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悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア  作者: 村咲 遼
お節介なおばちゃん
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まゆらは引きこもり生活に突入しました。

 それからは、真侑良まゆらは毛布を被ったまま一言も口を利かず、好きだといっていたお茶の香りやお菓子も寄せ付けず、医師の言葉も耳を傾けなかった。


百目鬼どうめきさん! 返事をして下さい!」


 近づこうにも何故か、関平かんぺい関興かんこうを寄せ付けぬ、何か結界のようなものが張り巡らされ、それを叩き壊そうにも強いようで柔らかく、幾ら力を込めても、分散され壊すことができない。


「薬の時間ですよ! お医者さんは必要です!」


 必死に呼び掛けるが、背中を向けた真侑良はそのまま動こうともしなかった。

 弟に頼み、父と周倉しゅうそうを呼ぶが、


「……ほっとけ。腹が減ったら出てくるわ」

「そっとしておいてあげましょう、若君方」

「でも!」


関平は何故か恐ろしかった……何か危ういものを孕んでいそうで……。




 その為、自らの住まいのある場所から転移を繰り返し、北欧のエリアに入った。

 神もしくは、関平のように神に準ずる存在は容量が大きく、負担もかかるので転移は嫌がられるのだが、普段穏和でおっとりとした関平の暴挙を止められず、関平は異国情緒たっぷりの館を、自らの正装で突き進んだ。


「何があったのかな?」


 フェンリル狼に右手を食いちぎられたチュールは、戦いの神だが普段は温厚である。

 ざわつく周囲を抑え、微笑む。


 関平は拝礼をする。

 父、関羽かんうは神とほぼ同等だが、関平自身はその脇侍わきじ

 仏教で言う、如来にょらいの左右に侍る菩薩ぼさつのようなものである。


「突然のおとない、誠に申し訳ありません。私は、関聖帝君かんせいていくんの息子関平と申します。実は先日こちらにお預かりした百目鬼真侑良どうめきまゆらさんが怪我をしているのですが、結界のようなものを張り巡らして、拒絶しているのです。食事も手当ても拒否し……このままでは……」

「消滅するかもしれない……いいんじゃないのかな?」

「エェェ?」


 穏和で優しげな顔で物騒なことを告げる。


「まゆらはそんなに強い人間ではないよ……あぁ、ヴァルキュリアとしても全く役に立たない。本人は、仏教の信徒で、仏教は転生が許される。中国での思想と同じだ。魂魄の魂は左の『うん』は雲を示すんだったよね?で、『はく』は『はく』は白骨……つまり、体と心が一体となり魂魄。死ぬ時にはそれが分かたれ、白骨は地上に残り、魂は空に上る。その魂は普通浄化し、前世の記憶は失われて別の生き方をする。でもまゆらは、甦る度に苦しい、生きるのも地獄、でも死ぬことすら許されぬ時を生き続け、死を願う程の時を狂い……解放されても地獄のような時を繰り返す……いや、地獄は同じだが違う地獄を見せつけられる……」

「……な、何で? 普通は、前世に罪があるならつぐなって、そして別の生きる道を示すのでしょう?」

「仕方ない……まゆらは罪を償っても、片割れが罪を償えぬ立場だからね。まゆらが輪廻りんねを繰り返すのなら、片割れの罪をまゆらが償う。あがなうしかないのだよ」

「そんな……!」


 関平は叫ぶ。


「そんなのおかしい! 百目鬼さんは悪くないじゃないですか! それなのに!」


と、顔色を変えてずかずかと横を通り抜ける、陰険インテリエロ眼鏡こと小野篁おののたかむら

 普段なら決してしない、上司に当たるチュールに挨拶もなく去っていく。


「あれ? あの人は……」

「まぁ……どうなるか……行ってみようか」

「は、はい」




 関平は着いていくのだった。

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