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第4話 平行世界~Parallel world~

「けほっ……ねぇ、それ止めていただけませんこと?」


 士が三本目となるタバコを吸い始めた頃、茶髪を縦巻きロール……ドリルにした少女がお嬢様言葉と呼ばれる言葉使いで士に言った。


「ふぅー……ん?これか?」


 士は煙を吐き出すとタバコを振りながらドリルっ子に聞き返した。と、同時にドリルっ子を眺める。


「その通りですわ。

 第一、未成年の喫煙は法律で禁止されていますわ」

「は?何言ってんだよ。

 飲酒喫煙は15歳から可能だぞ。単車もな」

「貴方こそ何を言っていますの?

 飲酒も喫煙も20歳未満は禁止ですわよ」

「ちょ、ちょっと待て」


 二人の意見……というより法律は全くと言っていいほどに食い違っていた。士はタバコを携帯用灰皿に入れながら考える。


「(待て、これって違う時間軸又は複数の世界からの召喚なのか?……確認してみるか)」


 そして、一つの仮説へと至った。


「なあ、突然で悪いが元の世界での時間を教えてもらえるか?」

「なんですの?急に……20xx年の11月8日でしたわ」

「そこは同じか……じゃあ、何て言う惑星の何て言う国に住んでた?」

「本当になんですの?」

「頼む…これは必要なことだ」

「…わかりましたわ。私たちは地球という星の日本という国に住んでいましたわ」

「そこも同じか…じゃあ、ドラ〇エとかF〇とかポケ〇ンとかは?」

「なんですの、それは?」

「超有名な……それも世界的に有名なゲームなんだが」

「知りませんわ。皆も存じ上げませんよね?」

「知らないわ」


 黒髪を首の周辺で束ね腰まで伸ばした少女がドリルっ子の言葉に答えた。その表情には若干の戸惑いが見える。


「マジでか。

 ……あー、くそ。こんな事ってあんのかよ」


 一方、士は頭を掻きながら再びタバコを取りだそうとして手を止める。


「一体なんですの?」

「んー、あー。今説明しても良いけど…取り敢えず自己紹介でもしないか?なんか、その方が早そうな気がする」


 士は言い淀み、説明を先送りにした。

 だが、実際のところこの方が早いのだ。


「別に構いませんわ」

「んじゃ。俺から」


 士は居住まいを正し、口を開く。


「神居士、17歳。誠蘭学園二年。

 剣道部、総合武術部、料理部所属だ。

 実家は……よくわからんが、総理大臣とかよく来てた」


 士はドリルっ子に目を向け、次に自己紹介をするように促す。


「私ですわね。

 まあ、皆さんには今さらという気はしますが……

 斑鳩聖、年は17歳ですわ。御影学園二年生で社交部と生徒会に所属していますわ。そして、貴方以外の方とは同じ学園の仲間ですわ……でも、そちらの方は存じ上げませんわね」

「(社交部!?んなもん何かのアニメでしか見たことないぞ…)」


 士が驚いて居るときドリルっ子改め聖は均整の取れた美しい顔を一人の少女に向けた。ふんわりとした黒髪を背中の中程まで流した少女だ。


「あ、私は白崎優花です。16歳で誠朗学園1年です。総合武術部に所属してました」

「誠朗?それってウチの系列校だよな?」


 優花の自己紹介を聞いた士は彼女に問いかけた。


「はい、その通りです」

「あー、かたっくるしいのは止めてくれ。

 でも、総合武術部?前の合同合宿の時居たか?」

「たぶん、その時は休んでいたと思います。皆が神居先輩に会えたって自慢してきたので」

「自慢って……まあ、俺に会ってないならたぶんそうなんだろうな。前々回の合宿は行ってないし」


 士と優花は二人で盛り上がるが、士はすぐに話を切り上げる。


「あーと、次の人頼むわ」

「なら、私が。

 高槻葵、17歳で斑鳩と同じく御影学園の生徒会と剣術部に所属している」

「次は…私ですね。

 月宮美織、17歳です」


 黒髪を腰まで伸ばし、首の辺りで結んでいる少女と何処かで結ぶこともなく腰まで伸ばした少女が続けて口を開いた。


「んじゃあ、俺かな。

 俺は竜胆零治。17歳だ。部活には入ってねぇな」

「代わりに保険委員会に入っていますわ」

「ちょお!折角謎の多いかっこよさげな男を演じようとしたのに何ばらしてんのぉ!?」

「次は夕崎さんお願いしますわ」


 聖は最後まで黙っていた淡い茶色の髪と目をした少年に声を掛けた。


「わかったよ、聖。

 僕は夕崎謙也、17歳。生徒会と剣道部所属だ」


 無意識なイケメンスマイルを振り撒きながら謙也は自己紹介をすませた。


「よし、これで全員終わったな」

「それでは先程の説明とやらをして頂きましょうか」

「わかってるよ。

 んじゃ、手短に済ませるのと簡単にすませるのと詳しく済ませるのどれがいい?」


 士は全員に問いかける。


「手短にお願いしますわ」

「俺ら異世界出身……以上」

「全くわかりませんわ!

 わかりやすくお願いしますわ!」

「えー、しょうがねぇなぁ。

 それじゃあ、言おうか。

 俺らは異世界の人間だ。この世界の者から見ても…お互いから見てもな」

「……どういうことですの?」

「簡単な話だ。

 俺と白崎の二人は同じ世界出身。これはさっきの話から簡単に理解できる」

「そうですわね」

「でも、俺らはお前らを知らないしお前らも俺らを知らない。

 まあ、学校も違うから当たり前か。だけどな、普通は有り得ないと思われることが含まれてるんだよ。

 俺と白崎はお前らと同じく地球の日本出身だ。勿論転移したと思われる日付も同じだ。ならば、普通は白崎を知っていないとおかしいんだ。白崎財閥の令嬢のことをな。コイツの認知度はド田舎でも八割……いや九割の人間が知ってるほどだ。それを知らないなんていうのはほぼ有り得ない。あと、ドラ〇エとかもな。

 それにだ。

 飲酒喫煙の年齢もだ。俺たちの世界では数年前に従来とは異なる成分のタバコが作られた。それに伴って喫煙等も年齢が引き下げられたんだ。だが、お前らはそれを知らない。

 ここまで言えば分かるか?

 俺たちは別の世界……パラレルワールドというのが正しいか……兎も角似て異なる世界から召喚されたんだ」


 士は自信の仮説を披露した。

 ガバカバと言えばその通りだろう。しかし、現状特に証明するための証拠や根拠は無い上に、異世界などという非現実的な場所に居るのだ。

 これでも十分すぎるほどだろう。


「それは……本当ですの?」

「さあ?わからねぇよ。

 ただ、そう理解しておくのが一番簡単だ」


 聖の言葉に士はわからないと返す。


「んで、これからの事を考えなきゃな」
















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