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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
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100 タイマン

どうも作者さんです。

忙しさにかまけて一ヶ月も更新せず申し訳ありません。なるべく頑張って書きます。

 

 今、オレの顔はどうなっているだろう。

 ボルキーのせいで強引に格上の相手だと思うモルゼルとタイマン張る羽目になった。

 オレとしては非常に迷惑である。

 それを考慮するとやはりオレの表情はしかめっ面か?

 もしくは恐怖に歪んでいる? んーそれはない。

 はたまた武者震い? いやいやオレがそんなタマか?

 オレは基本的に小物なんだ。


 ただでさえ異世界に来て、神童だともてはやされて気が大きくなってるだけのバカなんだ。

 誰だってちょっと誉められれば嬉しくなってその分野では得意気になるだろ?

 それが顕著に出てるのが今のオレだ。

 同じ年頃の奴と比べてホンの少しだけ頭一つ抜けてるぐらいの強さ。

 地域大会では敵なしだが、全国には行けないような強さ。

 世界最強なんて夢のまた夢。


 そんなもんだ。

 やだわー、前に強くなるって誓ったろうが。

 どんなに魂の力が強かろうが、精神が強くなけりゃ物理的に死んでこの世界からオサラバだ。

 精神を鍛えたい、そのためには何か壁を打ち破るもんなんだろう。

 物語の数あるなかで成長を見せない主人公はいただろうか。

 いずれも壁を乗り越えてこそ成長し、人々を惹き付けてきたんだ。


 こう、簡単に緊張とかビビりとかと無縁になる方法は無いだろうか。

 緊張なら手のひらに人を書いて~ってやつだったりするが、効果なんて期待する方がバカらしいもんな。

 やっぱり…期待できるのは呼吸か。

 深呼吸。それも、深い深い深呼吸。


 スッーと入る集中には、長く吸い長く吐く呼吸が大切。

 自分のリズムが出来るからな。


「さて、と言うことで。あんたを打倒し、オレの壁を乗り越えて見せよう!!」


 と、まぁキャラでも無いことを口走ってみる。

 少しは強く見せれるかという虚栄なんだけど……

 あぁ……案の定、足が震えてくる。

 殺し合いは慣れるもんじゃないな。

 つーかどこ見てんだ、このモルゼルさんはよー?


「おぉーその粋さね少年~、スキルに頼ると死ぬから頑張りなね~?」


「…いいことを教えてやろう、小僧。スキルはただの数値だ。自分が得意と言える長所を分かるようにしただけのな。それが分かるだけでも優秀だがな」


 何この人、なんでこんなこと教えてくれるの?

 え? 意外といい人だったりする?

 ボルキーはボルキーで雑だしよー。


「おやおやぁー? モルゼルきゅん教えてあげるなんて律儀だにー?」


「スキルを信じるならお前が言ったようにむざむざ死ぬだけだからな。……それではつまらない」


 おいおい、結局こいつも戦闘狂かよ、どいつもこいつも戦うことに喜びを得やがって。

 まぁ言いたいことも分かる。

 多分、いくら剣術スキルが高くても経験や微妙な感覚が培われていないからかな。

 やはりスキルってのはひとつの指標なんだろう。


 魔物相手だったらスキルの差がありありとわかるんだろうが…

 こと人と人では技術や研鑽の歴がハッキリと出てしまうってことだ。

 そしてオレは剣を握ったのは早いが、いかんせん体の成長によって微妙に感覚が狂う。

 感覚が狂うと剣の一振りでも切れ味やリズムが変わってくる。

 要するに体の変化に剣術の出来が左右されてしまうってことだ。

 はぁ……それでもボルキーが手を出さないと言うならオレの全て絞り尽くすほどの全力でいかなけりゃダメだってことだ。

 いつだって、他人の生死を選べるのは強い方だ。


「ほんじゃあ、あちしはこのおデブさんと愉しい楽しいお話さね。若いお二人で、あとは楽しんで…ってにー」


「おい! やめろ! ボケ女が! このフォゼット筆頭執務官に触れるでない! お前なんぞとは話すこともないわっ!」


「うるさいにー、あとで色々聞かせてもらうから今は黙ってほしいさ、ね!」


「ウゴッ──」


 さっきからギャーギャー喋ってるデブ野郎はボルキーが首根っこを引っ掴んで、オレが入って来た方とは違うドアから引きずって出ていった。

 服を掴んで引っ張ったので首が絞まった形だな。

 確かに黙らせるには一番かもしれない。

 どうにか息をしようともがいていたが、太りすぎた指は襟と首の間にも入れれなさそうだった。


 まぁこれで集中を乱しそうな二人は出ていった。


「この依頼は達成できそうにないか、まぁいい自分の身をまもらせてもらう。…さぁて、覚悟は決まったか? 小僧」


「スゥー、フーー。はぁ、戦わない選択肢は無い…よな。逃がしたらボルキーに殺されそうだし。……やろう」


「マシな目になった。まだ足りないが…楽しむことは出来そうだ」

 

