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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
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99 提案

 

 さて、この現状をどうするか。

 まず…オレの足元に焦げた服を着て転がっている神父、そしてこれまた豪華な服を着てワナワナ震えているデブ、で…剣戟を続ける黒色コートのモルゼルと、サラシを巻いただけの露出狂ギルマスのボルキーだ。

 一部屋でこんなにも訳のわからない状況になってんだから誰かどうにかして欲しいよ…ったく。


 愚痴ってても何も解決しないし…とにかく一番目立つ剣戟をどうにかしよう。

 さっきからずっと部屋に金属の音が響き続け、正直ちょっとうるさいと思い始めてきた。

 ぶっちゃけて言うと激しすぎて集中してないとボルキーの剣が見えないくらい着いていけてない。

 やっぱり、ああいう素早い剣さばきも必要な技術だな。

 いくら剣術スキルがあっても慣れていないとろくに活躍しないだろう。


 つまるところ…どうやって止めれば良いのか分からんのだ。

 ちょくちょくボルキーの奴がモルゼルを煽るかのように何か言ってるが煽るぐらいなら決着つけてくれねぇかな。

 あーこれやっぱりオレの動きを見てるよな。

 チラチラとオレと目が合う。

 オレが対応しない限り、ボルキーは手を抜いたまんまだろう。


 オレがコイツらより超絶強かったら簡単に一喝で止められたんだろうが……

 変な力の無い物ねだりは無意味か。

 さー、どうすっか。


「え~とオレは、こうしたらいいのか?」


 薄い金属の刃が涼やかな音色を奏でる。

 なんだか久しぶりにも思える、オレの愛剣クンペル。

 その抜剣はオレの心を奮い立たせる音であり、どこか恐怖を思い起こす音でもある。

 この音で、まずは第一段階クリアかな。

 モルゼルの意識がかなりこっちに向いたはずだ。

 さらにだめ押しで……

 

「うぉおぉおおお!!」


 無意味な叫びをしながら剣を振りかぶり、体の全面をさらけ出す。

 こうすることでモルゼルにとって取るに足らない存在だと感じさせる。

 ボルキーはそれまで色々しゃべっていたのを面白いものを見れると言った期待の顔をして黙りやがった。

 まぁいい、それでも未だにモルゼルの意識の大半はボルキーによる熾烈な刺突に他ならないんだから。


 さて、だ。

 ここでボルキーがワンアクション起こしてくれないとわりと面倒なことになるんだよなぁ。

 避けられる可能性が高くなるからだが……

 アイコンタクトを試みるが、伝わっているのかよくわからない。

 一番良いのは顔面への攻撃を繰り出してくれることだ。


 くぅ、まだ振れない、引き付けられているような気がする。

 チッ、もういい狙う!


「だりゃあぁあ!」


 剣先ギリギリがモルゼルを捉える。

 が、固い金属音が鳴り響いたことで失敗を悟る。

 チィッ、やっぱりダメだったか。

 きっちり短剣でオレのクンペルを受けられていた、体を捻った体勢で。

 マジでかよ、至近距離でさえこっちに目も向けてきやしねぇ。

 くっそ、そのモミアゲ引き千切ってやろうか!


「んー、やっぱり少年~足りないねぇ。『死ぬ』覚悟が出来てないからこんな男に軽くあしらわれるんさね」


 んぐッ、腰が引けていることを指摘されているようだ。

 いや、まぁ確かに安全策を取っているよ?

 でもよぉ、さっきの剣さばき見て余裕で勝てるって思うかよってハナシですよ。

 安全マージンを取らせて欲しい、せめてオレが強くなるまで五年ほど待ってください~。

 とか、言ってられねぇんだよな?


「邪魔をするな小僧、うっとおしい。っぐ、ボルキー・ヒキュウ!!」


「にゃはは、あちしにそんな隙見せたらダメさね~」


 あっぶねぇ、ボルキーがモルゼルの隙を付いて脇腹を突き刺してくれなきゃ簡単に蹴飛ばされてたな……


「モルゼルきゅん、提案があるさね」


「……なんだ」


 今攻めていいのか?

 でも完全にボルキーの奴、剣を下ろしてるし……取り合えずアイツの話を聞いておくか。


「いや、ね? モルゼルきゅんには是非ともその少年を殺しに掛かって欲しいのよん」


「は? なんだって?」


 いやいやいや、何言ってんの? コイツ?

 急に頭おかしなったんか?

 …思わず訳のわからない口調になってしまったが、ホントに何を言っているのだろうか?


「しょうねん~、君さ、あちしがいるから判断を先伸ばしにしようとしてるにー? 一人で決着をつけたことはないでしょ?」


「なんだ、何を言いたい。ボルキー、お前はやはりオレの敵なのか?」


「んにゃ、明確に敵ではないと思ってもらって結構さね。あ、いやー嫌いなら敵と思っても良いよん~。ただあちしは君の将来が(たの)しみだからさ。ここでくたばるようならって?

 うわっと…もぉ~、あぶにぃなぁ、モルゼルきゅーん」


「おしゃべりな奴だ、言え。俺の利点はなんだ? このモルゼル・ラグィンにとっての利点を」


 あ~もうぐちゃぐちゃだ。

 オレが喋ろうとしたのに、モルゼルに結論を急がせられた。

 きっちり頚動脈を狙った一撃を軽く首を動かすだけで避けたボルキーがすげぇ。


「モルゼルきゅんが受けてくれたらあちしは手を出さないってのはどうだい? 少年を殺してもあちしは仇をとるような真似はしないさね。……ただしこれは依頼じゃない、お願い。受けないならあちしがもう決着をつけちゃうよん」


 殺されても放置されるのかオレ。

 え、一切オレの事情は関係なしなのか?

 なんか敵な気もしてきた。

 いや、でも結局あれだろう? オレが転生者で面白いことをしてくれるだろうから奴にとってオレの将来は愉しそうなんだろう?

 敵ではないと思っていいな。

 おそらく……ここで一段階強くなってくれればっていう考えだろ?


「……なるほど、それは助かる提案だよ。お前は非常にやりづらいからな」


「にぃひ、じゃあどうするね? 受けてくれるんさね?」


「いいだろう、受けてやる 」


 ニマッとするボルキーにイラッとするが仕方ない。

 覚悟だ、もうクレールとかエミッタが来るだろう。

 時間は無い。


「悪いな小僧。お前を利用させてもらうよ」


「勝手にオレの命を賭けられてんだ。精一杯抵抗させてもらうぜ」


 剣を、クンペルを構える。

 オレに頼れるのは今はこのクンペルと多少多い魔力、そして【解答解説(アン)】だ。

 覚悟、勇気、一欠片でもわき出てくれれば勝てるさ。

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