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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第一章 ゴールデンなところから
12/115

11 誕生

どうも作者さんです。

痛いのは嫌いです。

親知らずは抜くときよりも抜いたあとの方が嫌いでした。



ぐぎぁぁぁぁあ!!!

 痛い! 痛い! イタタタ!


 《激痛耐性Lv2を習得しました》


 出産痛すぎ!

 耐性あってもまだいたい!

 アン! あととれぐらいで出産完了する!?


 《3時間14分2秒後出産完了予定です》


 うげぇ! 3時間か!

 もうむり! 【思考】スキル中止! 再使用は3時間15分後だ!


 《承知しました。【思考】スキルを中止します》


 予想だにしていなかった激痛にオレは叫ぶようにして喚く。

 アンはちゃんとオレの意思を汲み取ってスキルを停止させる。

 アンの声が終わったところで意思は沈んだ…


 ☆


「おぎゃゃああ! おぎゃあ!」


「クローネ。産まれましたよ! 元気な男の子ですよ!」


「あぁ! 私の赤ちゃん! 良かった…」


「クローネ! よく頑張った! お疲れ! 本当にありがどう…私たちの息子だよ…グスッ」


「なに泣いてるのよ…セドル……フフッ」


「貴女も泣いてますよ。クローネ」


「し、仕方ないじゃないですか。ヘノラさん。嬉しくて仕方ないんですよ…」


 《3時間15分が経過しました。【思考】スキルを再使用します》


「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃ…あぁ!」


 おぎゃあ!

 あ、アブねぇ泣くの止めるところだった。

 急に考えられるようになってびびった。

 肺に冷たい空気が入っていることが急速にオレの脳を冷ましたんだ。


よしよし、【言語理解】ちゃんと効いてるな。

 言ってることちゃんと分かるし。

ま、クローネ母さんのお腹の中でも聞こえたものな。


 にしても……こ、これが異世界の空気か。

 地球よりちょっと澄んでるかな?

今は冷たすぎて分からないけど。

あと、飽和してるんだけど頭が痛い。

体も縛られた後のような血流で震えてる。


  うわっまぶしっ!

 眩しくてまぶたを開けられない。

 せっかくのママの顔が! 見れない!


 《閃光耐性Lv1を習得しました》


 よし、ナイスタイミング。

 これで見えるようになるかな?

そっと目を開けて…


ぼんやりとした光景が不鮮明に、されど煌めくように脳に伝達され感じとる。

一面の黄金世界。

その先に見える母君は──


 えっ!?

 うっそ!! かっわいい!

 オレの母親こんなにかわいいの!?

 この薄い茶色に赤みがかってるボブカット、顔がなんとまぁ小さいことよ。

 鼻の筋は高めで、眉は綺麗に整えられ、汗で張り付いた前髪が美しい。

 嬉しさで目を細めていても分かるくらい、透き通った赤目が可愛さの奥に綺麗さを際立たせている。

 この美しさは前世でもトップクラス。

 いや、世界一かもしれない。

 とにかくそれくらいかわいい。


 首を少し捻って周囲をチラ見する。

 おっと、この男がオレのパパかな。

 覗き込まれるその顔はだらしなく緩ませているが、嬉しくて仕方がないのだろう。

 全身像は見えないが、パパは多分身長170とちょっとぐらいで服装はいかにも私魔法使います! って感じ。

 紫と、黒が入り混じったようなローブを身に付け、首から下げたペンダントがキラキラチャラチャラと揺れる。

 小さな宝石が嵌めこまれた円型の紋様が刻まれたペンダント。

 高価なのは分かるのだ。

ただ、いい感じに揺れるペンダントにオレの赤子心はくすぐられる。


 腕を伸ばすとパパが自分に伸ばしたと勘違いしたのか、柔らかく手を包み込む。

 少し冷たい、男の手だ。

 自分の体温が高いせいで余計にそう思う。

 赤ん坊というのは総じて体温が高いからな。

涙ぐむのは、あとにしてくれ─威厳がないぞ。


 パパの髪の毛は金髪でちょっとチャラっとしてる印象。

 顔は結構なイケメンだった、前世の常識で言うとだが。

 金髪は地毛だろうから染めた訳じゃない。

優男って言う感じではある。

 この2人の息子ならイケメンだという望みは高い。


「この子の名前は! ガルゥシュ・テレイゲルだ!」


「ガルゥシュ? どうして?」


 突然セドルパパが新たなオレの名前となるガルゥシュ・テレイゲルという名前を叫んだ。

クローネ母さんが疑問に感じたのか尋ねる。

 姓はテレイゲルか。


「響きだ!」


「セドル! なんて名前の付け方してるの! あんなに相談したのに!」


「し、仕方ないじゃないか。この子をみたら浮かんだんだ」


「ハァ……確かに少しでも迷ったら子どもを見て決めてって私は言ったけど…響きだけで決めるなんて…」


「まぁいいじゃないか。ガルゥだって! ほら! 見てごらん。こんなに笑ってるじゃないか!」


 いやぁ──いい名前じゃないか?

 ガルゥシュ・テレイゲルなら、かっこいい。

 我が名、我が名は ガルゥシュ・テレイゲル!

 なんちゃって…

 ま、そりゃ洋名がつけば期待が膨らんでニコニコしちゃうって。


「…分かった分かったわ。ガルゥシュね。この子がこんなに笑顔なら仕方ないわ。

 えーと、ガルゥ~私がママですよ。クローネ、クローネ・テレイゲルです」


「おっと、そうだったオレの名前はセドル・テレイゲルだ。パパだぞぉ」


「キャハハハ!」


 一応赤ん坊らしく振る舞わないとな…

 名前はお腹の中で聞いたから知ってるよ、きっと永遠に忘れられない名前。


 うんと、ま、まぶたが重くなってきた。

 こういう時は眠るに限る。

 おやすみパパン、ママン……




「あら、寝ちゃったかしら。ンー…カワイイ…

 あっそうだわ、セドル。この子の魔力感知できる?」


「え? もうかい? あまりにも早くないかい? 普通一週間位で魔力が発現すると思うんだけど…」


「あのね、セドル。

 ガルゥがお腹のなかに居たとき、何度もお腹のなかがとても暖かくなる時があったの。もしかしたら、魔力が出てたんじゃないかと思って…ね」


「そんな不思議なことがあったのかい、まぁクローネが言うなら感知してみるよ?」


 男が息を吸って持っていた杖に魔力を込めていく。


『この地に満ちる魔の力よ。我が意に沿い、周囲の魔力を我に伝えよ【魔力感知】!』


 淡い光が薄く赤子に集う。


「……す、凄い凄いよ! ガルゥ…産まれてすぐなのに10以上も魔力を持っているなんて…!!」


「ほ、ほんと!? ガルゥ凄いわ!」


「これは凄い魔道士になるぞ!」


 父と母は手を取り合って笑みを浮かべる。

 腕に抱かれた赤子は癒しの顔を浮かべ穏やかに眠る。


 過酷な精子の世界を生き抜いた、転生者。

 ガルゥシュ・テレイゲル 誕生

 王国歴537年8の満月の日

はい。作者さんです。

ここで一段落。

ガルゥの誕生日は、今の8月18日。

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