 もう、話す必要もない。

 今、集中すべきは目の前、ヤツの一挙手一投足を見極めることだ。

 相手に先手を打たせてカウンターを取る技術はオレには無いと言っていい。

 カウンターでは後手に回ることになる。

 格上にはとにかく先手を……


 未だ抜いていないオレの剣、クンペルを抜こうと右手を動かした、と同時にモルゼルの手が動く。

 まるで見えない手の動きを予測し、一ミリでも速く剣を抜く。

 クンペルは片手半剣、いわゆるバスタードソードなので両手でも持てるように長い。

 こんな室内で振る剣じゃないし、抜くのも時間が掛かる。

 だが相手との距離がある今、それは大した問題じゃあない。


 とにかく姿勢を低くして走る。

 風切り音が頭上で鳴るのを意識してゾワッとする、あの一瞬で何か投てきされたことに。

 けれども、走り出した体を止めるわけにはいかない。

 抜き放った剣を両手で持ち、地面スレスレに剣先を下ろす。

 絨毯ぐらいなら軽く切り裂いてくれるだろうと信じて。


 ヤツとの距離はそこまで遠くない、一呼吸でたどり着く。

 たどり着く瞬間の一撃をクンペルで行う。

 正確にはその一撃をクンペルだけでは行わないが、当てるのは一撃だけだ。

 戦いに卑怯はない。

 ましてや、これは殺しあいだ!


「光れ! 光明を手繰れ!」


 短く発した言葉は短縮詠唱、あまり必要ではないがオレの思った通りに現象は起きた。

 生で見たことはないが閃光手榴弾の光よりは強くないだろう光、さりとて弱くはない。

 懐中電灯を直接目に当てたような光だ。

 それをオレとモルゼルの中間の位置で発光させる。

 魔力を介在として解答解説(アン)の補助で特殊スキル【光】を発動した。


「──ッ」


 オレも同様に食らうが閃光耐性が中和する。

 後ろに仰け反るモルゼルが見え、クンペルの刺突圏内だと悟る。

 耳に対しての絡め手は出来ることが無いから、音を察知されたら(かわ)される。

 だから今回は叫びもあげることなく、隠密のスキルをフル活用する。

 ヤツの心臓目掛けてクンペルを引き構え──


「カァッ!!」


「──っな」


 急に構えた剣先がガクンッと下に下がる。

 走っている体が前のめりになるのを知覚して、ようやく絨毯が引っ張られたのだと気づく。

 グッ、なんでその事を考慮しなかった!?

 こういうのが経験の為せる行動なんだ。

 そこにあるものを全て活用する。


 崩れた体勢ではクンペルの重さによって倒れてしまう。

 なんとか立て直さなくては、考えてる暇もない。

 何か何かないか、なんでも使え──魔法だろうと剣だろうと体だろうとそこらにあるものを!


 クソッ何も物がない。

 無ければ生み出すしかねぇだろうよ!

 推進力を失わず前に、かつ倒れないことが大前提。

 ……ダメだ、どれもこれも二つを達成できない。


「─ぅブッ」


 無様にこけた。

 受け身を取ることもできず、ただただ無様に顔面から。

 瞬時に感じたのは死の恐怖。前にリテラが起こした夢の中で感じた暗黒に近い。

 モルゼルの致死の短剣が頭上に迫っている気がする。


 ─死にたくない!


 まだオレは死んだことがない。

 勝手に転生させられたのは死がきっかけではないし、もちろんこっちでも死んでない。

 死に直面するとこれだけ強く死にたくないと思うものだと悟った。

 死にたくない。ソフィと話すことが一杯あるのに言えてない。

 ゼンと試してない技を練習出来てない。

 セーベとの約束を果たせてない。

 特待生全員で美味しいものを食べれてない。

 ──セドル父さんとクレール母さんに会いたい。


 まだまだこの世界でやることは山ほど残ってる!

 キッと顔を上げ、モルゼルを倒すんだ!


「まだ死なねぇ!!」


 顔を上げた先には目くらましが効いている状態でなお、目星をつけたモルゼルの短剣。

 首を捻って死を避け──


 血が吹き出た。

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