12 インパクト
どうも作者さんです。
家が近所の幼馴染みという存在は作者さんにとって幻です。
ここアシヤカ村は周囲を木の塀で囲み、北にロッコニア山がある。
南にペドルギア海という穏やかな広い海がある、らしい。
東は王都への道があり、西にはいくつかの村が点在しているらしく、そのまた向こうには森が広がっているとのこと。
東に馬車で一日半ほど行ったところにクレメト辺境伯領最大の都市クレハーロがある。
この村には大体400人位が住んでおり、まぁまぁな村である。
何故こんなことをオレが知ってるのかと言うと、産まれた二日後、盛大に村で誕生祭が開かれ、村長が村の成り立ちから語り始めたからだ。
その時情報が得られると思って聞いていたんだが、隣で…
「びぇぇえ!! びえぇぇん!」
と泣いた赤ちゃんがいた。
オレが産まれた次の日、産まれた子。
薄い白に近い金髪を持った子だ。
赤ちゃんなのにもかかわらず、ほぼ顔が出来上がっている、美しい顔である。
この子と幼馴染みになれるなら、精子から頑張った甲斐があるというものだ!
オレ好みの女の子に育てて、結婚出来たら最高だな!
さて、この子の親が誰かという話だが、オレの第一印象を語るにはオレが産まれた日に時間を戻そう。
そう、あれは……
オレにとって人の前で初めてお漏らし&ウンチをした後のこと…
うん。泣いた。
もう、マジ泣いた。
☆
「ふんぎゃあああ!」
こんなカワイイママにオレのベイビーおちんちん、その他諸々を見られるなんて──もうオレお婿に行けない! グズッ。
いやいや、冗談。
いやー、赤ん坊がしゃべるのはおかしいとはいえ、勝手に泣いちゃうんだよね。
この場合は『泣いちゃう』じゃなくて『泣けちゃう』だけど…
《【本能Lv1】から【本能Lv2】に成長しました》
あ、これも本能に入るんだ。
オレの泣き声を聞き付け、クローネママが小走りでやって来る。
治癒魔法があるお陰で出産後すぐに母は動けているらしい。
この魔法はセドルパパに掛けてもらっていた。
セドルは服装に紛うことなく魔法使いだった。
治癒後、少し魔力酔いをするようでクローネは、苦しそうに呻いていたけれど。
「よしよし。ママがきましたよー」
「びぃえぇ…」
あ、キャーみないで!
オレのちっさなおちんちんみないでー、でもお尻ふいてください。
お願いしますママン。
「あらぁ。ウンチしちゃったのね。オシメ変えましょうかぁ」
うっ! くっ!
仕方ないとは言え、なんて屈辱感。
………
あ~スッキリするわぁ…
ベタつかないスッキリした感覚。
スッキリしたらお腹空いてきた。
母乳ください。クローネママン。
「フフッ、今度はごはんなのねー」
いやぁウンチ終わりの母乳は旨いわ。
やっぱり体全部が変わったからか、美味しい。
牛乳より薄いって話を聞いたことがあるけど確かに薄いといわれれば薄い。
母性溢れる艶めかしい顔をしてる…かといって、イヤラシイ気分にはならないんだよ。
不思議だなぁ~
柔らかくて暖かい、スーパーミルクタイムである。
「クローネ~。私にもガルゥ抱かせてぇ」
「お、おい! サリシャ! 走るな走るな!」
「いいじゃないの。ワタシ、ガルゥを早く抱きたいの!」
ん? 聞いたことのない声だな。
オレのスーパーミルクタイムを邪魔するとは無粋なやつらだー。
冗談はさておき、女性と男性?
テンション高めの女性と、それをなだめる低い声の男性。
「ハーイ! ガルゥ~! サリシャ・メテ・チヨクスでーす。ヨロシクね~!」
「ハァ、サリシャ…まぁ、いい。ダグラン・チヨクスだ。よろしくな、ガルゥ」
ウッワ!
なにこの美女!
うちのクローネママがカワイイの極致だとしたらこのサリシャさんは美しいの極致だな!
