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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第三章 冒険者…?
28/115

26 プレゼント

*17/3/9 加筆修正しました

 

「おっ!帰ってきたな…」

「お疲れ~ソフィ~ガルゥ~」

「どうだった?二人とも!」


 戻ってきたらサリシャさんとクローネ母さんが興奮(こうふん)した様子でオレたちを出迎えてくれた。


「ママ!合格だよ!ガルゥも!」

「あら~おめでとう~!さすが私の娘!ガルゥもさすがだわ~!」

「ガルゥなら当たり前だよな!な!ガルゥ?」

「はぁ、まぁ。そうなんですかね?」


 オレはこの世界の平均が分からないから当たり前か分かんないんだよね。当たり前と思われるくらい成長したのか…なんか感慨(かんがい)ぶかいなぁ。


「そやつらは特待生としての合格じゃ。」

「おっ!そうなんですか?ヨーデンさん。やったな凄いぞガルゥ!ソフィ!」

「エ~!スゴォーイ!クローネ、私達の子どもは成長してるわ~!」

「うん…うん。本当に…うぅ」


 ク、クローネ母さんが泣いた!?

涙の(しずく)が母さんの(ほお)をつたって、いつも可愛らしい母さんだけどこの時はあまりにも綺麗で美しいと思った…


「な、泣かないで下さいよ母さん。なんで泣くんですか…」

「だっで、ガルゥがこんなにも大きくなって…嬉しくって……」


 前世ではオレのことで嬉し泣きしてくれた人なんていないと思う。この世界で初めてクローネ母さんがオレのことで泣いてくれたんだ。オレはこの日、この時間のことを一生忘れないだろう。そして、涙を流している母さんの顔も…


「そうだな。オレはガルゥが良く成長してくれてて嬉しいよ…なんたってオレたちの自慢の息子だからな。そうだ!ガルゥ、ソフィ、渡すものがある」

「おっと、忘れていたぜ。ゴホンッアーアー、よし。……俺のカワイイ娘ソフィティア、そして俺の弟子ガルゥシュ。お前らに冒険者としての小さな一歩を記念して俺とサリシャから、これを」

「ええっ、いいんですか?」


突然のことで少し驚いた。まさかそんなものまで用意してるなんて…

 ダグラン師匠からソフィには長めのローブを、オレには剣をくれた。


「ソフィのローブはサリシャが糸から始めた手作りのローブだ」

「マジカルシルクワームの絹から作ったローブよ~。そのローブを着れば魔力量が上がると言われているわ~、私が心を込めてソフィの為につくったのよ~!」

「ありがとう!!ママ!私、ほんっとう!に嬉しい!」


 へぇ、すごいローブだな。鑑定してみるか。


 〈マジカルシルクローブ+:魔力+30 防御力+10 マジカルシルクワームの糸から想いを込めて作られたローブ〉


 すごいな、ちゃんとサリシャさんの想いが込められているのが表れるんだ。それだけサリシャさんがソフィのことを想って作ったんだろう。色は黄色がかった可愛いらしいローブだ。


「で、ガルゥの剣は俺の馴染みの鍛冶師に作ってもらった剣だ」

「あ~ありがとうございます、師匠」


 師匠から手渡しされたこの剣は片手で持つには少し長く、両手で持つには少し短いくらいの長さだ。いわゆるバスタードソードかな?重さはそんなに重くない。しっくりと手に馴染(なじ)む。


「この剣の名前はあるんですか?」

「いや、名前はない。ガルゥ、お前がつけてくれていい」

「いいんですか。えっと…うーん」


 どうしようかな~なんかいい名前……

 あっ!これだ!これにしよう!


「決めました!この剣の名前はクンペルです!」


 クンペルはドイツ語で相棒という意味だ。

 前世で一時期ドイツ語に興味があったことがあってにわか知識だけはある。今それが不意に降りてきた。


「ホォー、クンペルか。意味は分からないがいい名前ではないか、響きがいいな」

「ありがとうございます。ヨーデンさん」

「おう、いいと思うぞ」

「ありがとうございます!師匠!」


 名前も決まったことだし、鑑定っと。


 〈片手半剣・クンペル:攻撃力+35 名のある鍛冶師(かじし)によって作られた剣〉


 攻撃力+35か、かなり高いな。名のある鍛冶師に作ってもらったのか。いつかお礼を言いに行こう。


「この剣を作ってくれた鍛冶師さんの名前を教えてもらえませんか?師匠。」

「ベデット。ベデット・リージ。鍛冶師の町スミルバ、一番の鍛冶師だ」

「ベデットか。あいつが作ったならそれはとてもいい剣っていのは保証されるな」

「ヨーデンさん、知ってるんですか?」

「あいつは俺と同じ村出身のドワーフだ。ベデットは世界で3本の指に入る鍛冶師だ。その剣必ず大切に使え」

「そんな人が作った剣…必ず大切に使います!本当にありがとうございます!師匠!」

「おう!」


 本当にいいプレゼントだ。

 少し重心が前に使ってた片手剣よりずれているから要練習だな。


「おいおい。オレよりいいプレゼントを渡すなよ!劣っちゃうだろ」

「良いものを渡したかっただけだろうが」

「チッ」


変な意地を張ろうとするよな…セドルって、それにのっかる師匠も師匠だけど…


「まぁいいじゃないセドル。早く渡しましょ」

「クローネが言うなら…我が偉大なる息子、ガルゥシュ・テレイゲル。我が優秀な教え子、ソフィティア・チヨクス。君たちにこれを授けよう」

「ありがとうございます。父さん」

「ありがとうございます。セドルさん」


 セドルがくれたのは魔法使いらしく、杖だ。それも同じ杖だろう。ソフィとのお(そろ)いだ。


「これはBランクのデビルトレントの杖だ。オレが使ってて良かったと思えた杖の一つだ。君たちにはこれを使ってほしい」

「はい!」

「はい」

「ガルゥ!お揃いだよ!」

「そうだね、ありがとうございます父さん」


 軽くて短く使いやすそうな杖だ。あ、この杖も鑑定しよう。


 〈デビルトレントの杖:魔力+20 魔力の操作を素早くする。少量の魔力を貯めることが出来る〉


 お?操作は分かるけど…魔力を貯めることが出来るのか。助けられることもあるかもな。


「本当にありがとうございます。父さん、母さん、ダグラン師匠、サリシャさん」

「あ、ありがとうございます!パパ!ママ!セドルさん!クローネさん!」

「頑張ってね!ガルゥ、ソフィ!」

「頑張ってね~!さぁ観光に行きましょ~!」

「おい!おい!ちょっと待て!入学手続きがまだだぞ!」

「おっと忘れてました。すみませんヨーデンさん」


 父さんが振り替えって頭を()きながらヨーデンさんにそう言う。オレも忘れてたよ。忘れてたけどここギルドなんだよな。


「入学手続きしましょ!早く観光に行くのよ~!」

「ハハ。じゃあしてきますね。行こうソフィ」

「うん!」


 いいプレゼントを貰ったんだからこれからも頑張らないと!

そうしてオレたちはヨーデンさんに駆け足で付いていった。

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