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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第二章 幼児期から少年に
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17 西の森

どうも作者さんです。

戦闘って難しいですよね。

するのも書くのも。

 

 くる!

 左から来ると思わせて右か!!


 ウッ…、剣と挟むように左足の横蹴り。


 オレはダグラン師匠の足の方を簡素な魔法土壁で止め、剣を持った右手の手首を狙う。


 体を捻った瞬間には師匠が両手持ちにかえ振り下ろし…


 木と木の当たるガゴンという音が響く。


 オレはそれを受け止めてしまった。

 それがいけない。

 受け止める側はすぐに移動できる体勢、もしくは受け止めた硬直時に隙を作らない工夫がいる。


 結局、師匠の右足で木剣を蹴り上げられ、首元に剣を突き出されて終了。

 オレはまた打ち込むことが出来なかった。


「フェイントに引っ掛からなかったのもいいし、判断も悪くはねぇ。が、受け止めたのは失敗だな」


「ゲホッゲホッ。あ~また駄目だった」


 ほとんど無呼吸で剣を交わしているため、毎度のごとく咳き込む。

 そしていつも通り大の字に寝転ぶ。

 あ~澄み渡った空が青い。


「筋は良くなってきているぞガルゥ! お前の歳でこんなこと出来る奴は他にはいねぇだろうよ。そこんところは誇っていいぞ!」


「でも一回もダグラン師匠に届いてないじゃないですか」


 やはり何年たっても一撃も入れられないのはかなり悔しい。

 いいように転がされていた一年目よりはマシなのは分かるんだが。

 泣き言とは言わないが、ダグラン師匠が強すぎて成長が薄い気がする。

 

「お前はまだ8歳だろ。8歳に負けたら元・騎士の称号が泣くわ!」


「ハァ、いつになったら一撃だけでも届くんですかねぇ? 結構強くなってきたかと思ってたんですが…」


「勝ちを急ごうとするな…落ち着いて見極めろ。そして鍛練しろ。それしかない、俺に勝つのにはな!」


 う~ん、やっぱりダグラン師匠の言葉に重みがあるな。

 最後の煽りは要らないけどな!


「はいはい、分かりました師匠。それでは」


「おう。じゃあな。あぁそうだ。

 どうも最近魔物が活性化してるっぽいんでな。

 ちょうどいいからガルゥ! おまえも明日、村の外の魔物を狩りにいくぞ!」


 えっ? 狩り? 本当に?

 やったね! これでレベルアップ出来る!

 成長しているか試せるっ!


「本当ですか!? よっし!」


「ただし俺の傍を離れるなよ。セドルにも言っとくからよ。今日は風呂はいって早く寝ろ」


「分かりました! 師匠! それではまた明日!」


 やったやった!

 この世界の魔物は話にしか聞いたことがなかった。

 今のオレの力がどのくらいか試したい!

 ダグラン師匠に勝てないオレは比べる相手がいないから。


  近接戦闘についてはソフィはダメだし、もちろんセドルも魔法使いだからダメだ。

 村にちょうどいい相手が居ないんだよなぁ。


 冒険者になったら競う相手も出来るとは思うけど。

 冒険者はせめて12歳になってからにしろとクローネ母さんに言われているし。

 この世界で12歳が成人らしい。

 平安の元服と同じ…だとオレは思ったもんだが。


 あと4年あと4年だ。

 さすがにこの村は小さい。

 せめてもの譲歩を願い、10歳になったら西の都市クレハーロに行って冒険者登録をしておこうとセドルと約束した。


 あ~早く明日が来ないかな。

 と、食べ飽きた干し肉と野菜のスープと黒パンを食べながらそう思った。


 ピザ食べてぇ~、ポテチ食いてぇ~。


 ☆


 村の西、森の方に来た。

 セドルは冒険者ギルドに召集されてクレハーロに行ってる。

 どうも危険指定の魔物が出たらしい。

 で、高ランクだったセドルが召集されたというわけ。

 いい金になるんだよーと言って愛用の杖を持ってゴキゲンに向かっていった。


 今回、オレとダグラン師匠だけの予定だったのだが、何故かソフィまでついてきている。

 オレは反対したんだが、ソフィに『ガルゥと離れたくない』と言われ、ダグラン師匠が「まぁ別に問題ない」と言うので黙っているしかなかった。


 西の森に入って十数分…最初は怯え気味だったソフィが質問した。


「パパ、西の森にはどんな魔物がいるの?」


「あぁ、えっとだな。Eランクのゴブリンに、Fランクのホワイトラビット、Dランクのテラーフォックス、D-ランクのツリーバード、まぁそこまで強い奴はいない。

 強くてC-ランクのロックパンチベアーだな。

 注意すべきなのはD+ランクのハイドトレントだな。

 注意深く観察しないと見分けられん。気配察知できれば問題ないがな」


 さすが森とあっていかにも動物や木の魔物が多い。

 それにしても名称はどうにかならなかったのか…安直だしロックパンチベアーに至っては長すぎる。

 まぁ覚える必要はないからいいか。


「へぇー。結構いろんな魔物がいるんですね」


「すごいねぇ。私の魔法効くかなぁ?」


 ソフィの魔法はなかなか威力が高めだから効くだろ。

 ただ魔力が少ないから今のコントロールだと魔力切れが早いだろうな。


「まぁお前らならロックパンチベアーなら倒せると思うぞ」


「本当ですか? 自信ないなぁ」


「大丈夫だ。俺が保証してやる」


「まぁ師匠がそう言うんだったらそうなんでしょ…──危ない!伏せて!」


 風を切る音がかすかに聞こえた、この音は鋭く尖ったものの飛ぶ音。

 矢が射られた音だ。

 60…いや50メートルぐらいか?

