第6話 顕現
待たせたな!チートのお時間だ!
「あの者め、コケにしおって!」
「陛下、お静まりください!弱き犬ほどよく吠えるものです。奴もその例に漏れず雑魚。どうせ、肉壁にもならないほどの弱小勇者でしょう」
「ぐぬぬぬ」
「しかし、だからといって殺したりするのは下策。
腐っても勇者。取り合えず他の勇者との差別化を図りましょう。部屋のグレードでも落としましょうか」
「ふん!
とりあえずはそのくらいにしておけ!ただし、予想以上に雑魚だった場合は捨てるぞ。その上で襲って殺せ!」
「かしこまりました」
◇◇◇◇◇
「って、感じなのかなぁ」
士は脳内で現状の把握をしていた。
確実にグレードが低いであろう部屋に自分だけが通された可能性が高い。その理由はなにか。具体的に何が行われこうなったのかまで予測して。
「さて、と。
現状把握はこれくらいにして……昼寝でもするか!」
コンコン
「お食事のお時間です」
「なん…だと……!?」
◇◇◇◇◇
「さて、皆様には明日。
【ステータス確認】と【霊装の儀】と【天職の儀】を行って頂きます」
勇者と王族の食事会が終わった後、ドレスの少女改め第二王女ユリスが口を開いた。
「ステータス確認?霊装の儀?天職の儀?」
優花が首を傾げながら呟く。
「説明させていただきます。
【ステータス確認】とは自身の能力を客観的に知るために必要なことで、これを行わないと自らの力を確認することができません。そして、同時に適正属性もわかります。適正属性とは基本とされる魔術属性のことで、『火水風土雷氷光闇』を言います。また、それぞれには色があり『火』は赤、『水』は青、『風』は緑、土は『茶』、『雷』は黄色、『氷』は薄い青、『光』は金、『闇』は紫となります。また、魔術には特殊や固有というものがあり特殊は『銀』、固有は『適正属性全色』となります。
次に【霊装の儀】についてです。
【霊装の儀】とは勇者様の固有の装備である【魂魄霊装】を呼び出す儀式のことです。
【魂魄霊装】にはさまざまな形があり、それは武器だけでなくアクセサリーや盾などの形の場合もあります。そして特殊な能力を1つ、ないしは2つ持ち、使わない際は自らの魂に収納できるのです。そして、これは勇者様にしか使えず、勇者様の成長と共に強くなるのです。また、極々一部の鍛冶師は霊装に素材を追加し強化することも可能です。
【天職の儀】は天職……ジョブと呼ばれるものに就くことです。このジョブは個人差はありますが一度に1つ選べ、また25レベル毎にまた新たに選べます。個人差はありますが選択肢は5つほどあれば優秀です。また、皆様は召喚された際に勇者となっているのでもう1つ選ぶことになります」
ユリスは3つについて詳しく説明をする。
実に丁寧でわかりやすい説明だ。要するに必要なやつってことである。これだけわかればいいのだ。
そして、翌日となった。
士達は王城内の神殿へと連れて来られた。いかにもな外見であり、心なしか神聖な空気が漂っている気がする。だが、それよりも目を引くものがあった。神殿の奥へと入り空から陽光が降り注ぐ場所。そこにそれは有った。巨大な魔方陣とその中央へ置かれた鏡の様なモノ。
それこそが勇者の【霊装の儀】、そしてステータス確認と天職の儀をするための道具である。
「それではこれより皆様には一人ずつ魔方陣の中へと入っていただき、ステータスの確認と霊装召喚をしていただきます。
ステータスの確認は魔方陣の真ん中で『我が力を示せ《ステータス》』と言うことで可能です。その後、『我が道を示せ』と唱えることで目の前にウィンドウが開きます。そこでジョブを選択できます。枠があるのでその数までそのレベルで入れられます。
その後、あの鏡の様な宝具に手を触れさせ『我が魂魄より顕現せよ 我が力よ 《霊装召喚》』と唱えて頂きます。
最後に全員がそれを終えたらステータスの総合評価値を教えて頂きます」
「評価値?」
「あ、忘れてました!
ステータスの評価値はF-~EX+の39段階あると言われており、たとえ評価値が同じでも同じ強さとはかぎりません。評価値は下位から順にF→E→D→C→B→A→S→SS→SSS→X→XX→XXX→EXとなり、それぞれに『-』と『+』そして無印があります。『-』が一番下で『+』が一番上です。それと、スキルにもレベルがあり1~10までとなっています」
えへへ、とあざとい表情を浮かべながらユリスは士達に説明する。いや、正確に言えば謙也に向かってだ。その証拠に朝から謙也との距離がやけに近い。そしてあざとい。ちょいちょい転びかけては謙也に受け止めてもらうなどなどそんな事ばかりしている。しかも謙也はデレデレとしっぱなしである。
「それでは儀式を始めましょう。誰から始めますか?」
「じゃあ、僕からやるよ、ユリス」
ユリスの問い掛けに謙也が答える。
そして、周囲で数多の貴族達や士達が見守る中魔方陣の中へと入っていく。
「よし……『我が力を示せ 《ステータス》』!……これが…僕の力!」
そして、その言葉と共に謙也の周囲の魔方陣が発光を始める。その光は赤→緑→金→銀となり消えていった。
「すごいです!
三属性に特殊まで!」
「『我が道を示せ』……僕はこれに決めた!
よし!次だ!
『我が魂魄より顕現せよ 我が力よ 《霊装召喚》』!!」
謙也は宝具に触れながら叫ぶ!
