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これより少し前のこと

 白竜はくりゅうは気絶した夫を抱いている桃桃タオタオを背に、子猫のようにじゃれつく虎の子供を必死に屋敷に押し込み、数少ない屋敷の働き手に屋敷におかしな輩を入れないように言い付け、飛び出すと、まずは諸葛孔明しょかつこうめいの屋敷に向かった。


「申し訳ない! 失礼する」


 言いながら門を潜ると、そこには無邪気な兄弟たちと紫蘭しらん……そして孔明と妻の黄夫人こうふじんが談笑していた。


「おや……こんにちは、白竜。それに桃花タオファどの」

「孔明どの! 何とかしてくれ!」

「まぁまぁ、落ち着いて、暴れると馬上の奥方が危ない」


 立ち上がるとひょいっと下ろす。


「こんにちは、奥方……ん? おや……子龍どの。久しぶりですね」


 その声に振り返った子麟しりんは、凍りついた。

 孔明はブラーンと無造作に……まるで子猫か何かのように父……もとい、父の本来の姿をつまみ、ぶら下げている。

 一応首の後ろをつまんでいるせいか、子猫のように小さい前足が揃っている姿はご愛嬌である。


「おい、孔明どの! 子龍は猫か? 犬か?」

「いえ、どっちかなぁと……よしよし」


 抱き寄せ喉をくすぐると、小さい前足がわきわきと動く為、気持ちがいいらしい。


「なぁに? あれ」

「ちょっと待って? あれは……」

「あ、子龍将軍だ」


 紫蘭の一言に、子鵬しほうは、


「余計なことを言うな! 親父が龍だなんて、龍花ロンファがどう思うか!」

「お前がばらすな!」


弟を叩く。


「えっと……龍花。お、お父様……」


 父が人間外だとバレたら、いや、泣いたら……。


「龍! わぁぁ! お父様、龍になれるの? 何色? 青龍と同じ青になるの? お兄様も?」


 目をキラキラさせて、兄を見上げる様に拍子抜けし、


「いや、お兄様はなれないよ。と言うか、父上があれだけ小さいし……」

「だっこする! お父様、だっこ!」


ピョコピョコ飛び跳ねる妹を見て、子麟と子鵬は、さすがは自分達の妹……胆が座っていると感心したのだった。




「お父様、大丈夫? いいこいいこ……」


 抱き締めて頭を撫でる龍花に、白竜はやさぐれそうになる。

 しかし、


「孔明どの、申し訳ないが屋敷に虎の子供がいるんだ。何とかできないだろうか……」

「子龍どのは……」


思い出したように白竜を見る。


「そうなんだ。私は、子龍が用があると言っていた安倍晴明あべのせいめいどのの元に向かうので、子麟と子鵬と相談を……では」


 子龍を背中にのせると、そそくさと出ていったのだった。




 そして、にこにこと笑う孔明に白状させられた兄弟の横で、


「えっ? お父様、白竜と仲良しなのに?」

「いや、龍花ちゃんの言う通りなのだけど、確か、子龍どのは小さい頃から生き物に襲われて、動物が苦手らしい」

「……でも、晴明さま、狐の子って言われているのに、とっても仲良し……?」


 んむむ?


 首をかしげる幼い少女に微笑む。

 7歳位か、あどけない愛らしい仕草は無意識らしい。

 昔の娘と、養子になった伯松はくしょうの仲の良さを思い出す。

 快活な娘とおっとりとした長男……。

 伯松がいれば、いや、自分がもっと家族を省みれば……後悔ばかりである。


「多分、安倍晴明どのは子龍どのと気が合うのかもしれないね。生まれ等関係なく。優しい方だと伺っているよ」

「はい!」

「……そうだねぇ……子龍どのがペットが苦手と言うのはちょっと気になるけど、安倍晴明どのにご挨拶もいいかもしれないね。行ってこようか」

「あ、私も参ります。ご挨拶に」


 子麟は手をあげる。


「じゃぁ、行くかな?」




 階層を移動する。

 孔明はあまり階層移動をしない。


 ほとんど気を利かせてくれる子龍が行ってくれる為、動かなかったと言うこともある。

 その為、


「孔明さまが、行かれるのですか?」


と移動の門番に問いかけられる。


「えぇ、よろしくお願いします」


 階層と言っても、ビルのようになっている訳ではなく、バラバラに広がる地域を転送と言う感じで移動する。

 長身の子龍と同じ身長の青年は、目を伏せゆったりと扇いでいる。


「何か……気になることでも?」

「いえ、晴明どのについて伺ったことを、思い出していたのですよ」


 目を開けて微笑む。


「お会いしたいと思っていたので、偶然とはいえ、とても楽しみですね」

「そうですね。私もお礼をお伝えしなければ……」


 二人は、移動が完了したことを確認し、歩き始めたのだった。

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