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異世界の人生はミルクから…。  作者: 翠ケ丘 なり平
第六章 月の涙
101/115

90 月

どうも作者さんです。

不定期更新とはいえ更新ペースががた落ちしているのはよくないなと思ってはいます。

でも待って…ネット回線ない大海原にいたの…予約投稿するの忘れてたの…


 さてさてこのままでは本当にドラゴン討伐に行くことになりそうだ。

 ファンタジー世界にいるからにはちょいと見てみたい気持ちもあるが…元々小心者で臆病なオレにはちと荷が重いかもしれん。


 ボルキーを見るとニコニコと非常に楽しみに思っているようだ。

 コイツの中では狩りに行くことは確定なんだろう。

 どこのドラゴンを狩りに行くか考えでもしているのだろうか。


 いつの間にか憎めないような感覚に陥っているが、第一印象は圧倒的に信用できない奴だったはずなんだよなぁ。

 悪いやつじゃないとは思いたい。

 ただサリシャさんとボルキーを会わせるのは嫌な予感がするから止めておこう。

 会ったということもあんまりサリシャさんには話さない方がいいかもな。


 はぁー転生者の祖父か。

 ユウシャの発音から日本人だろう。

 いらんことを孫に教え込みやがって…変な風に成長しやがったじゃねぇか。


 ふとおもったんだけど転生者って日本人ばかりなんかね?

 緯度とか経度とか引っ掛かる場所があるのかも。

 転生者のリテラ曰く、ここは神様いる世界だし太陽系ではない?

 銀河違いとか少なくとも地球ではないか。

 パラレル地球ワールド的な?

 う~む神様の力って想像つかんよなぁー。


 あの声も神様だろうし…世界に干渉─とか言ってたような。

 オレの転生が精子から意識が始まってるせいで転生の定義が何処からか分からなくなってる。

 赤ん坊からだとしたらオレは憑依という形になるのだろうか?


 …ダメだ分からん。

 ボルキーに対面してる今考えることじゃないな。

 あとで考えよ。


「転生者の話はあとでいいだろ。ゼンが話についていけなくなる。それに…あまり分かって欲しくない」


「あーハイハイ。照れ屋さんなんだからぁ~ネ。でぇも、いつか話さなきゃならないときが来るさね。隠し事は暴かれるものだからさ。

 で、行くの? 行かないの? ちょうどいい依頼があったハズなんだよー。中位龍の討伐♪」


「ちゅ…!? 中位龍!!? ふざけてるのかい!?」


 ウゲッ! ビックリした…

 なにそんなに驚きの声をあげてるんだ…ゼン。


「いや、どうした…そんなに驚くことか?」


「そうだよー何さ急にぃー」


「は、はぁ? 正気かい? ガルゥシュ…授業聞いてなかったな!? これだから……あのなぁ、いいかい? ドラゴンにはランクがある。もちろん人が決めたランクだけどさ、低位龍 下位龍 中位龍 上位龍 極限龍の順に人じゃ抗えなくなっていく。低位龍は知能も低いし比較的弱い龍。これには戦闘職の冒険者が5人くらいいれば無傷でも勝てるって言われてる」


 ほう…そりゃ知らなんだ。

 さすが優等生、よく勉強しているな。

 あれ、ボルキーまでスゲーって顔でゼンを見てやがる。

 オイーそれぐらい知っとけよ~。


「で、下位龍が冒険者15人以上いてようやく討伐できる程。知能はさほど高くないけど成龍になると格上げされる。つまり中位龍だ。ここまでくると簡単に討伐できなくなってくる。討伐隊を組むくらいだよ。

 それをそう簡単に倒せるわけないじゃないか。ましてや剣や槍でドラゴンを倒せるものなのかい?」


 もっともな話だな。

 現実にドラゴンを見たことがないから想像でしかない。

 そんなものに果たして物理的な攻撃が効くのか届くのか。


「え? 当たるでしょ。バビョーンって飛んでザクッとすればさ~」


 いや、ふざけんなし。

 どういうこったよ…お前はオノマトペでしか喋れないのか?

 全くイメージがわかないし、さっきのゼンの話聞いてた?

 下位龍でさえ15人も冒険者がいるんだぞ?


「分からない、サーッパリわからない! あぁもうキライだ…こういう人…」


「オイオイ…落ち着けってゼン。珍しいな、お前がこんな言い方をするの」


「違うんだよ…僕の母上に似ていて腹が立つんだ」


 母上ね…四男だったらしいし、虐げられてたんだろな…

 オノマトペばっか話す人だったんだろうか?

