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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
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地下道

どうも作者さんです。

近頃どうにも眠気が取れません。アクビは止まりません。

 


 新しい世界、新しい環境。

 不安や緊張が渦巻き、胸は鳴っていた、それでも期待が大きかった。

 でも、まず与えられたのは試練だった。

 もしくは終わり。


 誘拐された。

 このあとどうなるか、それはあの神父が握ってる。

 生贄とヤツは言った。

 私だってその意味は知ってる。

 かつて似たようなことがロクシュの里であった。


 神樹ロクシュタリアに捧げようとしたのだ、小さな子どもを。

 今よりも昔だったから詳しいことはあまりしらないが、疫病を防ぐためだったらしい。

 その生贄にされた子どものことは分からないけれど、生贄に意味は無かったようだ。


 意味がないことに命を捧げられる。

 そんなことで散らされる命は満足か。

 あり得ない。

 …そのあり得ないと考える脳はないのだろうか。

 ないのだろう…むしろ命を捧げられる栄誉とでも考えていそうだ。


 …その生贄にさせられる。

 まちがいなく私の価値観とは全く異なるだろう。

 女神が何者なのかさえ分からない、もしかしたら教典に『肌の真っ白な者を生贄にせよ』とか書かれているのかもしれない。

 もしそうであるならば、私は女神を絶対に許さない。

 許せるはずもない…


 意識が落ちる中で考えることはそういうこと。

 落ちながらも沸いてくる感情。

 恨みや怒りは意識を強引に引き上げた。


 未だに紫の煌めきがどんよりと目の前を隠している。

 瞼を開けても見えるのは闇。

 紫の闇だ。

 嫌がる闇精霊たちだ。


 どうしようか。

 流石に精霊たちに干渉して散ってもらうというのは厳しい。

 どう干渉したらいいのか分からないし…見えていると言っても精霊のことはルーメンに聞かないと分からないのだから。

 お話しできるのなら良かったのに。

 意思を伝えるだけでもいいから…


「フホホホ…これで私も一気に総大司教、上級位階の仲間入りです…フホホ。

 それにしても実に運が良い! まさか雨の降る哀の日にこれほどまでに喜ばしいことが訪れるとは!! 私にとっては喜の日と言っても過言ではないでしょう!

 ホホ…やはり精霊魔法は使い勝手が良い。神聖魔法とも非常に相性が良い。

 聖杯と共にヨンチュウに向かえば、あとは完璧に儀式をこなすのみ!」


 意識が覚醒していたせいで神父の高笑いが耳に入った。

 今考えれば笑い方が気味が悪い。

 所々重要そうなことが多くでてくる。

 総大司教、哀の日喜の日、精霊魔法、神聖魔法、聖杯、ヨンチュウ。


 前の二つと聖杯は教会の話だと思う。

 神聖魔法も、かな。

 ヨンチュウは都市名かな…? ひょっとしたら施設のことかもしれない。

 神父だけあって見事に教会関連ばかりだ。

 だけど、上級位階…完全に出世を狙う野心を持ってる。

 しかも酷く歪なズルさを見せて。


 いずれにしても私には関係無い。

 これから生贄にされるということなら…でも、絶対逃げてやる!


 精霊魔法か…私も精霊さんたちと仲良くなれば…使えるのかなぁ…?

 使えたらこの闇精霊たちが退いてくれる?

 ……使えないとこれから生贄にされる!

 でも、さっきのテーベの蹴りは防がれたはず。

 例えば、精霊たちが退いて動けるようになったとして手足の紐は? 神父はどう退ける!?


 とにかく精霊魔法を!

 どうすればいいだろう、話しかけてみる?

 それにしたって難しい。

 猿ぐつわを噛ませられているから。

 神父はどうやって操ってたっけ、腕? 手かな。


 指とかで動かせないかな…指は自由だから。

 こう指をグーからパーに…

 やってみよう…せぇーの!


 うごいてぇー!


 気合いを入れてやると、指先に力が灯るように引っ掛かりを覚えた。

 指がつりそうになった。

 けど、顔の目の辺り…そこの精霊がぶれるように感覚が無くなった。


 うまくいった!?

 でも、ちょっとだけの時間だったのに…疲労感が指から全身に蓄積されたような気分になった。


 鼻息と鼓動が荒くなっている…目を閉じているとよく聞こえる。

 あとは神父の鼓動も。

 荒い……興奮しているのか、歩くのも急いでるわけでは無さそうなのに速い。

 私は何かの上に椅子から外されて乗っているみたいだった。

 何かは分からない。

 何だろう固い床、ガタガタ言ってるから荷車?

