30 獣人の耳
新キャラ。
さて、話をオレとゼンの出会いから元に戻そう。
今日は冒険者学校の入学式。これ前に言ったな…まぁいいや。
「ガルゥ、君は校長の噂を知っているかい?」
寮から学校はさほど離れてはいないが、通学中にゼンがあることを聞いてきた。
「いや。知らないな」
「そうか、知らないか。いやね、校長は禿げているらしいという、噂さ」
「へぇー。でもなんで噂なんだ?見たらわかるだろ?」
「何言ってるんだ!校長は幻影魔法の使い手だという話さ。とても見破れるものじゃないよ」
「幻影魔法?」
そんなものはセドルから聞いてないけどなぁ…知ってるなら教えといてくれたらいいのに。
それにしても幻影魔法か~。
「幻影魔法を知らないのかい?開発された魔法だよ。光属性魔法と闇属性魔法の複合魔法だね。開発された魔法の中では割りと有名さ」
「あぁ。開発されたのか。ということは頑張ったら覚えられるのか?」
「たぶんね。ガルゥシュなら出来ると思うよ。僕はあまり魔法が得意ではないから難しいと思うけど…」
んー。光と闇の複合なら教えてもらったら光属性も闇属性も覚えられそうだ。イヤーいいね。光と闇とか厨二くさいけど…かっこいいと思う。
「あ!ガルゥ~!」
「うぉ!ソフィ!急に抱きつかないで!」
ソフィ、柔らかくなってきたね…女の子らしい、いい匂いだ……グフフ。
「ガルゥシュ…君今凄く気持ち悪いぞ…」
「へ?」
しまった!顔に出てたか……自分でもグフフはないわ。
「まぁいい。この子は?」
「あぁ、この子はオレのおさな──」
「そ、ソフィちゃぁーん!まってよー!」
ソフィをゼンに紹介しようとしたら大声によって遮られた。
ん?誰だろ?声からして女の子だけど。
「あ!メルネーちゃん!ごめんね!」
「はぁはぁ、もうひどいよー急に走ってかないでぇ」
「グフッ……」
ゼンが何か変な声を漏らしたが分からない。知らない。オレには関係無い。
現れたのは茶髪のショートにウェーブがかかり、可愛い系の小柄な女の子…ただし、頭に大きな犬の垂れ耳がついている子だった。
獣人族だぁ!初めてみた…一応亜人種はいるっていうのは聞いていたけど。今まで一回も見たことがない。可愛いなぁ。
「ソ、ソフィ、この子は?」
「ん?あ!紹介するね!私と同じ部屋のメルネーちゃん!」
「あ、えっと。メルネー・ドッゲルといいます……」
「えっーと、オレはガルゥシュ・テレイゲルです。よろしく」
「私の幼馴染みだよー!」
「あ、はい!よろしくお願いします!そっちの方は~?」
「おい、おい!ゼン!」
ゼンの奴、メルネーちゃんが出てきてから動きやがらねぇ…眠ったように動きを止めてやがる。
「ゼンって!!」
「はっ!?犬獣人!!」
「ひっ!すみません!すみません!」
犬獣人と言われたからなのか、メルネーちゃんが異常に怯えてしまった。なんで謝ってるんだろう?
どちらかというとゼンの声は喜色にまみれてるんだけど?
「かわいいー!!」
「うお!」
ゼンが急に叫ぶからビックリした!
「メルネーちゃん!といったかな!?是非是非、耳を触らせてくれ!」
「えっ!」
「まて!まてまて!お前名前も名乗ってもないだろうが!」
「ぜひー!……はっ。すまない取り乱してしまった…僕の名前はゼンエス・ナ・テヨメルと言う。さぁ!是非僕に耳を!」
「ぇ、ぃや。嫌です!」
「ぐっはぁーー!」
なにやってんだこいつ。かなり引いたわ、きもちわるぅ(オレのこたぁいいんだよ!初対面の子にこんなことしませーん)
「メルネーちゃん、メルネーちゃん、大丈夫だよ、たぶん」
「ぅう、う、うん」
「ごめんね。オレの連れが…」
「い、いえ。すみません」
「ソフィ、 先に学校行っててもらえる?オレはこいつをどうにかするから」
「あ~うん。分かった。行こうメルネーちゃん。じゃあガルゥまた後でね!」
「すみませんとゼンエスさんに…」
「あぁ分かった。伝えるよ、別にメルネーちゃんが悪いわけではないと思うけどね」
「すみません…ありがとうございます……」
………………………1分後
「おい!ゼン!いつまでうなだれてるんだ!」
「もうだめだ…。犬っこの耳がぁ!」
今ようやく分かった…
ゼンエス・ナ・テヨメルは重度の獣人の女の子の耳フェチである。