その言葉に答えるように宝具は発光し、光の奔流が謙也を包み込み……そして、数秒後。謙也の手には黄金の剣が握られていた。
固有名『勇気の心剣』。固有能力は闇・暗黒属性への極大耐性と一日三回まで放てる奥義【勇光】の習得である。
「おお!なんと美しい!」
「まさに伝説の勇者様だ!」
見物人の貴族からも称賛の声があがる。
その声と視線を浴びながら謙也は魔方陣から出てきた。
この後も勇者達の儀式は続く。
聖は魔術発動の指輪である固有名『賢者の指輪』固有能力『魔術効果増加』を、美織は杖である固有名『癒しの福音』固有能力『広範囲回復』と『広範囲守護』を、葵は刀である固有名『村雲』固有能力『奥義【殺戮剣舞】の習得』、零治は固有名『守護の聖盾』固有能力『完全防御』と『闇・暗黒耐性』、優花は固有名『精霊の聖弓』固有能力『精霊の光』をもつ霊装を手にいれた。そして誰もがすばらしい適正を見せた。
そして、最後。
遂に士の番がやってくる。だが、それまでとはうって変わって士が魔方陣へ向かうときに聞こえるのは嘲笑や罵詈雑言。
完全に馬鹿にしているとしか思えなかった。
だが、士は気にすることなく中に入り口を開く。
「『我が力を示せ《ステータス》』」
力を込めることなく自然体で、尚且つ集中して、士は教えられた言葉を言う。
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神居士(ツカサ・カムイ)
男性17歳
種族【最高位人族(神仙)】
ジョブ:【勇者】【 】×(99+)
MP ∞
STR〔SSS-〕
AGI〔SSS-〕
VIT〔SSS-〕
INT〔SSS-〕
総合評価〔SSS-〕
『ノーマルスキル』
【剣術:極】【刀術:極】【体術:極】【超精密魔力操作:極】【身体強化:極】【魔力身体強化:極】【気術:極】【並列思考:極】【並列処理:極】【隠蔽:極】【鑑定:極】etc.
『ユニークスキル』
【神居陰陽流】 【叡智】【神通力(融合)】【仙術(融合)】
『オリジナルスキル』
【全の極み】【極才】【極みの先へ】【全能眼】【代償零】【英霊纏身】【神霊纏身】【神器化】【伝承具召喚】【神器召喚】【神仙術】【???】【???】
『魔法』
【全属性】【空間】【古代】【神】【回復】【障壁】
『特殊魔法』
【極光】【紅蓮】【聖】【暗黒】【複製】【召喚】
『固有魔法』
【全固有(顕現済のみ)】【再生】【分解】【重力】【時】【死】【混沌】【極性】【爆裂】
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士の言葉と共に目の前にウィンドウが出現し、自らの力を示す。そして、魔方陣が順に発光する。それは合計で9色。そして、最後に眩く8色同時に発光する。
「なっ!?全属性に特殊、さらに固有まで!?」
「なんだ、この輝きと魔力の奔流は!?」
見物人たちも驚きに目を見張る。それは聖たちも含めてだ。
「なるほど……こういう感じなのか…。神仙ってのはなんだ?ん、なんか出てきたな?なになに【不老不死となり神通力、気術、仙術を極めた者の種族。なるものがなれば神にも等しくなる。現在神居士はこの種族となり理の外の存在と化しているため、何人そして何神であろうとも侵すことはできない】?よくわからんな。
次はジョブか『我が道を示せ』」
士は呟きながらジョブを選びに掛かる。
「えー、なになに?選択可能数999+……表示がめんどくさいのか?まあいいや。検索エンジンまでついてんのかよ。じゃあ、【強くてリスクの低い順】で……」
そして、士が最終的に選んだのは
【極者】【神仙】【武神仙】【魔神仙】【技神仙】【薬神仙】の6つ。その何れもが最高にして最強。特に【極者】は全てのジョブのメリットのみを集めそれをさらに高めたジョブである。さらにワンメイク……つまり士一人しか就くことのできない天職なのだ。
「さて、最後だ……『我が魂魄より顕現せよ 我が力よ 《霊装召喚》』」
士は宝具に手を触れ、そして口にする。
そしてまたもや光の奔流が走り閃光が神殿内を駆け巡る。だが、その時間があまりにも長すぎる。そして霊装の力のせいだろうか。士の足元や宝具にヒビが入る。
三十秒ほどが経過するがいまだに霊装は解き放たれない。光や閃光、稲妻の様なものが荒ぶる龍のように神殿内を駆け巡る。
そして……
今までよりも激しい閃光と爆音と共に士の霊装が解き放たれた。
その数は………五つ。
刀…固有名『夜叉斬姫』、刀身の長さは79.2cmで反りは浅く、肌を潰されたのか若干黒っぽい光沢が出ており刃紋は白銀に耀いている。軽革鎧…『極夜の霹靂』、全体的に黒で所々に装飾が施されている。外套…『夜』。軍靴…『幻月』。変形器…『千変万化』。
そして、固有能力の数は全てが10を越える。最強にして最凶の霊装が士の手に渡った。
「霊装が…」
「ありえない!そんなことはありえないはずだ!」
「霊装が五つなど!ありえるはずがない!」
「さぁてと。
これにて終了っと…」
士は見物人たちが喚いているのを聞きながら魔方陣より降りる。
「さて、姫様。
予定通り、ステータスの総合評価値を伝えましょうか」
「え、ええ。お願いします」
「俺の評価値は〔SSS-〕だった」
「と、トリプルエスっ!?」
「え、勇者ってそのくらいが普通じゃないの?」
ユリスへ自身のステータスを伝えた士は返ってきた反応に驚愕する。
「み、皆さんはどうでしたか?」
「私はD-でしたわ」
「私はB-だった」
「私はDでした」
「俺もC-だったぜ」
「僕はCだった」
「私はD+でした」
「え、ちょ、え?」
士はやらかしたようである。