っているので何も言わないが……(そう、忍者っぽいのだ)
あと、現在、校長に幻影魔法の話を延々と聞かされている。かれこれ3時間半くらいだろうか。オレだけ突出した実力らしいので一対一の授業だ。
「だから幻影魔法の有用性は凄まじく…」
「あ、あの~フンバ校長?」
まだ続きそうだったので、口を挟んだ。マジ長ぇから!
「ぬ?なんだね、ガルゥシュ・テレイゲルくん」
「実戦したいのですが…」
「そうか!なら!呪文を教えてあげよう。コツは先程の話で言ったとは思うが、作りたい幻影をイメージするのだ。そこに幻影で君を出してみようか?」
「ん?オレですか…」
『光よ闇よ協力し虚像を映し出せ![蜃気楼]』
音もなく揺らぎながら立っているオレの姿が映し出された。
あ~オレの顔こんななのか。イケメンじゃん!オレかっこいいー!鏡がないからぼんやりとしか知らなかった。
「どうかね?実にそっくりだろう。私の想像がしっかりしているからこのようにハッキリと虚像を出せるのだ」
「凄いですね!ただの話の長い人じゃなかったんですね!」
「なんだと?」
「はっ!し、失言でした」
「まぁいいとも。ところでガルゥシュくんは光も闇も習得していなかったかな?」
「は、はい」
「そうか。なら闇から覚えていこうか」
闇から?どうしてだ?
「あの、校長何故闇からなんですか?」
「うむ。属性相性は知っているね?」
「はい。火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強いというやつですね」
「その通りだ。それに光は闇に強く、闇は光に強いというのもあるだろう?」
「はい。それが何故闇からなんですか?光からでも…」
「違うのだ。光からやってしまうと闇を打ち消してしまう。しかし、闇から覚えると光の能力を助長してくれるのだ。だから、闇からやる方が良いと言うわけだ」
「なるほど…じゃあよろしくお願いします!」
ここからがまぁー長かった…セドルに教えてもらったときは本当にすぐだったのに…まさか『闇とは何か』から始まるとは思ってもみなかった……




