27 不穏な男…
入学手続きはそこまで時間がかかることなく終了した。
オレとソフィは特待生扱いになること、特待生なので寮の入寮費は要らないということ。そして寮は男女別であること。
男女別のところでソフィが涙目になってしまい、なだめることに時間がかかった…あ~もう!可愛いなぁー!
基本的にオレと一緒にいるので別れさせられて知らない人と同じ部屋に入るのが人見知りなソフィとしては怖いのだろう。
ソフィと仲良くしてくれる女の子もいるから、授業では一緒だから!と説得して、目を張らしながらだが、頷いてくれた。
もちろん涙目なソフィは年相応で可愛かった。
それ以外は概ね順調で手続きは終了した。
特待生はオレたちの他に数人いるそうだ。男女の人数がちょうど半々らしく、珍しいとヨーデンさんが言っていた。
「お帰りなさい、ガルゥ、ソフィ」
「入学手続きはどうだった~?」
「ヨーデンさんに説明していただいたので素早く終了しました」
「おい。お前さん、学校の場所まで案内しなくてもいいかの?」
「ヨーデンさん、場所はオレが知ってるんで大丈夫ですよ」
「そうか、セドルの坊主が居ったな。じゃあの、ちゃんとした冒険者になったらワシのところに来い。いい依頼を押し付けてやろう。ガッハッハ!」
ドワーフらしく大笑いしながらヨーデンさんは受付に戻っていった。ところでいい依頼を押し付けるってそれ、いい依頼なのか?まぁいいか、思ってたよりしっかりしてるし、優しい人だしな。
「よし、手続きも終わったことだし。どうしようか、学校から行くかい?それとも宿屋に一回戻るかい?とりあえず、ガルゥのクンペルの剣を持つ用のベルトを買わないとね」
「セドルの言う通り装備を揃えなくてはな。今のままではダメだからな」
そうだ。装備を揃えなくては。クンペルは腰か背中どっちの方がいいんだろうか。防具は皮装備からかな?
「エ~、観光しましょうよ~」
「私も観光したいなぁー」
「わ、私も観光したい。ガルゥもそうだよね!?」
ありゃー、男女で意見が別れちった。
「んー、オレは装備を見たいかなぁ」
「えー!ガルゥ、一緒に来てくれないの!?」
「まってまって、装備を選ぶのはそんなにかからないし、ソフィの装備も選ばないと。装備のあと観光しよう」
「んー、仕方ない。セドルがいないと案内する人いないし」
「そうね~。仕方ないわぁ~」
「ガルゥと一緒ならどこでもいいよ」
ヤバイ、ソフィたんがオレにゾッコン過ぎてヤバイ、いや、うん。嬉しいんだけどね…絶対幸せにしないといけないな、これ。
「じゃあ、防具屋にいこう」
ギルドを出て防具屋に向かうことになった。
やっぱりギルドの近くには冒険者を相手にした店が多い。酒場に、武器屋、防具屋、道具屋。
キョロキョロしながらいろんな所を見ていると人にぶつかってしまった。
「あ!すみませ……!?」
ゾクッというほどの悪寒が背筋を這うようにやって来た。
な、なんだ!?この悪寒は!?コイツ、ヤバイ!
「………あぁ」
コイツが答えた瞬間悪寒がひいていった。そのまま男は人混みに混じって見えなくなってしまった。
思わずクンペルに手をかけて、臨戦態勢に入ってしまった。
黒いフードを被り、所々破れているローブを着ていた。体格はヒョロヒョロで、顔も青白かった。剣も一応持っているようだった。魔法使いなのか、剣士なのか分からない。
ただ気になったのはコイツが答えた時、口から妙に長い歯が見えたことだ。
「大丈夫!?ガルゥ!?」
「あ、あぁ。だ、大丈夫」
ソフィに声を掛けられなかったらずっと身体が強ばったままだったろう。
咄嗟だったから鑑定出来なかった。
とにかくアイツはヤバイ、なにがとは言えないが、オレの勘が正しいならアイツに挑んでも勝てない気がする。
気を付けないとダメだ…アイツのことは分からないことだらけだから。
「ガルゥー!ソフィー!早く来い!」
セドルか呼んでいる、ヤツのことは気になるが仕方ない。
「ガルゥ。何かあったのか?」
「いえ、ちょっと人とぶつかってしまって」
セドルたちにあの男の事を言っても仕方ないし、不安になってしまうだけだろう。ソフィには少し不安にさせてしまったかもしれない。
強くなろう。奴に再び会ったときに困らないように…




