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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
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93 雨粒

どうも作者さんです。

プロット通りにいくことなどあるのでしょうか。少なくとも作者さんは無いです。

 

 ──あぁクラクラする。


 思考が纏まりをつけられない。

 感情が切れ味を強めていっている気がする。

 あまりいい考えが浮かばなかった。

 どんどん卑屈になっていく考え方だった。


 そもそもこんな無意味な時間を使うことなく、純粋に探せばよかった。

 まだソフィが街中にいると思って動けばよかった。

 それもおかしいか。

 何かを言うんだったら昨日のうちだったって話だ。


 それにしても何のために探してるんだ?

 見つけたいっていう自己満足のために動いてるんだろうなぁ。

 もう己のために動くことをやめよう。

 彼女は行ったのだ、自らの未来を掴むために。


 …諦めるという話ではないが、ソフィがいないのであれば祈るだけだ。

 もしかしたら…いなくなったってのは、メルネーちゃんの勘違いかもしれないな。

 まぁ、おそらく違うだろうけど。

 もし今もソフィがクレハーロでいつもどおりに生活していたら昨夜の言葉の意味がよくわからなくなる。

 オレにソフィが釣り合わないだの、強さが違う…とか、どういうことだ…ってなる。

 強さが気になっているならソフィは修行に出たのだと考えられるから。


 そもそもだがオレ()ソフィ()見合わないんじゃなくて、ソフィ()オレ()見合わないって思う。

 前世のオレであれば余計にそうだし、今のオレでもやはり合わないのだ。

 ソフィはオレにはキレイすぎる。

 純真で美しく穢れがない。

 化粧抜きで研ぎ澄まされていく美しさだ。


 対して、汚れているオレはもう少し頑張らなくては。

 そうだ、有名になろう。

 有名になって盛大にソフィを迎えにいこう。

 それまでは地道に地を這うように成長しよう。


 あぁ、雨だ。

 降ってきたな。

 ソフィの門出には相応しくはないが…天気だけは簡単に人の力で左右できない。


 パラパラと降ってくる雨は次第に強くなっていく。

 きっとオレの涙も雨に溶け地に消えるだろう。

 泣いておこう。

 彼女の不安さえも無くなるくらい。


 寮に戻ろう、雨を避けるように。

 きっと皆戻ってるだろう。

 セーベやクラベは初めての街で迷ったり戸惑ったりしていないだろうか。

 だとしてもオレにできることはない。

 やらなきゃいけないことがあるから、学校に行かないと。


 そう思って学校に向けて雨を避けつつ小走りに駆けた。

 跳ねた雨が石畳の隙間に染み込んだ。


 ☆


 雨が降ってる。

 雨は嫌だ。

 雨に濡れると尻尾の匂いが酷くなるから。


 家や道が多くてここがどこなのか分からなくなってしまった。

 先ほどまではチヌネアちゃんといたのだが、彼女は何か札のようなものを私に渡した。

「黒魔術で探す…」といい残して。

 仕方がないから手当たり次第に大きな道を歩いていると言うわけだ。


 街に来た日は緊張していてあまり覚えていないけれど、その翌日つまり今日は大変だ。

 キレイな女の子ソフィティアが何も言わずにこの街を抜け出た。

 私は皆とは数日の付き合いだからなんとも言えないけど彼女はガルゥシュを好いていたように思える。


 彼らの中で私が気軽に話せるのはガルゥシュくらいのものだ。

 彼がいないのに話せることはあんまりない。

 リス族の中だけで暮らしてきたんだから人見知りなのは否めない。


 昨日はそのソフィティアと犬獣人のメルネーの部屋で寝泊まりさしてもらった。

 それにしても…このガルゥシュがかけてくれた迷彩?は凄い。

 周囲に溶け込んで違和感も感じられないほど人間に近い。

 強いて言うならズボンの尻尾穴があるように見えるとこかな。


『セーベェー、水の精霊がうっとおしいよぉ! パチャパチャウルサイッて!』


「ルーメン、我慢してよ。仕方ないじゃんか、ロクシュの里じゃ神樹様が雨を防いでたんだから─ここは違うんだよ?」


