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悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア  作者: 村咲 遼
真侑良の恋……
26/44

不味い悪夢を食うのに疲れた獏(ばく)は、塩辛い哀しみを食うことにした。

 即、関平かんぺいは、父の関聖帝君かんせいていくんを通じて東王父とうおうふより、同年代を生きた神医しんい華佗かだが訪れる。


が、


「何じゃぁ、つまらん。ただ寝とるだけではないか」

「寝ている? 記憶とかは?」

「ん? 何ともないわ。ピンピンしとるな」

「ならば、何故!」


子龍しりゅうは訴える。


「……あれは、二つの魂がほぼ融合しておる」

「あれとは?」

「お主の嫁は、あれではないがあれでもある」

「意味が解らない!」


 じれたように怒鳴る子龍に、華佗は後ろを振り向いた。


「お主、あの女人が幸せにならぬように、逃げる女人に、東王父様より借り受けた厄介なモノを憑けたな?」


 姿を見せたのは関聖帝君と、その側近の周倉しゅうそうが捕らえてきた長身の男。

 小野篁おののたかむらである。


「知らぬ! ばくなど憑けておらぬ!」

「わしは、獏とは言うとりはせんが……?」

「……!……知らぬ!」

「どう言うことだ!」


 子龍は男の元に寄り、胸ぐらを掴んだ。

 三国時代でも長身の方の子龍よりも、篁は長身である。

 しかし、一応武芸に秀でていると言われていても、直に戦場に立つ子龍とは気迫も実力も段違いに違う。

 子龍は片腕でつり上げる。


「うっ…ぐぐっ……」

「……言え!……言わねば殺す……!」

「……や……やめっ……てくれ……」

「子龍、やめよ!」


 関聖帝君に手を出されるが、


「黙れ! 貴様には聞いていない! こやつに聞いているのだ! 何をした? 私の妻に!」

「あの女は……」

「妻を、あの女呼ばわりするな!」

「子龍どの」


怒り狂う子龍を、関聖帝君と孔明こうめいが引き剥がす。


「……篁どの?」


 首をかしげ微笑む。


「もしかして貴方は……転生を繰り返し、自分から逃げようとした子龍どのの奥方に、役目を果たさぬ獏を文字通りばくし、子龍どのの奥方に憑けたのではありませんか?」

「なっ……」

「そう言えば、400年程前に、役目に飽いたと言う獏がいたと聞いています。『悪夢は不味い』と言う獏に、自分の遊びの対象である桃子とうこどのの傍にいればいいと……言ったのですね?」

「……め、目印だった……」

「どういう意味だ!」


 怒鳴り付けようとした子龍に、慌てて関聖帝君は押さえ込む。


「……私から、あれは逃げる。だから……解るように……」

「貴方のなさっていることは、嫌がられるでしょう。ストーカーですよ? 犯罪者ですよ? その上に罪を重ねますか? 彼女が地獄に落ちるような苦しみを何度も味わわせ、自分の元に堕ちてくるのを望んだのですか? それこそ、まさに地獄の所業ですね」

「あれは!」

「自分のものだとか言いませんよね? 貴方のもの? おかしいでしょう? 桃子どのはものではない!」


 孔明は言い放つ。


「どれ程、桃子どのをもてあそべば良いのです? 彼女は一個人で、貴方だけのおもちゃじゃないんですよ? ガキが……桃子どのを馬鹿にするのをやめるが良い!」

「わ、私にとって……」

「利用しやすい、たわむれの相手だったのですよね? これが、閻魔大王の腹心ですか? ちゃんちゃらおかしい!」


 捕らえている、周倉に告げる。


「申し訳ありません。この方は私の妻の友人ですので、二度と会いに来ないで下さい。彼女が生まれ変わる度に苦しみに突き落とし、それを見ていた人間を私は好きになれませんし、彼女に会わせません!」

「この男はどうなんだよ?」


 示された腹心に、孔明は、


「悔やみ、哀しむのも良いですが、もう少し柔軟さが欲しいですね。で、身勝手な男は帰って下さい。東王父様より、閻魔大王の元に連絡が参りますので、よろしくお願い致します」


慇懃無礼に追い払った後、


老師ラオシ。桃子さんは……」

「どこかに隠れておるが、早めに捕らえて引き離さないと、元は人間の女人の心が、獏に飲まれてしまう。元々自我の薄い存在。消えてしまうであろう」

「では!」

「待て。獏は警戒心が強い。そう易々と捕まらぬ。それに現在女人に取り憑いておると言うことは、その哀しみを美味と思っていると言うこと……」


子龍は告げる。


「では、私が! 妻に会います!」

「どうすればよいのでしょう?」

「……仕方がないのう……」


 首をすくめ、方法を説明するのだった。

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