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第5話 結論

「これから?」


 士の言葉に聖達が首を傾げる。


「まさか……お前らなんも話をきいてなかったのか?」


 士はその様子に若干戸惑いながら彼女達に問う。


「聞いてましたわよ!」

「じゃあ、分かれよ……。これからだよ、これから」


 士は聖の言葉を聞いて額に手を当てながら呟いた。


「これからどうするかってのが問題なんだよ。

 魔王とやらを倒せと言われたがまずそれを俺たちができるのかってこととかだよ。

 一応、やるかどうかは後で決めるというのは納得させた。だから今ここでやる必要はないとは思う。

 けど、どちらにせよ身の振り方は考えなきゃならん」

「貴方はどう考えているんですの?」

「俺か?俺はまだなんも決めてねぇよ。

 ここが俺の知ってる異世界と同じような感じだってんならいくらでも生きられそうだしな」

「知ってる異世界?」

「ああ。ネット小説やらに出てくるようなやつだよ。冒険者ギルドとかな。

 まあ、お嬢様とかのアンタらじゃキツい暮らしだろうけどさ」

「冒険者ギルドってなんですの?」

「ありゃ、知らんか。そりゃあお嬢様はネット小説読まねぇわな」

「お嬢様お嬢様ってさっきからひどい言い分だな」

「実際その通りだろ?高槻さん。

 ですの口調の完全お嬢様フォルムの斑鳩さんに凛として歩き方や作法に上品さが隠れている高槻さん。それにまんま箱入り娘みたいなイメージを受ける月宮さんに、どっかの貴公子みたいな夕崎くん。まあ、竜胆は……そこらへんに転がってそうだけど着けてる時計とかは結構高そうだしな。白崎はさっきも言った通りだ」


 士は全員を順に見ながら言う。

 だが、一人。若干ながら不服そうな者が居た。


「神居先輩も御曹司じゃないですか」


 優花だ。


「は?どういうこと?なにそれ、初めて聞いたんだけど。

 つか、親父とかとっくに死んでんぞ?」

「え、知らなかったんですか?

 神居グループ次期総帥の話」

「いや、知らねぇよ。

 つか、神居グループってあれだろ?世界的にもトップクラスっていう」

「あれ、先輩の家の会社ですよ?というより、何回も誠朗へ転入するように通知が送られてたはずですよ?」

「ああ、あれか。なんかの間違いかと思ってたわ。なんで俺が系列とはいえ超お坊っちゃん校の誠朗にって?

 つか、その話マジなの?え、なんか変なところで疑問解決したわ」

「社交界では有名な話でしたよ。

 あの(・ ・)神居グループの次期総帥を射止めるのは誰になるんだって」

「え、ちょっと待って。

 俺の顔とかってバレてる系?」

「バレるどころか数人が『私が彼を手に入れますわ!』とか言って『は?何が手に入れるですの?身の程を弁えたらいかが?』とか言われて『先月の部活動で声を掛けられましたわ!』『なんて羨ましい!なんて学園のなんて部活動に通ってらっしゃるの?私もそこに通いたいわ』みたいな会話がされるほどですよ?」

「マジかよ……うわっ、マジで招待状の来てたパーティーとか行かないでよかった…。……って、んな話はどうでもいい!戻るぞ!」


 士は優花の話を聞いてげんなりとしながらも、元の話題へと戻した。だが、知らない場所で行われていたことに関しては異議を申し立てたいと思っている。主に特に知ろうともしてこなかった過去の自分と両親に。


「なんの話だっけか……ああ、冒険者ギルドか。

 冒険者ギルドってのは戦闘を生業にする奴らが集まる場所さ。よくある設定では全世界にあり共通の強さの基準をもち、どの様な勢力の下にもつかない中立の勢力っていうのだな。

 ああ、もちろん戦闘と言っても傭兵とは違う。

 依頼によっては戦争に往くこともあるかもしれないが、大体は護衛やモンスターの討伐、遺跡やダンジョンの調査とかだな。

 だが、盗賊とかと戦うこともあるっていう危険だらけの仕事だ」


 士は一気に冒険者ギルドについて語る。

 もちろん、この世界のことなど現状はほぼ知らないのでよくある設定のみだ。


「まあ、そんなもんだな?

 さて、どうする?魔王と戦うか?」


 士は聖達に問う。


「僕は苦しんでいる人がいるなら救いたい!だから、みんなもそれに協力してくれないか!?」


 士の問いに謙也はそう答えた。

 主人公然とした真っ直ぐなそして熱い決意だ。だが……物事が見えていないと士は感じた。

 士はわかっている。ネット小説などを読んでいたために。この召喚はただ魔王を倒して終わりではないと。魔王は何体なのかなど重要なことは未だほとんどわかっていない。さらに、言えばあの王の言葉。それも引っ掛かっている。「我が国を救えるのだ」、「爵位を与える」。士にはどちらにも不穏な気配が感じられた。他にも様々な可能性が考えられる。士の心中は殆どがこの王国への猜疑心で一杯だった。


「謙也、俺は手伝うぜ!」

「わ、私も困ってる人が居るのなら救いたい」

「私も……まあ、途中で下りるかもしれないけどね」

「私もやりますわ!」

「わたしは…」


 零治、美織、葵、聖は謙也の言葉に答えた。

 しかし、優花は士を見ながら未だに答えていない。


「白崎さん、いや優花。

 君も協力してくれないか?彼が気になっているなら気にしなくてもいい。彼も協力してくれるはずさ。そうだろう?」


 そんな優花に声を掛け、謙也は士にも問う。


「協力……ねぇ。いや、まあ協力するのはやぶさかではない。けどさ。俺はまだ決めようとは思えねぇんだわ。

 つか、夕崎くんよ。お前は気付いてないのか……さっきの言葉……いや良いわ。取り合えず暫くはここで様子見。夕崎くんは魔王討伐を決定とこういうことでいいわけか」


 士は謙也の問いに答えつつ、今までの話を纏める。そして、扉を見る。豪奢な扉だ。


「なんていいタイミングなんだろうねぇ」


 扉がノックされる。


「どうぞー」

「失礼します。お部屋の準備が整いましたので、ご案内致します」

「わかりました」


 士達は部屋に入ったメイドにより部屋の準備が整ったことが告げられる。そして、荷物を持ち廊下へ出、そして案内されはじめた。


「(二時間か…まあ、タイミングどうこうじゃねぇな)」


 士は部屋から出た時、時計を確認し心のなかで呟いた。

 士は一応盗聴の可能性も考えていたのだが、時間を確認し違うと結論を出した。一応言っておくと実際に盗聴は無かった。


「貴方は此方です」


 しばらく歩いて行くと士だけ途中の廊下で曲がらされた。

 そして、もうしばらくして通された部屋は……勇者を通すには狭すぎ、汚すぎる部屋だった。

 ベッドは綺麗にされているが机や椅子には埃が被っていた。


「(これはこれは……なんて陰険なんだろうねぇ…さっきのアレが原因かねぇ)」


 士は口と表情には出さずニコニコしながらメイドに礼を言うと、メイドを部屋から追い出した。

 そしてすかさず大容量のリュックサックからウェットティッシュを取りだし、机と椅子を拭く。そして窓を開け、換気を行い、小型の箒で床を掃く。小型の箒を使っているにも関わらず士は驚異的なスピードで床を掃き終わる。ゴミはごみ箱へ捨て、ウェットティッシュで床を磨く。本来ならば雑巾を使いたいところだが、生憎と持ってはいない。


 そして15分後。

 有り得ないスピードで部屋はピカピカになった。







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