綺麗すぎない?
このサラサラの白に薄い青がかかったロングヘアー!
目鼻立ちがくっきりしてて、眉が細く、睫毛は震えるほど長い。
身長は高くて多分170近くはあると思う。
脚が見えないからなんとも言えないけど、こりゃあスタイル抜群だろう。
ちなみにうちのクローネママはこの世界だと恐らく小さい。
150あるかないかってところだな。
平均的には165前後じゃね?
以外にもセドルはちんまい娘好きなのかもしれない。
話を戻すとサリシャさん、妊娠してるけどボンキュッボンだったのは分かる。
お腹の膨らみより、胸の膨らみの方が若干うわまってる。
すげー。この異世界レベル高すぎ!
そして横のムキムキのオッサン…!
筋肉の塊みたい、ムキムキでない場所が見当たらない。
頭は短く刈り揃えられていて、肌は浅黒い。
眼光は鋭く睨んでんのかと思うほどだ、これでも赤ん坊を見て少したれ目になってるようなんだが…
身長は190位有るんじゃないか?
こっちが小さすぎるだけかもしれないが…
ハァ。外見のインパクト強すぎ。
「ちょっとサリシャ…急に来るからガルゥが怖がっちゃったじゃない」
「あ~ら。ごめんねぇ~ガルゥ~。でもクローネ、怖がらせたのはダグランの方でしょ~」
ちょっ! ち、近い近い!
ウッ、肌しっろ!
急に迫られたらビックリするほど綺麗!
心臓止まりそうだ。
クローネ母さんに視線が変わったから少し落ち着いたけど、非常に心拍数が高い。
「こら、サリシャ。ガルゥがビックリしてるだろ」
「う~ん、そう? ゴメンねガルゥ~。ねぇクローネ? ちょっと抱かせてもらっていい?」
「いいわよ。ガルゥ、サリシャさんですよ~」
「ありがとっ。わぁ~かわいいわぁ。うちのソフィと仲良くしてねぇ」
クローネ母さんの腕からサリシャさんの腕に移される。
あぁっ! 綺麗すぎて怖い。
この距離ではムリだ。
目をつぶらざるを得ないっ!
不意に入ってきた匂いはいいにおい。
なにか心が洗われる気がする…
ん? ソフィって?
「あら。もう名前決定したの?」
「うん。ソフィティア・チヨクスっていうの」
「サリシャが気に入ってな」
へぇー、ソフィティアか。カワイイ名前だこと。
ダグランさんがオレを構おうと手を不規則に動かす。
顔は怖いけど、いい人みたい。
て言うかこの世界、産まれる前に性別の判断出来るの?
「女の子だって分かったの?」
オレが聞きたいことをクローネ母さんが聞いてくれた。
やっぱりエコーみたいに判別は出来ないみたいだな。
「間違いないわ! 絶対女の子…い、イタタ」
「お、おい。どうしたサリシャ!」
お腹を押さえて急にうずくまるサリシャさん。
突然のことで焦ったのか声をあげて、ダグランさんがサリシャさんを支える。
それを受け入れ、苦しそうに顔をあげる。
未だにオレはサリシャさんの腕の中だ。
オレが怖がらないようにとても優しく包んでくれる。
「始まっちゃったかも…クローネ、ガルゥを。い、イタイ…」
「うん! 早くヘノラさんとセドルを呼んでこなきゃ! ダグランさん! うちの夫とヘノラさんを呼んできてください! この村、夫ほど治癒魔法上手な人いないので! たぶん畑にいると思います!」
「分かった! サリシャを頼んだぞ! クローネ!」
「はい!」
陣痛が始まってしまったみたいだ!
クローネ母さんによって、オレは素早く揺りかごに戻された。
こうなると応援しか出来ない。
せめて苦労事を増やさないように泣かない。
ビックリして泣きそうになったのは押さえ込んでやる。
サリシャさんもソフィも頑張れよ!
はい。作者さんです。
強面と美女って美女と野獣感があって好きです。