 雨の音が全く聞こえない。


 考えている間に疲労が少し薄れたような気もするから、もう一回精霊魔法に挑戦してみよう。

 さっきと同じように手をグッと握って精霊が散るような想像をする。

 せーのと心で構え、パッと手を開く。


『──あわわ─わぁ?? おぉ! ─ッブバ』


 無邪気な思念のようなものが言葉のように脳をよぎる。

 それは喜びに満ちていたようで視界が開けたことで精霊たちの動きでそれは分かった。

 やはり連れられていたのは暗い地下道のようだった。

 神父が持つランタンの明かりで歩けるだけの光源が確保されている。

 乗せられているのも荷車、野菜か何かを運ぶ荷車だ。

 周囲を確認していると、辺りに散っていた闇精霊たちが何かを吐き出した。


 キラキラの粒子だ。

 花粉のようにも見えるけど暗闇において強く光っていることが分かる。

 少し空中を停滞した。

 その後、他よりも大きめの粒子に一気にくっついていく。

 それは一瞬にして形作った。


 ルーメン!!


 声にはならなかったが、かの精霊はこっちを見てうっすらと微笑んだ。

 いつからだろう、私を守るように顕現したこの精霊が残念だと錯覚していたのは。

 彼女は、美しさを持っている。

 分からなかった、こんなにも綺麗だと、こんなにも嬉しくなるのだと。


 いつものように、おちゃらけた雰囲気は全くなく、むしろ儚く可憐で。

 かの精霊は軽やかに闇精霊たちの合間を抜うように動いた。

 嬉しくてルーメンを見ていると、


 神父と目があった…

 だけど何事も無かったかのように前を向いた。

 暗くて見えなかった?

 まさか、ルーメンはほのかに発光してる。

 もしかして、精霊が見えてない?


 …勝機が見えたような気がする。

 勝機というより脱出口が。


 ルーメンはそんな神父のことを微塵も気にすることなく私に寄ってきた。

 正確には手足に括られた紐に。

 少しの時間が流れ、どうやったのか分からないけど紐は確かに切れた。

 猿ぐつわも取ってくれた、ルーメンは疲れたのか胸のポケットにおさまった。


 神父は前を向いている。

 こっちの状況を捉えていないとは思う。

 やるなら今ッ…

 口内にあるドングリをかじる。

 テーベに体の主導権を渡すために。


 ……


 セーベがどうにかして眠りから覚め、紐を取ったようだ。

 そこまでしてくれたら、あとはアタシの番だ。

 近接戦は四肢が動くなら勝てる。

 さっきの蹴りは思いきりが足りなかった。


 覚悟を強くし、起き上がろうとしたところで、突如神父が足を止めた。

 ランタンを壁の突起に掛けた。


「こちらですねぇ、まずはあのお方に…」


 小さな扉の前で止まっていた。

 こちらの体の動きも止まってしまう。

 相変わらずちょっとしたことに弱い、相手の動きに合わせる癖がある。

 にしてもあと少し道が続けば奇襲出来たろう。

 運がない…奇襲は出来なかった。


「ホホ…お目覚めですか。ご機嫌はいかがです?」


 余裕か、はたまた虚勢か。

 神父は自然な動作で足を引き半身になる。

 格闘技をやっていたであろう動きだ、心臓を隠すような立ち位置。

 腕は緩やかに下げられている。


 思っていたがコイツは左利きだ。

 右の拳の握りが薄い、受け手の握り方だ。

 おそらく左拳は強めに握られているはずだ。

 右手首はそもそも先の蹴りで砕かれているはずだからそうするしかないだろうけど。


 片腕を捨ててでも攻撃しないと私が逃げることをわかってんだろう。

 推測でしかないけど、頭のネジが外れているだけで判断はいいんだコイツは。

 荷車からでは土台が不安定で行動しづらい。


「いくらやろうとも無駄でございますよ? そのような小柄な貴女では」


 今更、性別を言われても関係無いな。

 アタシが小さいのは知ってる、体格は努力次第で意味をなくす。

 今はかなり冷静だ。


「女神に供える神前試合にでも致しませんか? この様なところでは勿体ない…」


 何をいってる。

 女神中心に回りすぎだ。

 はぁ、とにかく……ぶちのめす!!


はい。作者さんです。

ガルゥシュが出るときはサブタイトルに数字をつけています。

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