19 熊鍋
★17/2/16 加筆修正しました。
「こんにちはーペリメ姐さん」
「お、ガルゥ、珍しいわね。あんたがこんな八百屋兼雑貨屋に来るなんて」
「いやぁーちょっと試したいことがありまして」
ペリメ姐さんは快活なおばさ…ゲフン、み、見目麗しい女だ。
そうオレがペリメ姐さんの八百屋兼雑貨屋に来たのは熊の肉を熊鍋にして、食べてみようと思ったからだ。
「えーっと臭い消しにいい野菜とか薬草ってないですか?」
「あぁ、そこのネギョと、オネオン、ショウゲ、ネンジン、ダエコンがいいとおもうよ」
「じゃあそれをください」
「あいよ、他には?」
ネギョは長ネギ、オネオンは玉ねぎ、ショウゲはショウガ、ネンジンはニンジン、ダエコンは大根と日本の名称とほぼ同じである。何でかは知らん。
「えっーと…これ!これください」
「ほいよ、アッペルだね。もうないかい?」
「う~んと、あ!キノコ類とこの細長いやつと、この果物を」
「ずいぶんといろいろ買い込むんだね。まぁいいさ。えっと、キノコ類はうちで扱ってるのを全部持ってくかい?あとゴベウとペペイアだね。しめて、1870ゲニアだね」
「あ、はい。それでお願いします」
ふぅ。かなり買ったけどまだ少し材料が足りないかな。
ちょうどいいから説明しておく、ゲニアはこの王国のお金の呼び方だ。
この王国の貨幣制度はあんまり今の日本と変わらないと思う。上から白金貨一枚が百万円、大金貨一枚が10万円、金貨一枚が一万円、銀貨一枚が千円、大銅貨一枚が五百円、銅貨一枚が百円、青銅貨一枚が10円、銭貨一枚が1円という感じだと思ってもらっていい。王国のは安定して価値があるから他の国でも使えないことはないらしい。白金貨より上は滅多にないので省略する。
1870ゲニアだから、銀貨一枚に、大銅貨一枚、青銅貨七枚だ。
オレがお金を8歳にしてはたくさん持っているのは、お年玉的な存在の、この村ではペンペと言うもの。を出してきたから。それにアシヤカ村ではうちの家庭は裕福な方だと言うのもある。セドルは割りとしっかり冒険者で稼いでるってことだ。
「また、来てねー」
ペリメ姐さんが手を振って見送ってくれるのを軽く会釈して次の材料を考える。え~とあと鍋の出汁と料理酒かな。
ロックパンチベアーの肉を焼いて塩だけで食べてみたけど、師匠が言うように食べられるもんじゃなかった。硬くて、臭い。せめて胡椒があったらよかったけど高くて、味見のために使えなかった。
味噌っぽいのがあってクローネ母さんに聞いたらこの地方の名産品でメソと言うらしい。まんま味噌だった。でも大豆で出来ている訳じゃないらしい。よくわからない。
味噌があるから鍋でいいかな。と言うことになったというわけ。
ちなみに醤油はなく、セドルに聞いたら何処かの地方で真っ黒な液体が売っていたのを大分前に見たことがあるらしかった。いつか買いに行けたらいいと思う。なんたって日本人の味だからな。
よし、次は~。
「お!ガルゥの坊主!よく来たな!何買っててくれるんだ?」
「どうも、ブセナルドさん。海草か、干した魚って売ってないですか?」
「ん?おお!海草ならワタメ、コンベ、ノレならあるぞ。干した魚は隣村のカミドで新発明されたケツオ節だ!でもよ。どうやって食うのか聞くの忘れて食えねぇんだ。見た目ただの木切れだしよ」
ブセナルドさんは漁師風の粋なおっちゃんだ。頭は白髪になっててシワが大人の男感を醸しだしてる。
鰹節まであるのか!この世界の食品や食材は日本に似すぎだな。でも、食べ方分からないって位だしまだ発展途上なんだろうな。一応お教えしとくか。
「ブセナルドさん。それは表面を削って、食べたり出汁を取ったりするんですよ」
「おっ!そうなのか。よく知ってるな!じゃあ教えてくれたサービスだ!ケツオ節持ってけ!」
「えっ!いいんですか?ありがとうございます。あと、じゃあこんぶ…いや、違った、えーコンベ下さい」
「おうよ、まいどあり!コンベ一枚135ゲニアだ」
「はい、ありがとうございましたー」
よし。これで材料は大丈夫かな。家に帰って熊肉の下処理をしなきゃ。
「クローネ母さん~。台所使わせてぇ~」
「いいわよー、後片付けまでしてねー」
母さんの許可はもらった。
えっーと。まず、熊肉を転がしながらお湯を足して茹でる。灰汁がたくさん出るから全部すくって、そしてショウゲをスライスして、入れる。あとはずっと灰汁取りをしてっと。
もうそろそろいいかな。大分熊肉縮んだな。お湯は捨ててショウゲはあとで何かに使おう。
下処理できたから熊肉を一口大に切って、鍋にコンベを入れて強めの火で沸騰する前にコンベを取り出してっと。
うわっ。まぁた、灰汁が出てきた。ずっと灰汁取りだ。
灰汁取りが完ぺきに終わったら火を弱火にして、ケツオの削り節を入れる。あとは三時間沸騰させないようにする、と。
いやぁー!魔法は便利だ!風魔法でケツオを削って、火魔法で調整して。イメージ出来たら大体何でも出来る気がする。
……………
もうそろそろかな。アン、今どれくらい?
