2 意思ある○○
作者さんです。
イカ美味しい。
《【生まれ変わる力(残り使用可能回数:1)】となりました》
お、オレは一体───
どこだ? ここ? オレの体は?
弟と妹はどうなってる? それにあの声は一体?
なんか思うように体が動かない?
頭がうまく回らない。
死んだのか? ここは死後の世界?
これが天国? そんなバカな!
まて、冷静になろう。
周囲の状況を把握しよう。
感覚を研ぎ澄ませろ………視覚、聴覚、味覚は効かない。
触覚はこの場所が何かヌメリ気があることを知らせてくれる。
あと嗅覚だが一番情報として良いかもしれん。
何故ならどこかで嗅いだことのある……イカくささ……これは…
オレなんなの?
動かない、動かせない感じから人では無さそうなんだが?
冷静になれ、今までの情報を精査した結果オレは…もしかすると…
せ、精子…?
うそだろぉぉ!!
生まれ変わるってこれなの?
転生ってここから!?
ここから!? スタート!?
そ、そんなバカな!
普通の転生小説ならせめて赤ん坊からだろ…? 辛すぎる!
クッソッ、なんもみえん。
においはするのに目は見えないのか。
確認したいが、なんとなく、そうなのだろうと思う。
そうだオレは精子だ。精子だよ!
グスッ。これから精子として生きていくんだ。
短く、儚い遺伝子情報の塊として……
ハァー…ん? あれ?
なんで精子なのに考え事が出来るんだ? おかしくね?
《【思考Lv3】を所持しています》
うぉっ、ビビった。
まさか解答がくるとは。【思考Lv3】?思考するのに何かの能力がいるってことか。
そりゃ、精子が考え事するなんて話、何処からも聞いたことねぇもんな。
しかし、それにしてもこの声はなんだ?
機械音声にしてはかなり柔らかいし、女の子よりの声って感じの…若干脳に直接届いたあの声に似ている気もする。
《特殊スキル【解答解説】による効果です》
特殊スキル……
スゲェな。ますますゲームっぽい。
あっ、【思考Lv3】もスキルか。
スキル、スキルね?
オッケー、理解した。
よし、じゃあ分かった事として…
今、オレの唯一の話し相手なのが【解答解説】か。
よろしく頼むわ。
返答してくれるだけでもありがたいので。
つーか、生まれ変わって数秒ってところだろうけど…ね?
なんだか、んーと、すっかり精子として順応しちまってる気がする。
これもなんかのスキルなんだろうか?
《固有スキル【生きるための才能】による効果です》
へぇー。スキルのお陰か。
感謝だなー、よく分からないスキル名だけどね。
うむ、にしても…固有…スキル…いい響きだ!
あっ、そうだ!
ゲームっぽいなら、スキルの情報って見れないか?
《残念ながら[個体名:精子]では開示できません》
《[個体名:卵子]と融合すれば可能になります》
そうか。そうなのね。
卵子と融合──受精か。
卵子には思考のスキルはねぇんだろうなぁ……
じゃあ、今の自分のステータスだけでも見れない?
《可能です。開示しますか?》
おぉ。出来るんだ。ちょっとワクワクするな。
もちろん、はい っと。
〔・個体名:精子
・種族:ヒューマン
・レベル:0
体力:1
魔力:1
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
・所持スキル
Ⅰ.ギフト
【生まれ変わる力(残り使用可能回数:1)】
【言語理解】
Ⅱ.特殊スキル
【解答解説】
Ⅲ.固有スキル
【生きるための才能】
Ⅳ.通常スキル
遊泳Lv4
思考Lv3
Ⅴ.耐性
悪臭耐性Lv1
・称号 :【意思ある精子】〕
こうしてオレは新たな生命として転生した。
確実な生命と言えるかどうかは解らないが、このままだと過酷な道を辿ることになりそうだ…ということだけ分かった。