『んーまぁ、そうなんだけどさぁー。限度があるっていうか? ま、面白い建物があるから我慢したげる!』


 光の精霊ルーメンは執拗に下位精霊水玉に追われてた。

 ポワポワした青い光が群がっているのだ。

 そこらじゅうにいるから雨の日は確かにうっとおしい。


「少しあの建物に雨宿りさせてもらおう?」


『おっ、そうしよ そうしよ!』


 私達が宛もなくさ迷っていても仕方がないので、左に見えた石造りの大きな建物を指差す。

 ルーメンが言うように面白い建物で(つた)のレリーフ?が至るところに彫られてる。


 重そうな扉をノックする。

 ゴンゴンと室内に響いている音がうっすらと聞こえる。


 ややあって扉が開く。


「はい、何か御用で? …入信でしょうか」


「えっ、いや、あの~あ、雨宿りを…」


「…あぁ、そうでございましたか。ご安心を、女神ファワセ様はすべての者に手を差し出しますので…」


 どうやらここは教会らしい。

 白い布に身を包んだ神父らしき人が扉を開いて入れてくれた。

 中は広く、長椅子がいくつも並んでいた。

 正面には手を広げて柔らかな微笑みをした女性の石像が鎮座していた。


「どうです、美しいでしょう。あちらが女神ファワセ様で御座います。おっと失礼、水滴を拭う布を持ってきましょう」


「あっ、すみません」


 神父は濡れた私を振り返ったあと、正した背筋をして右手の扉に入っていった。

 神父がいない間に尻尾をバタバタしてついた水滴を弾く。


『ねぇ、セーベ。ここ、闇の精霊が怖がってる』


「ぇ、闇の精霊が? あの子たち陰湿だけど別に怖がりじゃないでしょ?」


『そうなんだけどね…なぁんかおかしいなぁ』


「う~ん、怖がることに何…」


「おや、どうなされましたか」


 ルーメンと話していて気づくのが遅れた。

 神父は幾枚の布を持って私の背後に立っていた。

 窓に雨粒が音をたてて当たる。


「いえ、雨が強くなってきたと思いまして…」


「そうでございますね…雨が降るのは女神のヨダレだと伝えられていますがどうなのでしょう」


 えー、そういうギャグ? それともそういう信仰?

 私が反応に困っていると軽く笑って布を手渡された。


「申し訳ありません、信徒の方々にしかわからないことでございましたね。…それにしてもお嬢さん白いですねぇ」


「え、あ、そうですね」


「はい、女神が最も好む色で御座いますのでね。いやね、少し羨ましいので御座いますよ」


 話がよくわからない、女神の話ばかり出てくるし盲信的なのかも。

 しかし、私の信仰はロクシュタリアの樹に対してあるから女神ファワセはあまり興味がない。

 それと…どこか視線がイヤらしく感じる。


「私はあまり好きではないです。…すみません、服の中も拭きたいので…ちょっと…」


「あぁ! スミマセン! 気が付きませんで…ではあちらの部屋におりますので懺悔したいことや聞きたいことがありましたら何時でも…」


「あ、はい。分かりました」


 そういったあと神父は先ほどの部屋に戻っていく。

 懺悔って言われたって…特にないし…

 適当なことを考えながら頭から胸、体を順に拭いていく。

 足を拭き始めたところで、ふと闇の精霊が横切った。

 何故かその球状が崩れバラバラに散った。


『ッセーベ!! 後ろ!』


 ルーメンが叫ぶ。

 咄嗟に振り向こうとしたが、間に合わなかった。

 うそなんでっ…


「──っ! ムグッ」


「失礼お嬢さん…貴女はかの御方への生贄に相応しいのでね─」


 口を押さえるように闇の精霊たちが悲しそうに揺れながら顔面を覆っていった。


 あぁ、そういうことか。

 闇精霊にも嫌なことがひとつあった。

 群れることだ。

 小さな精霊たちでは抗えない、ルーメンのようなエネルギー体でもない限り。

 小さいのを補うために群れさせられて苦しいんだ。

 この神父は精霊使いなんだ。


 せめてもの抗いなのか痛みはない。

 完全に覆い被さられ、周囲が完全に見えなくなり──


『な、なによ! あんたら! チョット!』


 ルーメンの動揺を聞いて意識が散った。


 光は粒を残して闇の球に飲み込まれていった。


はい。作者さんです。

この世界は次々に問題が起こりやがるっ!

くそっ…一体どうしちまったってんだ!?

(アメリカドラマ風)

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