《2時間57分経過しています》
よし、ほぼピッタリだな。えーと、次は酒をいれて、味噌を溶かす。
本当に醤油が欲しいけど、今は無いから我慢だな。
あとは味が染み込むまで煮て、今日は終わりだな。続きは明日。
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うし、今日もやるぞ。夕食に食べれるくらいがちょうどいいかな。
いちょう切りダエコンを下茹でして、ゴベウを酢水にさらして弱火で一時間。
キノコ類を入れて、ネギョを入れてしばらく煮込めばっと!
完成!できたぁ~!
《通常スキル【調理Lv2】を習得しました》
やった、一気にLv2か。そういやこの世界はじめての料理が熊鍋なのか。今思ったら難易度高いな。
そうだ、ソフィのとこにも食べさせてあげよう。まずはうちの家族だな。喜んでくれるといいけど。味見した分には結構美味しかった、特に獣臭さもあまり硬くもなかったしただ醤油があったらもっと美味しかったのは言うまでもない。
「クローネ母さん、セドル父さん。鍋作ったんだけど食べない?」
「ガルゥ昨日から何作ってたのかと思ってたら鍋なのね。ガルゥが作ってくれたのなら何でも食べるわ、私」
「へぇーすごいなガルゥ。もちろん俺も食べるぞ」
鍋を木で出来たお玉で掬って、これまた木で出来たお椀に三人分分けていく。湯気がたってかなり美味しそうだ。
「はい、食べてみて」
「ホゥ…見た目は良くできてるじゃないか」
「んー?これ何のお肉?」
「ひみつ。いいから食べてみて」
「う、うん。いただきます」
「あ~ん」
クローネ母さんとセドルがほぼ同時に口を開け木のスプーンで鍋を口にする。
「ん!美味しい!なんだこれ!こんなに美味しいお鍋食べたことないぞ!」
「本当に美味しい!ねぇガルゥこれ何なの?」
心底驚いた顔をして二人とも木のお椀をみてオレの顔を比べるように見る。
「んーとねこれは、ロックパンチベアーの熊鍋だよ」
「!?うそっ!これロックパンチベアーなの!?」
「信じられないな。あの獣臭い肉が…。よし!ダグランたちにも食わせてやろう!いいよな?ガルゥ!」
「いいよ。最初からそう思ってたから」
「いいわね!こんなにおいしいお鍋食べないと勿体無いわ!」
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チヨクス家がうちの家に来てさっきと同じように木のお椀に熊鍋をよそう。
「うわぁーおいしそー」
「ホントねソフィ。これ、ガルゥが作ったの?」
「あ、はい。そうです。サリシャさん」
「すごいわよガルゥは!とても美味しいから食べてみて。さ、ダグランさんも」
クローネ母さんが師匠に鍋を勧める。すでに待ちきれない様子でソフィとサリシャさんがスプーンを持っている。
「あ、あぁ。いただこう」
「いただきまぁーす!あ~ムッ」
「いただきまぁ~す」
三人が一斉に鍋を口にする。
「!?」「ワッ!?」「うぉっ!」
サリシャさんは声も出さず目を見開き、ソフィは驚きを口にだし、師匠も同じ顔をする。
「美味しい!ガルゥ凄い!」
「美味しいわぁ~。こんなの食べたことないわぁ~!」
「旨いな。ガルゥ、この肉は何だ?」
「フッフッフ驚くなよ、ダグラン!言ってやれガルゥ!」
何故かセドルが威張るように胸をはる。
「ははっ。えっーとそれはオレが倒したロックパンチベアーの肉ですよ。師匠」
「うそっ!」
「スゴォイ、ガルゥ!」
「な、なんだって!!あのロックパンチベアーか!?」
びっくりしたのか机をドンと叩く。
「まぁ皆で食べましょう。ほら父さんも母さんもまだ食べ足りないでしょう?」
「ええ。まだ食べるわ!」
「あぁ!これはいくらでも食べれそうだ!」
良かった皆喜んでくれたみたいだ。作って良かったな。
オレも食おう。フーフー、うん旨い!
「あ~美味しかったぁー」
「ソフィ、満足した?」
「うん!とぉーっても!」
「良かった」
急にサリシャさんが机を叩く。さっきの師匠みたいに。
「えっ!?」
「ガルゥ!私に料理を教えて!」
は?えっ?
「えっ!?サリシャさんにですか?」
「そうよ!まだほかにも何か作れるんでしょう!?」
「いや、思い付きでやったので他に作れるか分かりませんよ?」
「なら、この熊鍋だけでも!」
「はぁ、まぁいいですよ。それくらいなら」
「やった!ありがとう~!ガルゥ~!」
「んぶ!もが、もが!」
く、苦しい…。サリシャさんの豊満な胸に窒息死させられるぅ~!
「こら!サリシャ!ガルゥが困ってんでしょ!」
「あら!ごめんなさい~!ガルゥ!」
「ハァハァ、死ぬかと思った…」
「ブフッ!アハハハ!」
「ハァッハッハッハ!」
「アハハハッ!」
こうして、笑いながら夜は更けていくのだった…
はい。正直に嬉しかったです。あ~サリシャさんの胸、めっちゃ柔らかかったなぁ~!
料理って難しいですね。行程がたくさんあって。




