22 クレハーロ
★17/2/16 加筆修正しました。
「クレハーロは東西南北に街を出入りするための門があってね。一番人が出入りするのが東門で、これは王都方面だからだね。南も結構人気でサラムワーンっていう王国第二の都市と言われている方面だね」
街に入る列に並んでいるときにセドルがクレハーロの門について教えてくれた。今入ろうとしている門は西門で、人気のレストランの行列位と言ったところだろうか。
クレハーロはクレメト辺境伯が領主として治めている。
都市には基本、冒険者ギルドと商業ギルド、騎士詰所、露店、宿屋、神殿等があるらしい。
クレハーロはどちらかというと基本に忠実な都市であるらしい。
クレハーロには二泊する予定だ。しかし、なぜか荷物がとても多い。二泊分の荷物じゃないと思う。う~ん、理由が分からない。
今回クレハーロに来たのは我がテレイゲル家とチヨクス家だ。目的はオレの冒険者登録と観光といったところだろう。
セドルはクレハーロの冒険者ギルドのギルド長と知り合いであり、一時期クレハーロを拠点にしていたらしいのでクレハーロには結構詳しい、と言っていた。
ギルド長はちょっと押しが強い人らしく、セドルに気を付けろと言われた。
「はい。次の馬車~」
お、呼ばれたっぽいな。
「サレドニー、オレだ」
「あ!セドルさんじゃないですか。またボルキーさんの依頼ですか?」
この門番の人はサレドニーと言うらしい。ボルキーって人は誰だろう?
「いや、違う。今回はボルキーの依頼じゃあない。家族と友人と観光に来たのさ」
「へぇ!観光ですか!いい街ですよ、クレハーロは。おい!門開けろ。どうぞ通っていいですよ」
「じゃあなサレドニー」
「はい。楽しんできてくださいね~」
いい人じゃないかサレドニーさん。ソフィが手を振ったら振り返してくれてた。顔は至って平凡だけどね…。
門が開いて馬車が進む。
「ガルゥ!ガルゥ!見てみて!人がいっぱい!」
いやぁ今はオレより身長の高いソフィだけどこういうときの興奮してるソフィかわいいなぁ。
まぁオレたちはあんまり村から出てないんだよな。クレハーロにはもちろん初めて来るし、村より人がいるのは都市として当たり前だ。前世を知っているオレはあんまり驚かないけど…。
「そうだね。人がいっぱいいるね~」
「うん!わぁスゴい!お店がいっぱい並んでる~!」
いいね、毎日露店が並んでいるっていうのは。ちょっとしたお祭り気分だ。
「あとで買いにいきましょうソフィ」
「うん!ママ!ガルゥも一緒に行こうね!」
「おう!」
露店は何かの肉を焼いていたり、服を売っていたり、果物や野菜を売っていたりと、様々な露店がある。
建物の大きさはまちまちだ。高さ的に二階建てが多いだろうか。三階建ても少なからずあるが。
馬車が建物に入っていく。
「お疲れ様でした。宿屋につきましたよ」
「ありがとう。帰りもまた頼むよ」
「まいどどうも!ご利用ありがとうございました~。それでは!」
着いたのは宿屋ポリピーノだ。なんか名前がかわいい。
「フウーついたぁー!」
「疲れたね~。」
「じゃあ宿屋に入ろうか。女将~!セドルでーす!」
「おや!ようきたね。今回家族と友人の家族が来てるんだろう?」
「はい。妻のクローネと息子のガルゥシュ、そして友人のダグラン。そしてダグランの妻のサリシャとその娘のソフィティアです」
「聞いてるよ。ガルゥシュとソフィティアは天才なんだろ?」
「いやぁーアハハ。もう僕を越えかけてますよ」
「ほぉ!そうかいそうかい。おっと待たせて悪かったね。部屋は103と104を使いな。部屋割りは勝手にな」
「ありがとう女将。じゃあ行こう」
「いこ!ガルゥ!」
「あ、待ってソフィ。女将さんよろしくお願いします」
「礼儀正しいねガルゥシュ、よろしく頼むよ。」
村以外の人と話したのはこれが初めてか。前世のオレが人見知りなコミュニケーション障害だったのを考えるとやっぱり違う体だな。
「男は103、女は104でいいな。荷物を置いてしばらくしたらギルドに行こう」
「わかったわ」
103の部屋の扉を開ける。
おー、結構広い。全面板張りで入って正面に花が置いてある。ベッドは二つあってまぁまぁ大きいからセドルと一緒のベッドを使えばいいだろう。シーツはあまり汚れていない。この世界だったらいい宿屋じゃないのか?
「ほぉ。いい宿屋だな。部屋もしっかりしているし、ベッドも汚れていない」
ダグラン師匠がオレの考えを読み取ったかのように呟いた。やっぱりいい宿だったんだな。
それにしても、あ~疲れた。ベッドに横になったら寝ちゃいそうだ…
………………
「起きろガルゥ!そろそろ冒険者ギルドに行くぞ!」
うぅ。あー寝てしまったか。昼前には宿屋に着いていたからそんなに寝てないと思うけど…
「すみません。寝ちゃって」
「仕方ないさ。馬車に乗り続けて疲れたんだよ」
「はい…」
「まぁいいさ。行くぞクローネたち待ってるからさ」
「あ!すみません。すぐ用意します!」
「じゃあ出来たらロビーに来るんだよ。ガルゥ」
女性を待たせるのは良くないな。早くしよう。
「すみません!遅れました!」
「いいわよガルゥ~。疲れてたんでしょ~?」
「いやぁすみません」
「さてとガルゥも来たことだし行こうか。ギルドまで歩いていくよ。少し距離あるけど」
歩いていてさっきから看板をずっと読んでいるが、宿屋が相当数ある。宿屋ポリピーノよりいい宿はどれくらいあるんだろ?
あ!奴隷商…やっぱりあるんだな~。元現代日本人としては信じられない気持ちがあるが、仕方がない。いつかお金が出来たら行ってみようかな…いや、でもなぁー……
「何ウンウン唸ってるんだガルゥ!ついたぞ。ここが冒険者ギルドクレハーロ支部だ!」
遂にオレの冒険者生活が始まるかも…!