 おちゃらけてる人なのかも。

 ゼンはわりときっちりしてるタイプだからな。

 血液型はA型だとオレは勝手に思ってる。


「まぁまぁ、イライラしてもしゃーないさーネ。極限龍じゃにーから余裕のヨーッチャーンさね」


「なぁ極限龍ってやっぱり強ぇーの? あんまし知らないんだよ」


「強いよ…国が滅ぶくらいさ。歴史上では確か3つの国が滅んだ。

 極限龍は三体しかいないのに。大体は眠っているらしいんだけどね」


 ほうほう。

 そうか、敵対しない方がいいことはよーく分かった。


「うー、ドラゴンのことも分かったことだしー。ほんじゃ、行くさね。少年たちー」


「いやいや、つかれてんだ。せめてまた今度にしてくれ。学校でやることも残ってるんだから」


「え~? そんなこといったってさー、ベゼックいないんじゃ教わることないでしょキミー。あちしが教えてやんよー?」


 伸びをしたり腰を叩いたりストレッチを始めたボルキーが気色の悪い笑みを浮かべてオレの肩を叩く。


 まぁ確かに悪い条件ではないかもしれない。

 一人だけの修行は効率が悪いから。

 いつか伸び悩む時が来るんだろうと思う。

 伸び悩んだら諦めて中途半端な状態で終わっちゃうんだよなオレって。

 器用貧乏では社会に出れないと思い知った前世だったなー。


「確かにガルゥシュは今の学校じゃ意味がないだろうな。剣術は伸び悩んでるだろ?」


「え、う、まぁ…な」


「んじゃ、けってぇーい! 突きの極意をおしえてやるさね~」


 肩をグッと掴まれて、何か分かったように強く頷きやがった。

 勝手に決定していくのがすごく嫌な感じ。


「話も一段落ついたし、一応これで僕らは帰るよ。中位龍討伐隊をしっかり組んでくれることを期待してね」


「ヨーデンに任せるからそっちに聞いてねぇー、あちしはまだ色々やることあっからねー」


 立ち上がったゼンをうすら寒い笑みで一瞥して、おもむろにそこらの本を読み始めた。

 多分飽きたんだろう。

 この数十分で性格がわかり始めてきた。


「後で転生やら何やらの話をきかせてもらうぞ。お前は情報を小出しにしてくるから驚いてしょうがない」


「何でもいいよ。質問には回答を与えるのはあちしのポリスィーさね」


「質問にしか答えないんだろ…後でいいから教えてくれよ」


「んーあいあい。じゃ人数は集めとくよ。あっ、あと移動方法は魔獣車でいいさね?」


 思い出したように本から目をあげて問うた。

 それはいいんだけど魔獣車ってなんだ。

 馬車とは違うのかな。


「んと知らない? 速いんよねーグゥイーンって。ただ乗り心地は保証できないさね。魔獣を飼い慣らしたギルドの最新車さね」


 魔獣…移動に向いた獣型の魔物とかがいるんだろう。

 インドとかのゾウ車みたいなものか?


「まぁなんでもいいよ。どうせアレコレお前に振り回されるんだろうから。」


「そんなつもりは毛頭ないよぉー?」


 どうだか…

 ソフィの母サリシャさんと1ミリも似ていないボルキーは新しい玩具を手に入れた子供のように屈託なく笑う。

 

 その日はそれで解散した。

 三階から皆のいる一階酒場に戻り質問攻めにあった。

 あやふやに話をのらりくらりと躱しながらチラリとだけドラゴンの話をしたと言った。

 そこで更なる大騒ぎに巻き込まれたが酒が回っている冒険者連中の頭には残らないだろう。

 真剣な顔をするのは特待生連中の皆とドワーフのヨーデンさん、情報屋のラッツくらいなものだ。



 ほとほと疲れてギルドを出るとクッキリと影が出来ていた。

 ふと空を見る。月が真ん丸に輝いていた。

 隣にいたソフィがオレにつられて空を見る。

 思わず口に出た。


「月が──綺麗ですね」


「…ふふっ詩人みたい。そう──このまま時が止まればいいのに」


 その通りだと思った。

 でも…まだ体は少年少女なんだオレたちは。

 でも気持ちというのは年に変わらず美しいものだ。

 いつかお互い別れても忘れられない人になる。

 そんなソフィと出会えてこの人生は非常に嬉しい。


「ソフィ…ソフィティア。君のことを愛している。君はオレの特別な人だ。えっと、こんな場所で悪いな…ただ少し─」


 冒険者共の喧騒が後ろのギルドから聞こえてくる。

 皆は察して少し離れてくれた。

 ロマンチックでもなんでもないし突然だ。

 強引な独りよがり。

 ソフィには悪いことをしている。


 謝ろうと頭を下げようとした…のをソフィがキスで遮った。

 唇が、柔らかく離れていく。

 潤んだ目が離れていく。


「──あのねガルゥ。私はね。──大好き、です。あなたのことが。あなたが待てと言うのならいくらでも待つよ。愛していると言ってくれてありがとう。私はあなたの特別になれてとても嬉しい…よ」


 涙が月明かりで透明に煌めいた。


「でも今は駄目…あなたに私は似合わない。強さが違うの。芯が違うの。どうかまたこんな月明かりの日に口付けをしよう? それまであなたを待っているから」


「どういうことだよ…そんなことねぇよ…」


 待ってくれとは言えなかった。

 ソフィは何故か悲しげに微笑むと小さく…「じゃあね」と一言。

 呆気にとられたオレは手を伸ばすだけで精一杯だった。

 女子組はソフィを追って駆けていく。


 男子組が固まって止まっているオレに寄ってきた。


「寮に戻ろうガルゥシュ。ソフィティアも寮に戻ったろう。明日からも忙しいんだ」


「そうだぜー早く寝ようぜ」


「そうだ。クラメ・ベーズも告白したらどうだ?」


「あ、兄貴!? な、何を言ってんだっ?」


 リス族のクラベが皆が触れてない告白を冗談のようにクラメに勧める。

 正直皆が話しているのはどこか遠くに感じていた。


 何か良くないイメージがわいた。

 これがそのまま起きないことを切に願う。


 ソフィと離ればなれになるというイメージが…

 疲れているのに寮では深く眠ることが出来なかった。


 そして朝が来る。

はい。作者さんです。

ソフィティア…彼女には月明かりの似合う儚げな、女性になってほしいと考えています。

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