 雑魚だから距離の測りかたも分かってないのか、どこに射ってる。


「な、何!? パパ!」


「チッ、ゴブリンか。よく分かったなガルゥ」


「はい。音が聞こえたので」


 驚いたソフィがダグラン師匠の胸元に飛び付く。

 元・騎士らしく一瞬で構えられる心掛けは素晴らしい。


「ゴブリン!? どこ!?」


「落ち着けソフィ。ガルゥお前あの距離で判ったのか。敵は何体か判るか?」


「えーっと5体ですかね?」


 遠めで薄暗い森なのでハッキリとは分からないが、ゴブリンは緑色の肌、窪んだ目、胸と手足が細くお腹だけ膨らんでいて、人の形に近いようなシルエットだ。

 ボロボロの腰布に、4体は木を切っただけの棍棒を持っているように思える。

 一体は弓を持っておりこちらに矢を向けているな。


「よし。ソフィ、魔法で弓兵一体を殺せ。ガルゥは接近してきた奴を、俺が残りを倒す。分かったか?」


「はい。分かりました」


「えっ。う、うん。ソフィ頑張ってみるね…えっと『風よ。我に応じて矢となりて敵を穿て…[風矢(ウィンドアロー)]』」


 ソフィが流れるように詠唱した句に呼応して、緑の色をした矢が生成される。

 ソフィが作った風の矢が弓を持ったゴブリンに吸い込まれるように飛んでいく。


「グゲャァア!」


 汚い叫び声をあげてゴブリンの弓兵が喚く。


「やったぁ! 命中!」


「よくやった。ソフィ。だがまだ殺せていない。頭を狙え!」


「グゲャ! グギャアア!!」


 生理的に気分の悪くなるような雄叫びをあげながら短い脚で地面を蹴るゴブリン共。


「寄ってきたな。ガルゥお前は右の奴を。ソフィはもう一度!」


「う、うん![風矢(ウィンドアロー)]」


 師匠に言われたように右のゴブリンに向かって走る。

 その走るオレの横を緑がかった矢がすり抜ける。


「ハッ! テリャ!」


「グギ!…」


 地を蹴った瞬間には剣は半月を描いて首を飛ばす。


 オレはゴブリンの頭を切り落とした。

 地面に落ちた頭がドチャっと音をたてて紫の血の池を作り出す。

 人型をしているからといって特に躊躇はなかった。

 醜悪で血の色も赤くないのだから…。


「よし。ナイスだ」


「グァ!…」


 師匠の声を聞いて振り向くとソフィの三本の風の矢がゴブリンの顔に命中していた。

 窪んだ眼孔の奥で目を見開いたまま絶命する。


「フッ! ハッ! セイッ!」


 ダグラン師匠は一息で3体のゴブリンを瞬殺した。

 それぞれ心臓を一突きして命を終わらせられている。

 やはり半端じゃなく強い。

 囲まれていたのにも関わらず彼我の距離を正確に計って無駄なく殺していた。


 オレも師匠もゆっくりと剣先の血を拭う。

 ついた血はすぐに拭わないと剣に良くない。


「おし。片付いたな。周りに魔物はいないか…。おい、剥ぎ取るぞ!」


「は、はい。」


 魔物には魔石と呼ばれる核があり、人型は基本的に脳か心臓部に魔石があると。

 魔石を砕くと魔物は死ぬが、魔石は魔道具に使用できるので滅多に壊さないらしい。

 壊さないよう注意を払って倒すのが当たり前になっている。


「ゴブリンはちっせぇ魔石位しか取るものがねぇ。冒険者からしたら無駄な相手だ。

 その分俺たち騎士がゴブリンを間引いてるってわけさ。まぁ俺は元だがな」


「知ってますよ。村長の家の魔物についての本に書いてましたもん」


「えっ!ガルゥあの分厚い本読んだの? スゴォイ」


 魔物についての本はサイズ的にはちょっとぶ厚目の文庫本くらいだ。

 高かったからなのか数冊写しがあったのでそれを読んだ。

 生態や弱点ランク付けも書かれている有益な本だ。

 子どもでも挿し絵で理解できるようにしてあった。


「ソフィも読んだ方がいいと思うよ」


「ええー。ソフィやだなぁー」


 嫌そうな顔をしているソフィだが、嫌といいながらも多分読むだろう。

 オレがしていることは真似してくるからな。


「おい、魔石取り出すぞ見とけよ」


「あ、はい」


「─よっと、ホレこれが魔石だ」


 師匠が血に汚れた魔石を服で拭って放り渡してきた。

 魔石はツルツルしている石のようで、少しきれいな紫に鈍く光る石だった。

 個体によって差もあるらしく形は定まっていなかった。

 大きさは大体一緒でゴブリンの魔石はおよそ摘まめるぐらい3、4センチくらいだった。


「よし。もう少し奥に進むか」


「はい!」「うん!」


 ゴブリン1体を倒しただけではレベルは上がらなかった…

 C-ランクのロックパンチベアーでも出ないかなぁ…なんて。

はい。作者さんです。

体の動かしかたを文章にするのは描写が難しいです。

うまく伝わっているのか不安になりますね。

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